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こんな新人冒険者(ルーキー)がいてたまるか!!~複数恩恵の冒険譚~  作者: 猫の桜
第一章 こんな新人冒険者(ルーキー)がいてたまるか!!
2/9

第1話 旅の支度~始まり

「【万能者(リアクター)】!?私そんな職聞いたことない!それに授かった職が2つ!?どういうこと!?色々ツッコミをいれたいよ!!」


 驚きを身振り手振りで表しまるで小さい子供が英雄にあこがれるような表情でミィシャは俺を見つめる。

 しかしまぁ説明と言われても大してすることが無いんだよね。


 俺は15の時には既に【万能者】の職を授かり森やちょっと遠い渓谷、近くにある街などで実験を行っていた。


 何で恩恵を2つもと言われるとそれはさっぱり分からない。


「偶にレイシャが何日か村に帰ってこなかった時もあったけど…そういうことだったんだね」

「まぁな。んで【万能者】ってのは多分その名の通り万能な職なんだと思う」


 俺自身まだ全てを分かった訳じゃない。


 恩恵を授かるとき職の詳細などが記載された紙がありそこにはスキル、そして元の体にプラスされる能力、能力値などなど色々な事が事細かに記されている。


 あと元の体にプラスされる能力と能力値。


 元の体にプラスされる能力とは炎への耐性や魔法強化とか自身を強化する力の事。悪いものはほとんどない。

 能力値は、力、魔力量、敏捷、耐久、五感etc…。本来自分に備わっている力を強化する事を言う。


 能力と能力値。これは一時的などではなく常時備わっているモノとなる。


「レイシャ先生~!その能力とか能力値は職によって変わるんですかー!」


 歩く退屈しのぎがてら説明してたがコイツ面白がってバンバン質問を投げかけてくる。まぁいいや。知っといて損は無いし知っててもらわないと困ることだってある。


「あぁそりゃあな。…ってかミィシャ、お前の職は何なんだ?」

「私は【魔導剣士】!!」


 えぇ。確か【魔導剣士】ってプラスされる能力と能力値が二次職と大して変わらないアホみたいな職じゃなかったか?どんだけ勝ち組の道を突っ走る気なんですかねこの子。


 俺の知る限りじゃ一次職のトップスリーは【天騎士】【獣覚者】【魔導剣士】。


 ここ数年【獣覚者】は現れてないって街で知り合った物詳しい人に聞いたがこの職ってスキルが少ないくせに戦闘職では二次職の上位に食い込むくらい強いんだと。”一次職”なのにだ。


 語り継がれる夢物語のような話や英雄譚には高い確率で【獣覚者】が登場している。こういう職を[英雄職]やら[勇者職]って言う人も少なくない。


「ほぇー」

「なんだその興味なさげな感じは」

「そこまで興味ないからねー」


 丁寧親切に教えてやったというのに興味ないで返すとは中々ですね…。


 若干のショックを受け肩を落とす俺だったが往く道をミィシャが遮り笑顔で言葉を並べる。


「頑張ればなれるものなんてそんな簡単なこと言わないけどね、レイシャはいつかきっと凄い人になるって確信があるの!」


 予想外の言葉に上手く返答ができずそのまま口をぽかんと開ける。


 村にいた時から妙に俺を持ち上げていたミィシャ。一体何をそんなに期待しているのか。おだててもデザートしか作らんぞ。


 笑顔でなんの疑いもなく俺がいつか凄い人になると豪語した。嬉しい話だ。そんなに信頼してくれてるなんてな。


 でも


「俺はたまたま職を二つ与えられて特別みたいになっただけだよ。すごくもなんともない。それに凄い人ってのは親を見殺しにはしないだろ?」


 若干自嘲気味に言葉を吐き捨てた。

 謙遜でも何でもない。強くないから、俺が弱かったから。

 戦う力を持たなかったから俺の父さんと母さんは死んだ。小さかったから仕方ない。不運だったと片付けられればそれで終わりだ。


 でも違うんだよ。


 俺が、俺自身が…

 不運だった。仕方なかった。()()()()()()()()()んだよ。


 自分一人でなくとも助けを呼ぶなり出来た。砂を投げて目を潰すことも出来たかもしれない。

 成長して考えれば考えるほど俺が惨めに見えてくる。どうしてこんな俺になったのかなって。


「…レイシャは覚えてるかな。13の時に、私がパパと喧嘩して森に入っちゃった時のこと。」

「覚えてるぞ。泣きながらべそかいて縮こまってたやつな」

「魔物もいたからね!重要だからここ!!」


 村長がハラハラしながら走ってきてなんだと思ったら「ミィシャが消えた」って泣いて鼻水垂らして一緒に探してくれと懇願して村の皆で探したな。あわよくばクエストにでもしようとしてたくらいだ。


「カンカン照っていたお日様も落ちて辺りは暗くなって凄い怖かった。心細かった」

「まぁ仕方ないだろ。まだ小さかったんだから」

「自分で言っちゃったし!…でもレイシャは違かったよね?」


 ん?どういうことだ?


「レイシャ夜で魔物もいるのに私の場所を見つけてくれた。小さかったのに私を助けてくれたよ」


 暗い暗い夜の中。魔物の唸り声、触る寒さ、不安を煽る冷たい風。怖くてたまらなかっただろう。もしかしたらどこか怪我をしてるかもしれない。そんな風に考えたらいてもたってもいられなかった。


 そしていつもの柔らかい表情ではなく真剣にミィシャは俺の目だけを見て語る。


「私は”レイシャ・フィルフィレア”。君の優しくて、勇敢で、カッコよくて、でも少し抜けてて、ちょっとバカで、大人ぶってて」


 おい後半悪口じゃねぇか。


「それでもいて欲しい時、辛い時には必ず言葉を掛けてくれるそんなレイシャはね。私の憧れなの。…ねぇレイシャ、次は私にどんなモノを見せてくれるの?」


 俺が次にミィシャを見たらその表情はいつもの様に明るく元気な表情に変わり綺麗な手を差し伸べ笑顔を咲かせた。全く。どこまで俺を持ち上げるんだか…


「あぁわかったよ。分かりましたよ」


 コイツは俺が俺自身を卑下してもきっとまた笑って俺の良い所を聞かせてくる、励まそうとしてくれる。そんなんじゃいつまで経っても子供のままじゃないか。


 それならいっそ開き直って前へと進もう。どうせなら当たって砕けてみよう。…一度で良いから自分を信じてみよう。


「(いや違うな。ミィシャが思う俺を信じるって感じか)」


 ちょっとだけこの時に心が軽くなったように感じた。…後でちゃんと礼を言わないとな。


 俺は目を閉じ胸に手を当て一呼吸おく。


 さて心の、旅の支度は出来た。


「ならお前の心臓が飛び出るくらいのものを見せてやる」

「そっか、期待してるね♪」


 ここからが一応旅の始まりだ。

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