タローと掲示板の住人2号
「うおおっ?!
誰か、新しいひとだっ!
そ、そうだ、書き込まなきゃ…!」
2 タロー:
こ、ここんにちは!
太郎、書き込みでも、どもってしまっている。
3 ゲストさん:
…ふむ。
概要を読んだが、貴様、ケイオスフィラの使徒か?
今度はヤツめ、何を目論んでおる?!
4 タロー:
え?え?
ちょ、いきなり挨拶スルーで何なんすか?
すんません、何のことかさっぱりなんすけど?
使徒?なにそれ、○ヴァネタっすか?
5 ゲストさん:
ステータスを見る限り、貴様は人族のようだが、ミナリスの信者ではないのか?
6 タロー:
またもやスルー?!
いったい何を言ってんのか、まったく解んないって!
…それより!
もしかしなくても、ゲストさんって、日本人じゃないっすよね?
7 ゲストさん:
…なんだ、同郷の者と思っておったのか?
8 タロー:
あ、やっと会話が出来た…。
…えーと、
そうなんです、てっきりこのスキルって、日本と繋がってるものだと思ってました…。
はあ、そうかー。
地球とはもう連絡出来ないのかな…。
9 ゲストさん:
む…、ま、まあそう気を落とすでないぞ?
10 タロー:
はあ、いや、落ち込んでるんじゃないんですけどね。
あ、気を使ってもらってありがとうございます。
なぜか詰問されていた相手から、気を使われる太郎。
返事を書き込みながらも、軽く落ち込んでいる。
だが実は残念がっていたのは、望郷からではない。
『日本の愉快な掲示板住人達から、地球のテクノロジーを教えてもらって内政チート!』な展開を期待していたのだ。
「あー、黒色火薬ってどうやって作るんだっけか、もっと調べておくべきだったなー。
たしか硝石が、難しかったんだよな…。」
―太郎、ノホホンとしている癖に、なかなか物騒な事を考えていた。
だがどうやらこの世界で、火薬の出現は回避出来たようだ。
11 ゲストさん:
…ふむ、どうやら何も知らされずに、ケイオスフィラに連れてこられた様だな。
先方も、太郎の境遇に同情したせいか、クールダウンをしてきたようだ。
12 タロー:
あのー…、さっきから出てきてるケイオスフィラって、やっぱり…。
13 ゲストさん:
うむ、おぬしが駄女神などと愉快な名前をつけた、混沌神のことよ。
この世界の神々の中でも、力ある神のひと柱だぞ?
14 タロー:
マジっすかっ?!
15 ゲストさん:
…まじ、とはなんだ?
16 タロー:
あ、俺のいた世界で『本当か?』って意味です。
それより、なんだかあの駄女神、あんまし崇拝されてないような気がするんですけど?
17 ゲストさん:
まあごく一部に、熱狂的に崇められとるがな。
大分部の者にとっては、厄介な神として疎まれておる。
特に人族の神、ミナリスとは犬猿の仲よ。
18 タロー:
マジっすか…。
19 ゲストさん:
うむ、まじだ。
ヤツが望むのは、物事がよりヤツの言う『面白い』方向へ転ぶ事だ。
そしてヤツの『面白い』は、大抵、この世に大混乱をもたらす。
さっそく日本の若者言葉を使うゲストさん、偉そうな喋り口調だが、ノリはいい人のようだ。
20 タロー:
はあー、それでいきなり、俺、問い詰められたんすね?
21 ゲストさん:
そうだ。
神の御志を汲み、その実現に注力する者を使徒と呼ぶ。
余は、おぬしが混沌神の使徒であると考えたのだが…。
22 タロー:
いやいや!
なんで俺が、あの駄女神ために働かなきゃならんのよ!
23 ゲストさん:
…ううむ、今、前回のケイオスフィラとおぬしの会話録を読んだのだが…、
どうやらおぬしは、あヤツに振り回されておるだけのようだな。
24 タロー:
そうなんすよ!
あの駄女神さん、なんとかならないっすかねっ?!
前回もほとんど説明らしいこともせず、一方的に切りやがったし!
25 ゲストさん:
余がどうにか出来るような相手ではないぞ?
さっきも言ったが、かなりの力を持った神なのだ。
ここで太郎、相手さんの口調が、ずいぶんエライさんな事に今更気付いたようである。
26 タロー:
…あのー?ちょっと話は変わりますが、『余』とかって言ってられてますが…、
もしかしてゲストさんって、凄い偉いひとなんですか?
…例えば王様とか…?
27 ゲストさん:
ん?
…まあ確かに、臣下からは『王』と呼ばれる立場におるがな?
28 タロー:
いきなり王様きちゃったっー!!
すすす、すいませんっ!
なんか俺、無礼な話し方しちゃったですよね!
あの、ひらにごよーしゃ下さいー!
太郎、時代劇で聞き齧った文句で謝る。
だけどそれ以前に、かなり失礼をしまくってる。
普通なら既に、お手打ちレベルではないだろうか?
29 ゲストさん:
まあ今更であろう?
それに余としても、気兼ね無く話せる相手というのは、周りにあまり居らぬからな。
今まで通りでよいぞ。
30 タロー:
は、はあ、んじゃあ遠慮無くさせてもらいます…。
31 きさくな王様:
うむ…、む…?
なんだ?この名は…。
32 タロー:
あっ!すすいません…、おもわず付けちゃいました…。
33 きさくな王様:
フ…フフフ…。
ハーハハハッ!
なんとっ!よりにもよって、この余を『きさくな王様』と名付けるかっ!
34 タロー:
あわわ…、すすいませんー!
無礼打ちは勘弁して下さいっー!
35 きさくな王様:
フハハッ!
なにも怒っておる訳ではないわ。
…それにおぬしが、何処におるのかも判らぬのに、どうやって処罰できるのだ?
36 タロー:
あ…、そうか。
37 きさくな王様:
いや、久しぶりに大笑いさせてもろうたわ。
おぬし、道化の素質があるぞ?
38 タロー:
いやー、異世界まで来て、芸人を目指したくないっす!
39 きさくな王様:
…混沌神の手先なぞ、目障りなだけだと思うておったが…。
少しおぬしの行く末を、見届けたくなったわ。
…うむ、しばし待て…、
…これをおぬしにやろう。
しばらくするとピコーンという音と共に、画面に会話とは異なるメッセージが現れた。
≫≫[きさくな王様]からプレゼントが1件届きました。
→【プレゼント】欄を開けて下さい。
40 タロー:
え?なんすか、これ?
41 きさくな王様:
うむ、まあ余を笑わさせてくれた、礼だとも思ってくれればよい。
受け取るがいい。
42 タロー:
ありがとうございます…って、そうじゃなくてっ!
ナニコレ?
プレゼントなんか贈れる機能があったんすかっ?!
俺、初めてしりましたよ?!
43 きさくな王様:
…なに?
いや、この掲示板とやらが余に初めて報せを送ってきた時、一緒に使用方法の説明も書かれておったぞ?
44 タロー:
ナニソレ、ボクシラナイ…。
おおよそ考えられる事は、
①あの駄女神が、太郎の方には説明文を付け忘れた
②あの駄女神が、前回で説明するつもりが忘れてしまった
③あの駄女神が、伝えない方が面白いと考えた
―太郎が頭に浮かんだのは、この辺のことだった。
いづれにせよ、あの駄女神がやらかしているのは、間違いないだろう。
45 きさくな王様:
ま、まあ…、あのいい加減なケイオスフィラのすることだからな。
おぬしも、この様なことで一々(いちいち)目くじらを立てておっては、身が保ぬぞ?
再びきさくな王様から、気を使ってもらう太郎であった…。
―次回!
初めての掲示板1号が王様だったことに、ビビる太郎。
はたして王様のプレゼントは何か?
乞うご期待?!
数年前からこんなのを書いてます。
生まれて初めて投稿した作品です。
よかったら、こちらも見てもらえたら嬉しいです。
『スマホのカード使いに転生しました!』
http://ncode.syosetu.com/n5440ca/
いつも読んで頂いてありがとうございます!
もし面白いと思っていただけたら、下の『勝手にランキング』をポチとお願いいたします!