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男女恋愛法  作者: hiroki.is
4/14

第4話・沙和音ー青空へ向かって。

予定より遅くなりましたが、第4話をアップします。

まだまだ揺れる、沙和音の気持ちを著者なりに描いてみました。

拙い文章ですが、どうぞ読者諸氏におかれましても、主人公沙和音の気持ちを読者の視点から読んでいただき紐解いていただければ、著者としては幸いです。

 時には、休日出勤の要請もあるが、原則土日は休みの週休2日制なので仕事がオフの時は、できる限り心身のリフレッシュに努めている。

小田急線新宿駅西口方向へ出てから、小田急百貨店本館の前で沙和音は理奈りなを待った。

前には西口広場があり、ビル群の灯りがキラキラと輝きを発している。

そんなビルの光彩が街中を埋め尽くしている中に、大勢の人々が蠢くように行き交っている。

午後6時過ぎに、理奈からラインが入った。

《いま、そっちに向かってるから、もうちょっと待っててね》

理奈とは、中学高校と同じ学校に通い、高校生の頃に一緒にバイトしたり遊んだり、悩みを打ち明け合ったりした、無二の親友と呼べる存在だ。

なにより、良真との架け橋をしてくれたのも理奈だった。

 先日、電話して良真と別れたことを話したら、久しぶりに会おうよということになった。

理奈は、歌舞伎町にあるレディース・スパでアロマセラピストの仕事をしている。

スマホの画面を眺めながら時間潰しをしていると、沙和音!っと溌溂とした声がした。

声がした方向へ顔を向けると、理奈が沙和音に小さく手を振りながら駆け寄ってきた。

 沙和音と理奈は、挨拶代わりにお互いのファッションチェックをして、ほほう~っと頬を緩めて、頷き合った。

2人は並んで、高層ビル群の方向へ向かって歩き出した。

「やっぱり、笹谷くんと別れちゃったんだ」

理奈が沙和音の傷心を慰めるように、言った。

「うん。別れたっていうか、彼からフラれたってことかな」

「そうなんだ。酷いことするね、あいつも。何だか責任を感じちゃうな。私としてわ」

「そんなの、リナには関係ないことだし、別に気にしなくてもいいよ」

「だってさ、最初に笹谷くんから沙和音の連絡先を教えて欲しいって、頼まれたのは私だしさ」

「いいのよ、そんなことは。彼と付き合うことを決めたのは、私の責任なんだから」

「でも、そんなに好い加減な奴だとは、思ってもなかったな」

少し憤った表情で、理奈は沙和音のポジティブな内心を労わった。

「リナはどうなの?今の彼氏とは?」

「まあーっ、何とか上手くやってるよ。たまにはケンカもするけどね」

沙和音と理奈は、新宿センタービルを通り過ぎ、新宿警察署裏通りの信号を渡って、新宿アイランドタワーへ向かっていた。

「LOVE」の英字四文字で形成された、赤色のモニュメントと樹木が新宿のオフィ―ス街に映えている。

2人は、地下に繋がる階段を下りて、ビアレストランに入った。

ビールの贅沢感と美味さが売りの店だ。沙和音と理奈は案内されたテーブルに座って飲み放題付の全6品のコース料理を注文した。

「カンパーイ!」と、低く揃えた声で喜びを押さえるように言ってから、2つのビールグラスをお互いの顔の前で軽く合わせた。

ビールを口に含むと、乾いた喉が一気に癒されて行く。唇に付いた生ビールの泡を舌先でペッロっと舐めて沙和音と理沙は、満面の笑みを同時に作った。

あっという間に、一杯目のビールグラスは空になり沙和音と理奈は、二杯目のビールグラスに口を付けた。

「でもさ、笹谷くんてどっちかていうと真面目な生徒だったでしょう。だから私は彼なら信用できるって思ったからこそ、沙和音とのこと取り持ったんだよ」

琥珀色のビールを飲みながら、口惜しいそうに理奈は言った。

「私って、結局は騙されてたのかな、彼に・・・・」

沙和音は、良真と別れたことの感懐を述べるように言った。

「私は沙和音の味方だしさ、何でも協力するから遠慮しないでね。困った時の親友じゃない。昔っからさ」

「うん。でもやっぱりこれから先の事を考えると、不安とかで行き詰まっちゃって」

料理が運ばれて来た。ソーセージの盛り合わせや、知床鳥のから揚げにポテトフライが盛られている。他にも、彩鮮やかなサラダなどもある。

「そんな、ポジティブな事ばかりを言ってちゃダメよ。私も応援するからさ。さーあ、食べよう」

理奈は、小皿に料理を取り分けて沙和音に渡した。沙和音と理奈はソーセージを齧った。

美味しいーっ、と2人同時に口に出して表情を綻ばせた。

「やっぱ、ビールにマッチするよね。この美味しさは」

理奈は、さらにビールグラスを煽った。

「ほんと。久し振りに新宿まで来て良かったよ」

沙和音はビールの刺激で少し、顔を赤く染めた。理奈に合って、一緒に食事をしたりするのも久し振りだった。

1Rの部屋で1人で食事しているより、遥かに気分はリフレッシュされて、たまの贅沢がおしゃべりを楽しくしてくれる。

「ちょっと、太ったんじゃない?沙和音って」

「えっ!本当にそう見える?」

「冗談よっ。沙和音って高校生の頃からちっとも変わらないって思ったの、今」

沙和音は、ドッキとしていた。目の前のビールと料理に少し困った表情で、一瞥をくれた。

両手でボディーラインを摩っている沙和音を見て、「まだまだ崩れてなさそうね」と言って、意地悪そうに理奈が笑みを作った。

「リナも、全然変わんないね。中学生の頃から綺麗だったしさ」

「今でも、十分に綺麗でしょう」

「もちろんよ」

「これでも、アロマセラピストだし、美容と健康管理には気を付けているんだから」

「そうよね。またリナの店で、私もしてもらおうかな、アロマ」

「うん。おいでよ。私さ、さらに腕を上げたから益々、沙和音のプロポーションに磨きが掛けられると思うよ」

「気持ちいいもんね。大きなお風呂に入って、サウナで汗を流した後のマッサージって」

「その後の、お酒も美味しいよ~っ」

心地良いビールの酔いが、沙和音と理奈のおしゃべりを弾ませた。

「もう一杯、行く?」

沙和音は、理奈のビールグラスが空になるのを待って、言った。

「もちろん、行くわよ。沙和音もまだ飲めるでしょう?」

「うん~。チーズピザも食べたいし、ビールももちろん飲みたいし、でも体重が気になるし、ちょっと複雑な心境かな」

「わかるわかる。その、悩める乙女心ってやつ」

理奈が、大きな笑い顔いを作った。

泡が零れ落ちんばかりの、ビールグラスが2つ運ばれて来た。

「じゃあー、改めて乾杯!純情可憐な乙女を舐めるなーあーっ!」

理奈が右手で掲げたビールグラスに、沙和音は自分のビールグラスを重ねた。里奈が飲む容姿に触発されて、沙和音もビールグラスを一気に煽った。

「沙和音、頑張ろうよ。あいつをギャフンて言わさないと、何だか私も悔しいよ」

理奈は俯いて、ハンカチで軽く眼を拭った。

「でも、本当に私にできるのかな、裁判なんて大それたことが・・・・」

沙和音は、天を仰ぐように顔を上に向けて言った。

理奈が一緒になって悔しがってくれるありがたさに、涙が溢れそうで思わず沙和音は天を仰いだのだった。

「大丈夫だって。証人だって何だって私がなってあげるし、弁護士の人も大丈夫って言ってくれてるんでしょう」

「うん。それはそうなんだけど」

「じゃあ、大丈夫よ。私だって沙和音と同じ立場なら、沙和音と同じことを考えると思うな」

「そうよね。じゃあ、リナの言うように頑張ってみるよ。そうしないと私自身が納得できなし、後からもっと後悔するようなことは嫌だから」

「そう、その意気よ。裁判官は正義の味方だから、必ず沙和音のことを分かってくれると思うよ」

「うん。またリナに助けられたような気がする」

「私もね、笹谷くんには、沙和音の事を裏切ったことの償いをさせたいし、私との約束も破ったんだから」

「約束?何のこと、それって?」

「ああ、ほら、前に沙和音の連絡先を笹谷くんに教えていいかって聞いたじゃない。その後にね、沙和音に酷い事したら私も許さないからって、だから沙和音のことを本気じゃないと、連絡先は教えないって言ったの」

理奈がそんなことを良真に話していたことを、沙和音は初めて知った。

「そしたら彼ね、大丈夫、俺を信じてくれって、だから頼む、武原たけはらさんの友達って知ってて頼んでるし、新堂さんのことは本気だから、約束するって、そう言ったのよ」

理奈は、少し憂いな表情をテーブルに落とした。

2つのビールグラスは、底に少しの琥珀色を残して、テーブルの上に寂しさを漂わせるかのように、コウスターの上で突っ立ている。

沙和音は少し俯いて、残されている料理をどうするかと、考察するような眼を向けた。

「今さらだけど、誓約書でも書かせておくべきだったよね」

「そんこと、リナが気にすることないって。結局は、私の自信の問題だし。何か飲む?」

「そうね。ウーロン茶」

沙和音がドリンクバーから、ウーロン茶を2つ持ってきて、1つを理奈の前に置いた。

うちに泊ってく?」

理奈は、北新宿の小滝橋通り沿い近くのワンルームマンションに住んでいる。

「ううん。部屋へ帰る。まだ内容証明を書かなくっちゃダメだし」

「そっか。オダザカの家には?」

沙和音の実家は相模原市でも、小田急沿線の小田急相模原駅が最寄り駅だ。理奈の実家も、沙和音と同じ南台にある。

「お正月には帰るよ。リナは?」

ホールスタッフが、デザートを持ってきてテーブルに置い行ってくれた。

「私の仕事ってほら、サービス業だから、基本お正月休みってないから。でも、一緒に初詣には行こうよ。あっ!デザート食べようよ」

理奈は、そう言ってスプーンで抹茶アイスを頬ばった。

「う~うっ、美味しい~っ」理奈が頬をつぼめて言ったのに習って、沙和音も抹茶アイスを口に運んだ。


 これからの流れで行けば、夜更けまでカラオケでもって感じになるとこだが、理奈は明日の日曜日も仕事があるらしく、夜は彼とのデートが待っているのだろう。

沙和音にも、良真に宛てる内容証明の作成の仕事が残されている。

 新宿アイランドタワー内にあるビアホールを出て、「LOVE」のモニュメントをバックに沙和音と理奈は、スマホでお互いの写真を撮り合った。

2人は、冬の冷気で酔いを覚ますように、ぶらぶらと他愛もない話をしながらビルの夜景を背に歩いた。新宿西口のユニクロ前で、再び家に泊って行けばという理奈の誘いに、沙和音は軽いがぶりを振った。

理奈と別れ惜しむ欠片を新宿の夜の街に残すかのように、沙和音は相模原の自宅への帰路へと急いだ。

 混雑する小田急線に乗り、町田駅でJR横浜線に乗り換えて、自宅近くのコンビニに寄り道をすると、深夜12時近くに自分の部屋へと、沙和音は帰り着いた。


軽くシャワーを浴び、ビールの酔いが残る頭をスッキリと覚ましてから、パソコンのワードを開き、無料でダウンロードしていた内容証明用の書式に設定した。

内容証明の書式には、制約があり一行に書ける文字数と一枚に書ける行数が決まっている。句読点なども一行の文字に数える。

あれこれと頭を捻り、キーボードを叩いるが思うような文章が中々と綴れない。

先日、冬樹ほのか法律事務所で貰った内容証明のサンプルや、図書館で借りた男女恋愛法のマニュアル書に掲載されているサンプルを交互に見比べながら、悪戦苦闘する沙和音だった。

 自分の文章に対するリファイン能力のなさを、痛いほど痛感した。夜も更けていくと部屋の中が深々と冷えて来るので、ホットミルクを飲んで身体を温めた。

眠くなってくる思考を払拭して、試行錯誤を繰り返した末に、それなりの内容証明の文章が書きあがった。

眠い眼をこすりながらも書き上がった内容証明を印刷し、それを読み直して誤字・脱字や要点の記載もれがないかなどを、沙和音は何度もチェクしてみる。


          慰謝料等請求通告書

 私は、あなたから平成○年11月21日、一方的に恋人契約を破棄されたことにより、恋人関係が破局し精神的苦痛を被りました。

これは恋人契約における、信義誠実の原則に反する契約不履行に該当致します。

その上、平成○年6月15日に、あなたに貸し付けた金5万円の返済も未だに、なされておりません。

ついては、恋人契約の破局原因はあなたの責めに帰すべき事由のものであり、慰謝料として金20万円を、あなたに対して請求すると共に、前記する貸付金5万円を本書到着後7日以内に、私の方へお支払いください。

前記する指定期日を経過しても、何らの金銭の支払もなされない場合は、法的措置を講じさせていただくことを、本書により通告いたします。

                  以 上

神奈川県厚木市幸町○‐○番地レオハウス205号室

 被通告人  笹谷 良真 様

神奈川県相模原市相模原○‐○番地パステルハイツ301号室

  通告人  新堂 沙和音   (印)


横書きの場合は、1行20字、1枚26行の範囲内という制限があるので、短い文章をいかに簡潔に、そして必要な要件を、いかに書き纏めるかに悩まされた。

でも、それらしい文章ができたと、何度も読み直して沙和音は、これでよしと頷いた。

3通とも同じ文章のものを、郵便局の内容証明郵便受付窓口に持って行き、配達証明を付けて発送すれば、沙和音の意思表示は良真の支配圏に入った時点で到達することになる。

残される問題は、良真がどう出て来るかである。

沙和音は、二杯目のミルクをレンジで温め、口に含んだ。

チョコクッキーを頬うばって、疲れた思考と少しの空腹を癒すと、ベッドに横たわって小さな欠伸をしながら布団を被った。

同時に、すうーっと眠りに落ちて夢の中へと、沙和音は引き込まれて行った。


(誰だろうこの男性は・・・・・大きな背中がぼやけて幾重にも重なり焦点が合わない。戸惑う沙和音は金縛りに遭ったように、身体が硬直していて逃げられない。一つの背中がくっきりと表れると、振り向きざまに沙和音を軽く抱きしめた。

男性の顔を霧が漂うように覆い隠している。抵抗しようとしも力が抜けてしまっいてるのは、腕の中にいる相手の男性に、沙和音は安心感と信頼感を寄せる感覚を察知しているのか。相手の男性の口元の霧が薄れて見えると、確かに見覚えのある唇の形をしている。その唇が、優しく沙和音の唇に重ねようとしている。あなたの顔をはっきりと見せて・・・・・)


夢想している沙和音は、ふっと眼を覚ました。

何だろう、今の夢は。ベッドの中で沙和音は、夢の中の出来事を考察するかのように考えあぐねた。

窓を開け、沙和音は空を見上げた。青空が広がっいるのを見て、重たかった頭の中がスッキリとした。

足下に地獄なんてない。天を仰げば青空が広がっているだけさ――――――

今は亡き、イギリスの名ミュージシャンが残したという言葉を沙和音は思い出しながら、少し、朝の街を走ってしてみようと思った。

ジョギングウエア―に着替えてスポーツシューズを履き、外へと飛び出した。

軽い準備体操をして、ゆっくりと走り始めた。

青空の下で走る沙和音は、あれはきっと南柯の夢だったのだろうと、遠い向こうの青空を一瞥してから逡巡した。

そして、先の夢の中での出来事はなかったことにして、忘れてしまおうと思った。

PCトラブルと、著者の体調不良が重なり不定期な連載になってしまっていますが、これからスピードアップを図っ行く所存です。

第5話は、9月中にアップできるように頑張ります。

読者諸氏におかれましては、最終話まで気長にお付き合いしていただければ、著者とし幸いです。

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