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とある夫婦のももいろ日記 その3

作者: 石田 昌行

 十六才上のボクの旦那は、オンナの目から見るとあんまり面白くないオトコだと思う。

 お酒も煙草もギャンブルもやらないし、楽しいこと言ってまわりを和ませるようなこともしない。

 どっちかというと、ぶっきらぼうで感情表現の苦手なタイプだ。

 当然だけど、オンナの子にモテるようなキャラじゃない。

 正直な話、ボクが結婚してあげなかったら一生独身だったんじゃないかと思う。


 そんな旦那は、何を隠そうボクの初恋の相手だ。

 ということは、ボクは生まれて初めての恋愛感情を見事実らせたってことになる。

 つまり、失恋をした経験がない。

 これって、物凄くレアなケースなんじゃないかと思う。

 神さまに感謝だ。

 改めてそう思ったのは、友達から借りた漫画の最新刊を読んでしまったからだった。

 テーマは「失恋」

 魅力的な女の子たちからアプローチされたひとりの男の子の「誰かを選ぶ」という苦しさを描いた物語だ。

 複数の女の子から恋された男の子が、その中のひとりの気持ちを受け止める。

 それはイコール、その子以外の恋心が破綻してしまうってことを意味している。

 苦しいんだろうな──と思う。

 辛いんだろうな──と思う。

 ボクは学生時代、たくさんのアプローチに「ごめんなさい」してきた。

 当時は全然気付かなかったけれど、その数だけ誰かの気持ちを傷付けてきたんだ。

 残酷な話だと思う。

 だからこそ、いまこうやって旦那の腕を枕にしてると、自分自身の「幸運」をたくさんたくさん噛み締めることができる。

 こうした恋愛の成就って、いわゆる「奇跡」のひとつなんだ──って。

 ボクは知ってる。

 旦那もむかし、恋を失って傷付いたことがある。

 苦しかったんだろうな──と思う。

 辛かったんだろうな──と思う。

 恋を失うかもっていう不安は、ボク自身も味わったことがある。

 涙が出るほど苦しかった。

 死にたくなるほど辛かった。

 でもそれだから、いま誓えることがある。

 ボクはこの「奇跡」を決して傷付けたりはしない。

 この「奇跡」を裏切って、旦那を傷付けたりはしない。

 神さまに誓ってそうする。

 それがボク自身に課せられた使命なんだと思ってる。

 恋を実らせた人間の背負うべき責務なんだと思ってる。


 旦那。

 ボクはずっと、旦那の側にいるからね。

 頑張って頑張って旦那の理想の奥さんになるから、裏切っちゃやだよ。

 チュッ。

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