第2話 冒険者登録
「ねぇレイシャ…私確かに言ったよ?どんなモノを見せてくれるのって」
「おう。俺も言った通り驚かせようとしてる訳だが…あれ、おかしいな」
首を傾げ先ほど仕留めたモンスターを探り始める俺に「うげぇ…」と美少女らしからぬ顔をする。
恐らく村から出てないミィシャはモンスターを見るのも初めてだろうし”魔石”を見るのも初めてだろう。だから驚くかなって思ったんだけど…あれれぇ。
「何を探してるの?」
少し気味悪そうにしながらも俺が何かを探してることに気づいてるミィシャに仕方ないと手を止めてポーチを開ける。
「これだよ。まぁ本当は仕留めた後に見せたかったんだがな」
「うわぁ。綺麗な石だね!」
「ぶふっ!!」
魔石を最初に見たミィシャのまんま子供のような反応に思わず吹き出してしまった。しかし意味がわからないなら間違ってもないか。
俺の反応に納得いかないとジト目で頬を膨らませるミィシャに早速説明する。
「これは魔石ってモノでな。モンスターの核、心臓なんだよ」
「へぇー。袋いっぱいにあるけど…もしかして売るの?」
流石はミィシャ。物わかりが早い。
俺は肯定と指を鳴らし笑顔を作る。
この魔石にはいくつか種類があり、一般的なモノを”魔石”そして俺が今袋いっぱいに持ってる魔石は”純魔石”。純度の高い魔石で高価な部類に入る魔石。次に高価なのが”幻魔石”そして最後が”神魔石”。
高くなるにつれモンスターも強くなる。神魔石なんかは一生を豪遊出来るくらいの価値があるとか噂されているらしい。詳しいことは聞いてないからよくわからないけど。
「へぇー!色々と奥が深いんだね!!」
「まぁそうだな」
まぁいいや。コイツから魔石出てこないしここにずっと居るのも面倒だ。もう放置して街に向かっちゃおっと。
「魔石!私それ持つ!!」
「…?別にいいけど」
「やったー!!」
嬉しそうに声を上げて袋の中の魔石を楽しそうに見つめるミィシャに苦笑しつつ目的の街へ再び歩みを進めた。
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「ふぅ…着いたぞー」
「ここが冒険者の街ドルファン!?おっきい!!」
ホントに反応が子供だよな。
しかし朝に出かけたのに昼になる時間帯まで到着するのに時間がかかった。それもこれもこのウキウキ娘のせいだけどな。
モンスターを見たら「あれなに!?」って言って走ってくし挙句に倒しては放置して魔石も回収しないし。
別に魔石は回収しなくても今持ってる分で十分だから良いけどさ…初戦闘がワクワクしながらってなに?俺なんか結構ビビりながら逃げ回って逃げ回って何時間かかけてやっと倒したってのに。数秒でミィシャは片付けたし。
これのせいでミィシャの視界に入ってしまったモンスターは全て掃討された。すまない、俺が止められなかったばっかりに。
「ねぇ早く!早く行こうよ」
「はいはい…」
人の気も知らないで…
俺はミィシャの後を追って街へ入る。早速魔石を換金するためにこの街のギルドを目指すか。次いでに冒険者登録をしとかないとな。
「え?レイシャ登録してなかったの?」
俺が街へと来てることは知ってるから早々に登録してると思っていたミィシャは意外そうに声を漏らす。
「冒険者登録するのって割と手続きがめんどいんだよ」
まぁこれも本当だが実際は職の研究、自己鍛錬でずっと忘れてたんだ。
だけど今回はミィシャもいるし時間にも余裕があるからしないとな。
「冒険者登録もギルドで出来るから」
冒険者登録をしないとクエストに行ってもその報酬はもらえない。だからモンスターを倒してその魔石を換金するしかお金は稼げない。
「そうなの?あれでも魔石換金でお金貰えるのに村での生活質素だったよね?」
「…まぁ色々あるんだよ俺にも」
「むぅ。気になる」
それはまたいつか話すさ。別に大した事でもないし。
歩きながら冒険者の街ドルファンの大雑把な説明もし中心街まで来たところで大きい建物が現れる。
「これがこの街のギルドだな」
木造りで中には酒場も入ってる。これも冒険者の街と言われる特有かな。
「お?お!?レイシャー!!!」
ギルドに入るやデカい声出俺の名前を呼ぶこれまた図体のデカい顔は気さくなお兄さんな人。
周りにいた冒険者の人は耳を抑えたり「うるせーぞゼルガ!!」など罵声を浴びせるが本人はどこ吹く風でめっちゃ笑ってる。あぁ、恥ずかしい。
「あんま大声で呼ぶなよゼルガ」
「はっはっは!!すまんすまん!!して、その横のエラいべっぴんな嬢ちゃんは一体?」
俺が答えるよりも先にミィシャは笑顔を咲かせ軽い敬礼のようなポーズで応じる。
「デルバ・ミィシャです!よろしくお願いします!!」
「あっはっは可愛い嬢ちゃんだな!!俺はゼルガ・ティグレス!!冒険者だ!よろしくな!!」
そして俺の背中をバシバシと叩き豪快に笑う。いたい。めっちゃ痛いよ。
ゼルガは俺がこの街に来て初めて知り合った冒険者だから…もうかれこれ2年くらい付き合いがある。
性格も良く人当たりの良い。それにこの街では有名な腕を持ってる冒険者だ。
「んで?今日は何しに来たんだ?」
「冒険者登録だよ」
「ほう…!遂にレイシャも冒険者になるのか!!」
ゼルガは心底嬉しそうに、まるで子供の成長を見ている大人のように笑みを漏らし両拳をガシガシと突き合わせる。
「なら今度は一緒にパーティーでも組んでクエストでも行くか!」
「今度、な。」
俺は受付の列が空いたのを指差し、察したゼルガは頷きギルドを後にした。
ゼルガの誘いは嬉しいが当分同じクエストに行くことは無いだろう。何しろランクが違いすぎるからな。
「こんにちは。本日はどのようなご要件で?」
「冒険者登録をしたいんですが」
一拍置き頭を下げ階段に顔を向ける。
「かしこまりました。では、奥の階段を登り2つ目の部屋でお待ちください」