第四話
ここから更新ペースを落とさせていただきます。
毎日更新は厳しかった……
よろしくお願いします。
順調な道程だった。もっとも、治安も良く人通りの多い街道を、客車に揺られて行くだけなので問題が起こるほうが珍しい。客車の中も和やかな空気が流れ、会話が弾んでいた。
日もだいぶ傾いたころレギエとの国境に到着した。国境といってもレギエは都市国家、自治権のある自由都市と言った方が近いくらいなので、それほど物々しくはない。都市をぐるりと一周する壁があって、東西南北に検問付きの門があるだけだ。客車は西門に付属している広場に停車して検分を受け、乗客は城壁側の建物の中で身元を確認される。ファリィラとリュオクはここで別の客車に乗り換えるため、他の乗客達と別れた。
ギルドの証明書と、教国の巡礼者証明書があったので、二人の手続きは早かった。ほとんど何も聞かれず、あっさり壁の内側に通された。
「こんなに簡単に行けるんですね」
拍子抜けした様子でファリィラが呟くと
「今回はな。本来はもうちょっと厳しい」
と返された。なんでも教国の巡礼者証明書を持った呪導師の行き先や入国目的などいちいち尋ねる国はこの東平原では少数派らしい。呪導師の修行で各地の教殿を巡るのが分かり切っているからだ。助かるが、いまいち旅している気がしないので残念だった。
「ところで、宿はどうする? やっぱり教殿に泊るのか?」
「当然です。宿代まで出せません」
巡礼者と連れは教殿の宿泊施設を使える。無料ではないし、掃除や配膳などの雑用を自分で行わなければならないが、宿をとるよりはるかに安上がりだ。
「じゃあしばらく別行動だな。いつ迎えに行けばいい?」
と言われてファリィラは横の男を見上げた。
「え? 別? あなたはどこで休むのですか?」
「その辺の安宿。教殿なんて辛気臭い場所は嫌だね。飯がうまいとか言うなら別だが」
教殿の食事は質素である。不味くはないが、地味な味なのでうまいとは言わないだろう。黙ったファリィラを見てリュオクは続けた。
「じゃあ決まりだな。迎えは三の鐘の後でいいか?」
1日の始まりを告げる早朝の鐘を一の鐘として、その後夜までの間に等間隔で十回の鐘が鳴る。三の鐘は勤めの鐘とも呼ばれ、朝食を終えた人々が働き始める合図の役割を果たしている。
教殿の前で別れて、旅の1日目は終了した。
ファリィラが朝の勤めを終えて、朝食をすませて一息つくと三の鐘が鳴った。昨夜は疲れていたのか、夕べの勤めを終えて夕食をとると、一の鐘が鳴るまでぐっすり眠ってしまった。よく寝たので快調だ。急いで待ち合わせ場所に向かうと、すでにリュオクがいた。
「申し訳ありません、待たせてしまいましたか」
声をかけると、彼も近づいてきた。
「いや、そうでもない。行くか」
客車の停留所へ行くと、案内所に人だかりが出来ていた。二人が近づいていくと、御者らしき男に声をかけられた。
「あんたがたは、どこへ行くね?」
「パルマだが、何かあったのか」
男はぴしゃりと額を叩いて悔しそうに言った。
「運が悪いねえ、兄ちゃん! 今、東に向かう街道は魔物が出て、出発が見合わせられてるんだよ」
リュオクは驚いた。辺境の森の中ならともかく、街道に魔物が出ることなど滅多にない。しかし、出ている以上は仕方がない。討伐が行われ、街道の安全が確認されない限り、客車は出ない。
「仕様がないな。ギルドに行って、状況を聞いてみるか」
二人はギルドに向かった。




