第6話・沙和音‐新たなる応援者との接近。
予定より2日程遅くなりましたが、第6話をお届けします。
著者も頑張って執筆しているのですが、体調との兼ね合いもありどうしても、休み休みとなってしまう筆不精を読者諸氏におかれましては、ご了承ください。
本当は、ゼロ戦のプラモ作りに夢中だったり、他の小説を読むことに夢中になってしまっているのもあるのですが。
さて、第6話ですが、沙和音が裁判に向かって本格的に始動していく姿を著者なりに描いてみました。
法律という壁をこれから乗り越えていく、沙和音の第一歩です。
悔しかった。
――――俺には関係ないってーの。
この言葉と、良真のせせら笑う顔が脳裏を過って、眠れないこともある。
精神的苦痛とは、こういうことなのか。
この状況を一刻も打破するためには、裁判以外には次に打つ手は考えられなかった。
会社に有給休暇届けを出して、厚木簡易裁判所に向かっていた。今の会社に入社してから初めての有給休暇を使ったのだった。
厚木簡易裁判所は、小田急線厚木駅北口を出て厚木中央公園の方角へ向かって徒歩10分程の場所にある、市民密着型の簡素な裁判所と言える。
確か、冬樹ほのか法律事務所で相談した時も、厚木簡易裁判所の管轄になると言っていたし、図書館で借りた「やさしく解説・女性のための男女恋愛法」の本にも、相手の住所を管轄する裁判所に、訴えの申立をすると書かれていた。
沙和音は勇挑むかのように、意を決して建物の中に入った。
直ぐに受付らしい窓口があり、1人の女性事務官が沙和音に気付いて、会釈をしながら歩み寄って来て話を聞いてくれた。
「訴えを起こされたいってことですか?」
「はい。始めてのことなので、必要な手続きなどを知りたくって来ました」
「どのような訴えでしょうか」
「男女間の慰謝料とか、貸したお金の返済を求めたいんです」
ちょっと俯き加減で、躊躇いながらも勇気を出して沙和音は聞いた。
「少額訴訟制度をご利用ですか、それとも通常の訴訟でしょうか」
女性事務官の問いに、沙和音はちよっと口をつぐんで困惑した。
少額訴訟制度は、相手の被告となる者に対して請求する金額が60万円以下の場合に利用できる。
その少額訴訟に訴えられた被告が、その少額訴訟に反対する異議を述べない時は、原則1日で審理を終えて、その日の内に判決が言渡される。
逆に、被告となる者から少額訴訟に反対する異議を述べられると、通常訴訟となり何回かの審理を経て、判決が言渡される裁判システムた。
但し、少額訴訟手続きから通常訴訟へと移行しても、判決の不服については当事者共に控訴権はない。あくまでも、被告となる側にも訴訟選択権を与えて、バランスを図っているのである。
沙和音は最初の難関にぶち当たった。少額訴訟か通常訴訟かなんて考えていなかった。
ただ、漠然と裁判ということの解決策だけが、沙和音の頭の中に渦巻いていたからだ。
少額訴訟か、それとも通常訴訟を選択すべきなのか、最初に裁判所に電話でアポを取っていなかった初歩的ミスを、沙和音は悔いた。
「えっと…これから良く考えて検討してみます。ただ、訴状の書き方などを教えて頂ければと思いまして…」
沙和音は苦し紛れとも思える返答をして、その場をしのいだ。
「そうなんですね。少額訴訟や通常訴訟のフォーマットがありますが、そちらを両方お持ちになりますか」
「はい。お願いします」
沙和音は頷くしかなかった。
「では、ちょっとご説明しますね。こちらの「原告(申立人)」とは、訴える方のことを言います。「被告(相手方)」は訴える方で、次の「請求の趣旨」に相手に請求したい金額を書いて頂いて、必要事項にチェックの「レ」を入れてください。そして、次の「紛争の要点(請求の原因)」に、どういう経緯で相手に金銭を請求するのかを簡潔に書いてください」
沙和音はさらに頷きながら、女性事務官の話に耳を傾けた。
「こちらの「紛争の要点」に書ききれない場合は、別にA4用紙を使って書き加えてもらってもかまいません。通常訴訟の場合は少し記載要領に違いがありますが、概は同じことですから。ちなみに、相手に対する請求額はお幾らですか?」
「えっと…貸金が5万円とそれから慰謝料として20万円を請求する予定です」
何となくぎこちない返答をする、沙和音だった。
「では、訴訟物が25万円として収入印紙が3千円分必要ですから、こちらの欄に貼ってください。不明な時は貼らないで、こちらの裁判所にお問い合わせください」
はい。やはり、ただただ頷くだけの沙和音だった。
何より初めて見た、訴状用紙にこれからの運命を託すことになるのだから、沙和音としたら女性事務官が発する言葉の1つ1つに、重みが感じられた。
それから、証拠となる証書関係の添付と、訴え提起に伴なって必要な切手の内訳額を教えてもらった。
一度図書館などで少額訴訟と通常訴訟の違いを勉強してみてくださいねと、女性事務官からそれとなく教示されると、勉強不足を指摘されたようで、沙和音は背筋に少し汗を滲ませた。
「…はい。そうしてみます」
それでも勉強不足は否めないと頷きながら、沙和音は素直に反省の弁を口にしていた。
「ここまで、何か分らないことはありますか?」
「いえ。もう一度勉強しなおしてみます…」
「では、分からないことがあれば、こちらの方にお電話ででもお問い合わせください」
「訴状を書き終えたら、またお持ち致します」
「そうですか。郵送でもかまいませんが、お持ちいただいてもかまいません。お待ちしておりますので」
女性事務官の丁寧な説明とご苦労様でしたとの労いの言葉に、沙和音も丁寧なお辞儀を返して、いろいろありがとうございました。また日を改めてお伺いします。と、言葉を残して厚木簡易裁判所を、後にした。
裁判所に行けば、その日の内に訴訟手続きの全てが済ませるのかと思っていた認識の甘さと、必要な情報の収集を怠っていたことを、沙和音は思い知らされた。
直ちに必要な情報をネットで検索・取得できる現代において、これから立ち向かっていくであろう、裁判についての情報をキャッチしていなかったことは、明らかな沙和音の勉強不足であり完全なるミスだった。
それでも直接裁判所に赴いたおかげで、一応は裁判に必要な訴状などの必要書類についての糸口は掴めた。これでまた一歩前進したと希望を抱き、この努力はきっとこれから先の自分の将来に咲こうとしている、幸福の種を実らせるのだと、プラス思考に沙和音は考え直した。
途中、厚木中央公園の中にベンチが目に付いたので、そこに座った。トートバックから、先程、裁判所でもらった訴状用紙の書類を取り出して、記載されてる内容に眼を通しから胸に当ててしっかりと両腕での中で、その書類を抱きしめた。
緩やかな冷たい風が沙和音の頬に突いて、肩まで掛かった髪を靡かせた。11月ももう終わろうとしている今日の快晴な日和が、沙和音には心地良く感じられた。
*
休日に自転車に乗って図書館に向かっている気分は、何だか高校生の頃にタイムスリップしたかのようなフレッシュな感じだろうかと、沙和音には思えた。
短大を卒業し今の会社に就職してからは、図書館を利用することもほとんどなくなった。何より、仕事にかまけて本を読む習慣からは頓と遠のいていたのだから、致し方がない。たまに読むのはベストセラーとなって話題性のある恋愛小説や推理小説ぐらいで、後は暇潰しのファッション雑誌や女性週刊誌がせいぜいだ。
これが読書と言えるのかは、凡そ自信がない。先日、裁判所で教示されたとおり、少額訴訟と通常訴訟の違いと仕組みを根本的に知る必要があると、中央区にある市立図書館に来ていた。電車を使うよりも日頃の運動不足解消のため、自転車を選んだ。
何気なしに法律コーナーの書棚を眺めながら、どれから手を付けるかを考えあぐねていた。以前、野毛坂の図書館でも悩んだが、法律関係の本てこんなにもあるのかと、改めて眼を丸くした。判例集などと題した本もある中を、民事の裁判なんだから、民事訴訟法に関係するんだろうという程度の、曖昧な知識しか沙和音にはなかった。
「新堂さんじゃないの?」
悩んでいた頭の中に、突然に自分の名前が響き渡ったので、沙和音は一瞬ギックっとした。右手に微かに見覚えのある顔の男性が立っていた。
モスグリーンのダウンに、ゆったりめのデニムのパンツをルーズぽっく穿きこなしている風貌は一見して大学生に見えるが、沙和音は刹那に思い出した。同じ会社に勤める、営業部の室杜恭祐だ。
「どうしたの、こんなところで?」
室杜は何の屈託もない明るい表情で、沙和音に訊ねた。
「室杜さんこそ、どうなされたんですか?こんなところで…」
「こんなところでって、酷くないそれって。ここは図書館だから本を借りにきたんだけどさ」
「そっ、それはゴメンなさい。だって、最初に室杜さんがこんなところでって言われたので、私もつい釣られてしまって…」
苦笑いを浮かべる沙和音に室杜は、右手で髪を掻き揚げながら照れくさそうに笑った。
「そっか、こっちらこそゴメン。ついついこんなとこって言っちゃたんだ。あれっと思ったら、やっぱり新堂さんだったから、それでついつい…」
「いえいえ…私はちょっと調べてたいことがあって、それでここに…」
沙和音は周りを気にして、少し声を落とて言った。
「そうなんだ。何だか熱心に法律関係の本を探してたようだけど、どんな法律の本を探しているの」
「どんなって言われても…その…民事の裁判について、ちょっと調べたくって」
突然に現れた室杜とは会社の同僚と言っても、挨拶程度しかし交わしたことがなく、沙和音はドギマギとした。
「ああ、民事裁判。それじゃあ民事訴訟法関係だね」
「でも沢山あって、迷ってたんですよ」
今の沙和音には、全ての男が敵に見えて、ちょっぴり室杜に煩わしさを感じた。
「何でまた、民事訴訟法なんか」
「それは、ちょっと興味があって、それで、まあ…」
「そう。でも、民事訴訟法って民事裁判のルールブックみたいなもんだから、知りたい内容によっては簡単なものもあれば、高度な専門的な知識を要するものまであるからね」
お節介なことを話す室杜に、誰もそんなこと聞いてませんっと、沙和音はちょっとした苛立ちを覚えた。
その苛立ちを口には出さず「そうなんですか。何だか難しいんですね」と沙和音は室杜の言葉に、自分の感情を打ち消した。
室杜は口を閉じて、書棚を眺めまわしてから一冊の本を引き抜いた。
「これなんかどう。わりと民事訴訟法について、分かりやすく解説されているけど」
室杜は書棚から引き抜いた本を、沙和音に差出した。
受け取った沙和音は、本を捲って内容を簡単に眼を通す。『ハンドブック民事訴訟法入門』のタイトルのとおり、コンパクトで読みやすい内容に見えた。
「室杜さんは、どんな本を探しに来られたんですか」
「僕ってか俺って言うか、今は商業登記法について勉強してるんで何か良い基本書はないかと思って。それで来たんだけど」
「商業登記法って、何だかとっても難しそうですね」
ここで立ち話してても他の人たちに迷惑だからと言って、室杜はスツールの空きのあるところへと、沙和音と移動した。沙和音としたら、ここで話を断ることも同じ会社で働く者の配慮として、躊躇われた。
「新堂さんは何でまた、民事訴訟法なんかを」
2人はスツールに腰を下ろしてから、室杜は沙和音に訊ねた。
「私は、少額訴訟と通常訴訟の違いを知りたくって」
「少額訴訟と通常訴訟の違い?何だそんなことか」
沙和音が室杜さんには分るんですかっと、訊ねてからさらに室杜は話を続けた。少額訴訟はかなり簡略化された訴訟で、原則一期日一審理としており判決も当日中に言渡される。
通常訴訟も判決を下してもらうってことの意義は、訴訟本来の目的としはては同じだ。
しかし、通常訴訟は少額訴訟と違い、当事者間で紛争が拗れており、その事件の内容が複雑だったりして、一回の審理では紛争の解決が望めないなど、何回か口頭弁論を経て判決を下すことの方が訴訟当事者には望ましい場合は、少額訴訟は向かないので通常訴訟となる。
先日、厚木簡易裁判所の女性事務官が説明してくれた通りのことを、室杜も口にした。沙和音にしても、この辺りの違いについては多少は理解ができていた。
「その違い程度のことは、先日裁判所で訊いたんですけど」
思わず沙和音はいってから、しまったと思った。個人的なことに他人からむやみやたらと、根掘り葉掘り訊かれることを恐れたのだ。
「裁判所?じゃあ本人訴訟でもやってるの」
やはり余計なことを、室杜が突っ込んできた。
「いえ。これからそうなるのかなと思って…」
「それじゃあ大変だ。でも、少額訴訟は先もいったように当事者に争いがなく、確実に証拠が揃った自白事件が主な対象だし、使える証拠も限られているからね」
沙和音は首を捻って「口頭弁論が一回で終わるか、何回か行われるかの違いなんですね」と、呟きながら、唇を真一文字に結ぶしかなかった。
室杜は、まあそうだけどっと言って、少額訴訟は使える証拠が限定的で例えば、金銭貸借借用書類の証書とか、当日確実に来てもらえる証人とかと説明を続ける。そして、少額訴訟は判決に不服があっても控訴して上級の裁判所に審理は求められない。唯一、判決に不服なら異議申立をして異議審で、通常訴訟の様に何回か口頭弁論を繰り返して審理をして、判決を下してもらえる救済処置があるのみで、その異議審の判決についても控訴などの上訴はできない。その点通常訴訟は判決に不服なら控訴、上告が認められるっと、室杜は付け加えた。
「それなりにやっぱり違いはあるんですね」
室杜の説明になる程と、頷きながらも沙和音は難しい表情を浮かべた。
「でも、新堂さんはどんな事で裁判なんかするつもりでいるのさ」
「それは…」と言って、口を濁す沙和音だった。
「そうだね。そういう事は本人のプライバシィーに関わることだから、訊かない方が良いね」
室杜の人に配慮した物わかりの良さに、沙和音は胸を撫でおろした。
「だけど室杜さんて、法律にお詳しいんですね」
「そうでもないけど、俺今は司法書士の資格取得を目指して勉強してるから。それで、会社が休みの日には、ここの図書館に来て勉強していることが多いんだ」
「司法書士の資格ですか。その資格を取っとら今の会社はどうするんですか」
「それは、辞めることになるだろうね」
ちょっと疑問に思ったことを口に出しただけの沙和音だったが、余計なことを訊いてしまったかと、少し気まずい雰囲気を感じた。
「そなんですか。変な事を訊いてしまってゴメンなさい」
「そんなこともないさ。別に会社を辞めちゃあいけないってこともないんだし。ところで新堂さんは相模原に住んでたんだね」
「はい。相模原駅を使って会社へ通勤してますから」
「俺は淵野辺駅を使ってるから、同じ電車を使って通勤してるってことだ。一度も電車内で見かけたことはなかったけど、ここで同じ会社の人と会うとは思ってなかったな」
「それより大変ですね。会社と掛け持ちしながら司法書士とかの勉強って」
沙和音は司法書士という資格を、今一理解できていなかった。
そうでもないさ。好きでやっていることだし。そうだ、ちょっと待ってと言って室杜は座っていたスツールから離れた。すると、少しの間を置いてから、室杜は幾冊かの本を片手に戻って来た。
「これは少額訴訟について詳しく解説されてるし、こっちは通常の民事訴訟の基本的要点をまとめた入門書だから、分かりやすいと思うよ」
室杜は、沙和音に2冊の本を手渡した。
「ありがとうございます。助かりました」
沙和音は室杜の方へ向き直って、軽い会釈をして礼を述べた。
「もし分らないことがあったら、会社で顔を合した時にでも気軽に訊いてよ。まあ、あまりお力にはなれないかも知れないけどさ」
室杜は苦笑いを浮かべた。
「とんでもないです。勉強になりました。また何かあったら、よろしくお願いします」
沙和音は室杜に、再び頭を軽く下げた。
「じゃあ、長話も迷惑だろうから、俺は本を探してから学習席の方へ戻るから」
「私はここで、室杜さんの選んでくれた本を少し読んでから、この本を借りて帰りますから」
ゆっくりと立ち上がった室杜に合わせて、沙和音もスツールから腰を浮かせて軽いお辞儀をした。すると、室杜は事を見透かしているかのように言った。
「そうだ。男女間の紛争は難しくて、拗れがちになるので通常訴訟の方がベストかも。ちょっとお節介かな。じゃあ頑張って」
そう言ってから、室杜は屈託のない笑みを沙和音に向け、軽い礼を返して、その場から離れ去った。
沙和音はスツールに座り直して、室杜の後ろ姿に一瞥をくれて見送った。良真との軋轢から残されたトラウマか、同じ会社の異性にまで偏見な眼差しで接して、申し訳なく思った。
室杜が選んでくれた三冊のいずれの本も、分かりやすく丁寧に解説されていた。訴状の作成から始まり、少額訴訟の仕組みや判決言渡しまでの流れが、明瞭に書かれている。
最初に選んでくれた『ハンドブック民事訴訟法入門』は時折、難解な法律用語も見られるものの、裁判事例なども含めて解説されているので始めて法律に触れる初心者にも、少し本気モードで勉強すれば克服できそうな内容だった。
沙和音は、偶然に図書館で会った室杜に、遅ればせながら心の内で感謝の言葉を口にした。
三冊の本を持って貸し出しカウンターに向かうと、室杜が学習席で難しい顔を作って奮闘している様子が垣間見れた。そのまま室杜を振り返らず、こっそりと退散するんのように本を借りて、沙和音は図書館を後にしたのだった。
先日、厚木簡易裁判所からもらってきた訴状用紙の原告欄に、沙和音は自分の氏名と住所、そして必須事項である電話番号を記入して送達場所とした。
図書館で借りた本を読んだ挙句の結論は、通常訴訟の選択だった。
被告欄には、当然に笹谷良真の氏名と住所を記入した。
問題は「請求原因」をどう書くかで、沙和音の頭を悩ましていた。訴状では「請求の原因」とされ民事訴訟において、訴えによる請求が特定の権利主張を構成するのにもっとも必要な事実のこととされている。
なので、沙和音が良真に対していかなる権利で金銭の請求ができるのかということが、もっとも大事な主張事実ということになる。
パソコンのワードを開いたまま、良い文章が思い浮かばずに沙和音は足踏みするばかりだった。ディスクに両肘を突いて頭を抱え考えあぐねるが、昨夜やから徹夜で図書館で借りた本読み続けたので、疲れが溜まってきた。
そのまま、床に敷いたアイボリー系のラグに転がって、散らばっていた一冊の本を手に取って開いた。昨日、室杜が最初に選んでくれた本だった。
請求の原因の主張事実及び当該主張を基礎付ける証拠の申出は、攻撃防御方法の一種とされているというところを何度も読み返しては、頭を捻って文章を浮かべてみるが、なんなか纏まらない。
本の中で解説されている、請求原因と攻撃防御方法という用語に躓いてしまって、先に進まないのだ。
沙和音は毛布をベッドから引き摺って、体に巻きつけた。少し休んだ方が良い文案が思い浮かぶだろうと、ゆっくりと眼を閉じた。
明日は仕事だから、室杜さんに合ったら昨日のお礼を言わないと、それに麻未さんや眞理恵さんにも心配かけないようにしないと。あ、理奈にラインするのを忘れないこと。色んな思いが沙和音の脳裏に交差した。
疲れた身体と脳は、そのまま沙和音を朝まで眠らせた。
次話の第7話は、11月末日ごろにアップ予定です。
これから、もっとストーリの進行をペースアップしていければと考えております。
まだまだ、お見苦しい稚拙な文章ではありますが、読者諸氏のアクセス数を励みに頑張って執筆してまいります。
次話は、いよいよ訴状を書き上げて裁判所に提出することになった、沙和音の姿を描いていきます。
室杜の登場で、どう沙和音が裁判を闘っていくのか、今後是非注目してください。
なお、話別のサブタイトルは著者のその場の苦し紛れで付けているため、後日本ストーリの加筆・訂正にともなって、相応しいサブタイトルに改題してまいります。
誤字・脱字についても、折を見て訂正いたします。
読者諸氏におかれましても、寒くなってきた今日この頃なので風邪などひかない様に、お体をご自愛ください。