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パートナーは大事に!

さて、どうしたもんか。


俺も少々ジハードに気を使うべきだったな。


「…なあジハード。」


「…………なんじゃ。」


良かった、とりあえず話は出来そうだ。


「その、すまなかったな。俺はお前を少し軽視しすぎたみたいだ。」


「……それで?」


「お前は何もしなくていい。ただ次の町に行くにも少し金がいると思うし、何よりあの人達は俺達に凄く良くしてくれた。その恩は返さないといけないと思うんだ。」


「……だから?」


「だから少しだけ、そうだな、二ヶ月でいい。待ってくれないか?」


「……金か。ふん、まあその辺はどうでも良い。儂は、貴様や儂が保護されるような弱者と扱われるのが我慢ならんだけじゃ。彼奴らも我らに良くしてくれようとしてくれるのはわかっておる。だが、儂は最強の竜じゃ。あまりの屈辱は、耐えられん…。」


「ああ。お前は凄いやつだ。本当だよ。頼りにしてる。」


そう言うと俺はジハードの肩をぽんと叩く。


「…ふん。貴様も少し自覚しろ。儂と契約をしたと言うことがどういう事か。」


「そうだな。反省するよ。」


そこまで話すとジハードは椅子に座り茶を啜る。


「…ぬるいの。」


「新しいのを入れて貰おうぜ。」


「…ん…。」


俺は立ち上がり、二人を呼びに扉に向かおうとした時。


「のう、リュウ。」


「ん?」


「…また泣いてしもうた。悪かったな。」


顔を赤くして伏し目がちにこちらを見ながらジハードは謝罪を口にした。


その仕草にドキッとした俺はああとかうんとか言ったと思う。多分顔が赤くなっていた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「ええっと。結局どうするんだ?」


部屋に戻ったバッカスとアマンダはジハードを伺うように尋ねてきた。


「はい、仕事は私がやります。彼女の分も。だからこちらに世話になってもよろしいでしょうか?」


「彼女の分も?」


アマンダが片眉を上げながら聞き返す。


「はい、その、彼女はまだ万全じゃ無いんです。なので彼女の食事と宿の分も僕が働きます。」


アマンダは腕組みをしてこちらをただ見ている。


「ふむ。そうか。君がそういうのなら何も言うまい。」


ふうと息をついてバッカスは皮袋を取り出した。袋の中からチャリンと何枚かのコインが出てきた。


「これは入隊金だ。端金だがな。これで身の回りを少しでも整えるといい。」


「しかし、僕はそんなに長居をするつもりはありません。受け取れませんよ。」


「そう言うな。出したものは受け取れん。それに万が一負傷したり死亡した場合の保険金でもある。受け取ってくれ。」


そう言うとバッカスは袋を俺達の前に置いた。

アマンダは未だに腕を組みこちらを伺っている。

ジハードは落ち着いたのか入れなおしてもらったお茶を啜っていた。


「…では、ありがたく頂戴致します。」


「よし、とりあえず今日と明日は体を休めろ。町の中心に市場があるからそこで買い物でもするといい。」


「お言葉に甘えます。」


軽く頭を下げた俺にバッカスは少々しわの目立つ笑顔で返した。



その後、俺達には小さめの部屋が充てがわれた。普通は共用の部屋に男女別らしいが、ジハードが不安定という事で融通してもらったようだ。

この兵舎は二階建てで、一階に一般兵の集合部屋、食堂兼ロビー、風呂がある。食事は決まった時間に朝昼夕、さらに夜警者には夜食も付くらしい。風呂は夕方から朝方にかけて沸かされており休憩時間や非番の時に自由に利用して良いそうだ。ただし、入浴時間の初めと終わりのそれぞれ1時間は女性の隊員専用の時間になるという。


俺達に用意された部屋を含む二階には主に上官や来賓、女性の為に用意されている小さな個室が8部屋あり、あとは資料室、作戦室、事務所がある。


部屋でしばらく寛いだ俺達は、先ほど勧められた市場に二人で向かう事にした。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー






「おいリュウ! これはなんじゃ⁉︎ 良い匂いじゃあぁ。」


さっきの激昂が嘘のようにジハードは屋台が連なる市場をうさぎの如く跳ね回っている。


「俺に聞くなよ。それにあくまで今日は生活品を買いに来たんだからな。無駄遣いは出来ないぞ。」


バッカスから貰った皮袋の中には銀貨2枚と銅貨6枚が入っていた。


貨幣の価値がわからないので市場の入口近くに立っていた行商人に聞いてみたところ、怪訝な顔をされたものの世界の貨幣について教えてくれた。



金貨・銀貨・銅貨・石貨・花貨の5種類の貨幣があり、一般庶民の平均月収が大体銀貨20枚なのだそう。金貨以上は無く、それぞれ10倍の価値を持つようなので、日本円で金貨10万・銀貨1万・銅貨1000円というように考えて良いようだ。


「少しくらい良かろうに…。むむっ!こちらの串焼きも気になるのう!」


ジハードはまたぴょんぴょんと煙を上げる屋台に近づいていった。


「おっ!お嬢さん!焼きたてだぜぃ!ヘビーボーンの串焼き、一本銅貨1枚だ!」


「うひょー!うまそうじゃあ!」


ジハードは目の前で焼かれている串焼きに目がキラキラしている。


「ヘビーボーン?」


「ん?にいちゃんここら辺は初めてかい?ヘビーボーンってのは鹿みたいな魔物だ。森が近いんでここら辺じゃ主流の肉だな!どれ、ちょっと待ってろ!」


そう言うと店主は串から肉を一つ外し、ナイフで2つに切り分けた。


「ほれ、サービスだ!美味かったら買ってくれよ!」


俺達は差し出された肉を口に放り込んだ。


油は少ないが臭みは無く、肉らしい肉を食べていると感じる。ローストビーフの真ん中だけを串にしたような柔らかい食感だった。


「う、美味ぇ…。」


ごくんと飲み込んだ感想を店主は腕組みをしてそうだろうと笑う。


「なあリュウよ!儂はこれを所望するぞ!なあ、良いだろう?」


まあ金はまだあるし、ジハードにはさっきの事もある。


「負けたよおじさん。三本おくれ。」


そう言って銅貨を三枚差し出す。


「おっ気前がいいねえ!なら値段はまけられないが肉を増やして焼いてやるよ!ちょっと待ってな!」


「なんとリュウよ!三本も良いのか!」


「一本は俺のだよ!これで少し無駄遣いは我慢してくれよ。」


「むふふ。まあ苦しゅうないぞ。」


焼き上がった串を受け取り二本をジハードに渡す。肉がでかい。


「ぬぉぉ!これは美味じゃあ!」


両手に串焼きを持って心底楽しそうなジハードを見てリュウは苦笑した。

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