太郎とりゅーさん
その大剣が振るわれるたび、ゴブリンの首が飛ぶ。
「ギャヒィアッー!」
ゴブリンは、圧倒的な技量差があるのが解らないのか、それとも自分達の方が数が多いから勝てると思ってるのだろうか。
兎に角、バカみたいに突っ込んで来る。
…いや実際、おバカさんなんだろう。
そんな何十匹といるゴブリンの頭を、スパパパーンと斬り飛ばしてゆく。
その動きは洗練され、まるで舞っているかのようにすら見える。
「す、すげー!
マジすげーよ!りゅーさんマジかっけっー!
いやホントかっけー!」
頭の悪そうな感想を叫んでいるのは、誰であろう太郎である。
これではおバカなゴブリンと、いい勝負と思われかねない。
「イヤ…、タカガ、ごぶりんデスシ…。」
そう言いながらも、太郎にりゅーさんと呼ばれた者は、最後の一匹をスパーン!と斬り倒す。
最後の一匹になったゴブリンは、『あれっ?いつの間に俺だけになったゴブ?!』ってなことを言いがら斬られていった。
―言葉が解る太郎は、今までのこいつらの会話から、ゴブリンがかなりおマヌケな知能をしているのがわかってきた。
それはまあ置いておいて、りゅーさんと呼ばれた存在である。
【竜精衛士】Lv 50
HP 9,500
MP 5,900
戦士 Lv 50
騎士 Lv 45
弓兵 Lv 30
格闘家 Lv 30
魔導士 Lv 30
軍教官 Lv 20
スキル一覧
剣マスタリ Lv Master!
大剣マスタリ Lv 5
槍マスタリ Lv 5
盾マスタリ Lv 5
弓マスタリ Lv 4
回避 Lv 4
自己回復 Lv 4
竜魔法 Lv 3
気配察知 Lv 3
●歳経た古竜の骨や爪、牙等を触媒に、高位の賦与魔導士が多大な労力をかけて造り出した魔導戦士。
高度な魔術や会話能力まで有し、もはやゴーレムというよりもホムンクルスに近い存在。
竜の体力と魔力、歴戦の戦士の戦闘技術を併せ持つ。
太郎が彼を見た時に、見えたステータスがコレである。
気さくな王様から【タローの掲示板】を使い、プレゼントしてもらった何かの爪か牙の様なアイテム。
それに太郎の血を付ける事で現れたのが、りゅーさんこと『竜精衛士』だった。
その姿を一言で言うなら、"骸骨剣士"である。
さらにファンタジーものが好きな人なら、これを見て『それ竜○兵だー!』と叫んでしまうかもしれない。
ご存知、竜の牙から作られる、スケルトンみたいなアレである。
横文字にすると、ドラゴントゥースウォリアーである。
伏せ字にすると、某ダチョウの芸人さんの名前っぽくなってしまうのはご愛嬌だ。
2m近い骸骨の身体に精緻な文様が刻まれた鎧に盾、右手にはバスターソードとなかなかの迫力のあるお姿をしている。
それに最も特徴的なのが頭の部分で、そこは人の頭骨ではなくトカゲなんかの骨なのだ。
しかも真ん中に、短剣みたいな角まである。
その頭骨は、おそらくこの世界のドラゴンのものを模しているのだろう。
眼窩には青白い炎が揺らめいていて、夜中にこんなのに出会したら、一目散に逃げ出したい。
太郎も出会った時は、かなり逃げ腰だった。
「いやいや、俺、感動したっす!
洋画で見た殺陣なんか、メじゃないっすよ!
リアル凄腕剣士、すげー!
ゴブリンがもう、スパーンて!スパーンて!」
太郎、興奮して喋りまくっているが、周りは夥しいゴブリンの斬殺死体であふれている。
かなりR15な光景なのだが、興奮している太郎の目には入っていないようだ。
実は太郎、グロ耐性はメッチャ低いのだが、ふと我に返って周囲を見てしまい気分が悪くなるのは、もう少しあとのことになる。
りゅーさんが吹き出した黒煙から現れた時は、さすがの暢気者な太郎もビビりまくっていた。
が、りゅーさんが言葉を話せ、なおかつ丁寧な喋り口調な紳士さんなのがわかると、今度は彼のモロ、ファンタジーな出で立ちが興味をそそるようになった。
そうなると、当初のビビり具合なんか嘘のようにフレンドリーになる太郎。
調子にのって、"りゅーさん"なんてな愛称までつけてしまった。
それでもって、今の状況である。
どうやらりゅーさんが現れた時に出た黒煙が、かなり目立ったようだ。
程なくして四方から、ゴブリンの群れがワラワラと集まってきてしまったのだ。
その数にまたまたビビった太郎だったが、りゅーさんが『オマカセ、クダサイ、ますたー。』と言うなり、バッタバッタと草を刈るが如くに、全てのゴブリンを斬り伏せてしまったのである。
りゅーさん無双である。
太郎の出る幕など全く無かった。
いや、太郎も別に、それを悔しがってなぞいない。
それどころか、初めてみる剣を交わす実戦に興奮、りゅーさんの華麗な戦いっぷりに大興奮してしまっている。
もしりゅーさんが、凛々しい女騎士だったりしたら惚れてしまっていたかもしれない。
だがりゅーさんは骸骨なので、さすがに太郎も惚れることはない。
それ以前に、りゅーさんは声からすると男性のようだ。
太郎はホモっけもない。
「…アノ、ワタシハ、ますたーノ、シモベナノデス、カラ、
ソノヨウナ、ハナシカタヲ、サレナクテモ…。」
「へ?
…ああ、そうかー。
たしか気さくな王様も、絶対服従の従者とかなんとか言ってたよなー。」
「ハッ…。」
「でもなんか絶対服従とかって、あまり趣味じゃあないんだよなー。
もっとフレンドリーにならないっすか?」
「ハア…、デスガ、ワタシハ、ソノヨウニ、ツクラレタ、ドウグデスシ…。」
「ええー、道具っすかー…、なんかひくわー。
…んんー、まあいっかっ!
俺が"友達"として考えてれば良いだけだよな!
つーわけで、これからもよろしくっす!」
「エエト、ハア、ナニカ、チョウシガ、クルイマスガ、ヨロシク、オネガイシマス、ますたー。」
「あ、さっそくそのマスターっての、止めてよ!
なんかくすぐったいし!」
「イエ、ますたーハ、ますたーデス!」
「うわ、意外と頑固者かも、このひと?!」
どうやら太郎は、りゅーさんと何とかやっていけそうな雰囲気である。
その後案の定、周りの惨状にようやく気が付いた太郎が、おもわずゲロってしまったり、それを甲斐甲斐しく介抱したりするりゅーさんがいたりした。
またそこでりゅーさんから、モンスターはその体内にある"魔石"が換金対象になると教えてもらった太郎。
実際にりゅーさんから、ゴブリンの胸の中から魔石を取り出して(そこでまた吐きそうになったが、なんとか我慢した)、小さな黒い石を見せてもらった。
その後は【アイテムボックス】に、魔石と売れそうなゴブリンが持っていた剣だけを収納、あとの死体はまたもや【アイテムボックス】で大穴を作って埋めていった。
「…なるほどー!
モンスターを倒した時は、この魔石を持っていけばいいんすね!」
「ハッ、アト、ソレイガイニモ、ソザイトナル、ブイガ、アリマス。
ソレラモ、カネニ、カエルコトガ、デキルデショウ。」
「おおー、素材集めってのがいいっすね!
その素材で新しい装備を作るとか!」
「ハイ、ヨイ、ブソウハ、もんすたーカラガ、イチバン、デス。」
「うっわ、燃えるわー!」
太郎、それからまた歩きながら、りゅーさんからモンスターの討伐について教えてもらっている。
りゅーさんが何でそんな事を知っているのかというと、歴代のマスター、つまり今までのりゅーさんの所有者達と過ごした記憶もちゃんとあるらしい。
どうやらりゅーさんは、冒険者としても、超一流のようだ。
気さくな王様、かなりいいプレゼントをくれたみたいである。
もう太郎は、気さくな王様の方に足を向けて寝れない。
あ、気さくな王様が、どっちの方角にいるか判らないか。
「ム…。」
「どうかしたっすか?」
しばらく歩いていると、りゅーさんが足を止め、ある一方をその青白い炎を宿した眼窩で見据えている。
「アチラノ、ホウガクカラ、アラソイノ、ケハイガ、シマス。
オソラク、アノ、オカノ、ムコウカト。」
「なんですとー!
それは直ぐ行かなきゃ!」
「ハ?
シカシ、ドノヨウナ、ジョウキョウカ、ワカリマセンガ…?」
「いやいや!
この場合、お姫様とかが、悪漢とか盗賊なんかに襲われてるパターンでしょうがっ!
お姫様、いま助けに行くっすよおぉー!」
「イヤ、ソノ、カンガエハ、ドコカラ、デテクルノデスカー?!」
太郎、りゅーさんの質問に聞く耳はないようであった。
―次回!
やっとこさ、ヒロインが出てくるのか?
その予想は、次回をお楽しみに!
数年前からこんなのを書いてます。
生まれて初めて投稿した作品です。
よかったら、こちらも見てもらえたら嬉しいです。
『スマホのカード使いに転生しました!』
http://ncode.syosetu.com/n5440ca/
いつも読んで頂いてありがとうございます!
もし面白いと思っていただけたら、下の『勝手にランキング』をポチとお願いいたします!