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こんな新人冒険者(ルーキー)がいてたまるか!!~複数恩恵の冒険譚~  作者: 猫の桜
第一章 こんな新人冒険者(ルーキー)がいてたまるか!!
6/9

第5話 いざ村クエストへ

いつも読んで下さりありがとうございます。

感謝ですm(_ _)m

俺達が受けた村クエストは2つ。距離的にはさほど遠いって程でもない。運が良ければ今日だけで2つのクエストを処理できるかもしれない。


クエスト内容をおさらいしよう。


アルダ村が甲羅蟻(メイアント)の討伐。

コファ村が角鳥の討伐。


どちらも報酬は4万D(デト)


大きさはそこそこだが甲羅蟻は装甲がとても硬い。それだけでは物足りないと物理耐性までついているモンスター。攻撃などは遅く俺やミィシャなら恐らく当たりはしないだろう。


しかし装甲、物理耐性。これが厄介な原因なのは間違いない。


そして角鳥。多分どっちかって言えばコッチの方が厄介。何せ鳥だからな。


角鳥とはその名の通り角の生えている鳥のモンスター。スピードや回避力は極めて高く攻撃を当てるのが困難な相手と言われてる。攻撃も角のおかげで一級品。


どっちもヤバいがこんなモンスターが一体どうして村へ来たのか。普段は森で大人しくしてるはずなんだが。


何はともあれまずは装備の調達をしなければならない。

そこで俺とミィシャは祝いにとおじいさんがくれた紹介状を頼りに”冒険街”へと寄っていた。


「へぇー!色々なお店があるね!!」

「俺も来るのは久しぶりだな」


種類豊富な武器や防具、アイテムなどを売っている店がズラっと並ぶ冒険街。露店でも展開してる所もある。


俺はギルドのおじいさんが書いてくれた紹介状を頼りに歩いていく。


「あ、あそこ。赤い縦看板が目印って」


真っ赤に塗られた木の縦看板に大きく「クラファの鍛冶屋」と書いてある。店の名前なのか?


疑いつつも開いている扉を抜け店内へと入る。


「おぉ。マジで鍛冶場だ」

「ちょっと暑いね〜」


中へ入れば鉄を打つ音は聞こえないがそこは正しく鍛冶場だった。


恐らくここは作業スペース。ゆっくりと物見珍しさでキョロキョロと辺りを見回しながら奥へと歩いていく。


「…わぁ。いっぱいだぁ!」


その先は棚に陳列された武器、防具の山だった。


乱雑に置かれたもの、綺麗にショーケースへと入れられたもの。木箱へと入れられたもの。


ミィシャは新しいもので既に周りが見えていない。俺に何も言わずに一目散に奥へと入っていった。


「へぇ…雑だけどこれはこれで…」


珍しさで売り出してる店とは比べるのは失礼。そう思うくらいこれは冒険者を考えて作られてる。


無駄な箇所は無い。ボロくても急所は固く動きも良さそう。革鎧でさえ丁寧、丁寧に作られている。


ここは良い店だ。


「なんだ坊主。それ気になってんのか」

「いや、ただ良い鎧だなって見てただけです」


横の棚から顔を出した厳つい強面なお兄さん。続いて出てくるガタイの良い体。鍛えてるわこりゃ。


お兄さんはまるで俺を値踏みするようにジロジロと見てくる。


「ほぉ…中々。見た目に反して…」

「え?なんですか?」


お兄さんはそれだけ言って奥へと引っ込み数分後に俺の目の前にドサリと木箱を2つ置いてくる。


「お前あれだろ。装備見に来たんだろ。ならこれやる」


それだけを言い捨てると背中を向け歩き出す。ちょいちょいちょい!!意味がわからないって!

要所要所だけを話して立ち去ろうとするお兄さんに驚き声を出す。


「さすがにお金払わないでなんて貰えませんって!」

「いらん。お前新人冒険者(ルーキー)だろ。なりで分かる。その癖見る目は良い。気に入った。以上だ」


それだけを言って本当にいなくなったお兄さんに俺は放心したままただ去っていく姿を見てるだけだった。


なんだあの嵐のような人。会話を一方的に切ってどっか行っちゃったよ。ここの店の人だろうけどこれまた濃い人だな。


この街は濃い人しかいないのかよ、ってツッコミたいくらいだ。


俺は暫くしてから渡された木箱に目を移して覗いて見ればこれまた驚き。


「おいおいおい…マジで結構良いやつじゃん…」


素人目にも分かるくらい装備として出来上がったもの。いや、当たり前なんだがなんて言えばいいのだろうか。こう、冒険者のニーズに応えたお詰め物みたいな。表現しにくいな。


耐久良し。動きやすさ良し。性能良し。

挙句に”火、風属性耐性”、”弱魔法耐性”までついてやがる…。おかしいよぉ…この装備おかしいよぉ…。


初心者には手が出せないおかしすぎる装備に流石の俺も言葉が出ない。こんなものポンっと出していいのかよ。しかも木箱だし。


「あ、レイシャ!どこに行ってたの…ってあれ!?レイシャも同じ物貰ったの?折角驚かせようと思ったのに」

「…は?」


俺は不可解な言葉を放つミィシャに顔を向けそして…絶句した。


色が少し違うが見ればわかった。俺が貰った装備とほぼ一緒な一式。ミィシャは見せびらかすようにくるりと一回転してみせる。おいおいマジか。


もう言葉も出ない。


俺は急いで大きい麻袋から小さい麻袋へお金を移しそれを持って店の奥へと走る。


「あ、お兄さん!」

「なんだ、金は入らんぞ」


言うと思った。だがあれを無償で受け取るのは後から罰が当たりそうで怖い。どうか俺とミィシャの為にも受け取ってもらわなければ。


「いいや貰ってもらいます!!ダメと言うならあの装備は頂けません!!」


あぁなに言ってんの俺!?バカじゃん!!自分からあんな良い装備手放そうとしてるし!いや、でもここはもうプライドの問題だ。あれだけの装備をタダは絶対にダメだ。


「むむ。それは困るな。なら受け取ろう。ありがとう」


最早どっちがもらう側なのか分からないな。

俺は苦笑いしながら麻袋を渡しここの工房を後にした。


しかし良い買い物が出来た。ギルドのおじいさん様様だな。

それと同時に気づいた。紹介状を渡さなかったことに。


「俺も結構抜けてんなぁ」

「…?どうしたの急に」


頭を搔く俺を見て首を傾げるミィシャに「何でもねぇよ」と露店の回復薬(ポーション)に目を向ける。


回復薬は種類も多いし値段の幅が広い。理由としては作る人によって回復量が違うから。

例えば生産職でそれも治癒系統に属する職の作った回復薬とバリバリの戦闘職が作った回復薬ではどちらが良いのかは答えを合わせるまでもない。


「おじちゃん。この回復薬のセット四つ頂戴」

「あいよ!四つ買ってくれた礼と別嬪な嬢ちゃんがいるから4000Dね!」

「わーい!!」


なんだと。ミィシャがいるだけで頼んでもないのに半分値切れたぞ。今度から買い物する時は隣に置いておこう。便利便利。


「…今酷いこと考えてたでしょ」

「さぁ準備出来たし行くべー」


ジト目で睨むミィシャの視線を避けるように冒険街を出る。あぁ女の勘は怖いや。


回復薬セットの中身は回復薬(ポーション)4つと上回復薬(ハイポーション)1つ。魔法回復薬(マジックポーション)2つが入っている。


さて、と。


「ミィシャ。こっからは本当に危険だけど大丈夫か?」


俺は街の門の前で立ち止まり最後の忠告とばかりにミィシャへ言葉を投げかける。


初めての戦闘ではないにしても相手はそこらへんの有象無象とは違う。俺らなら死んでもおかしくない相手だ。とても新人冒険者(ルーキー)が挑んでいいモンスターでは無い。そこだけははっきりと伝える。


俺だって全力で倒しに行く。戦ったことがないからどれくらいの相手かはその場で判断して無理そうだったら即引く勢いだ。


後はミィシャがちゃんと覚悟をしているかどうかだが…


「言うだけ時間の無駄だったな」


真っ直ぐに、俺の目を見て迷いが一切ない瞳で語る。


”大丈夫”と。


既に心に固く決意が芽生えてる。俺よりよっぽど冒険者してんじゃん。


「んじゃ行くか」

「うん!!頑張ろうねレイシャ!」



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