タローが食事番
「今晩の食事は、俺がやります!」
太郎、手を上げてキッパリと宣言する。
その目には、強固な意志が感じられる。
「…え?
スタラさんがですか?」
「はい!俺がします!」
『俺にさせて下さい』ではない。
『俺がします』である。
もう決定口調だ。
「い、いえ、そんなスタラさんのお手を煩わせる…。」
「俺がします!」
「でも命の恩人にそんな事をさせる…。」
「俺がします!」
「ただでさえ、スタラさんには護衛の仕事を任せているんで…。」
「お・れ・が・し・ま・す!!」
太郎、なおもブツブツ言っているクルトの両肩に手をかける。
「クルトさん!」
「は、はいっ?!」
「旨い飯をしっかりと食う事は、やはり生きるためには大切な事だと思うんです、俺!」
クルトを見詰める目は、かなりマヂ…というか、据わっている。
「は、はあ…。」
たかが食事の事で、命の危機のような顔をする太郎の剣幕にクルト、ドン引いている。
「もちろん俺が旨い飯を作れる、ってわけじゃあないんですけど。
…それでも俺が作ります!」
「わ、わかりましたっ!
分かりましたからっ!
顔が近いだよっ!」
太郎、グモモモ~とクルトに覆い被さる様に詰め寄る。
まあはっきり言って、
『オメーの飯は不味くて少ないんだよ!
すくなくとも、オメーよりかは俺の方がマシなの作れるわ!』
と言外に言っているのだ。
クルトも自分が、メシマズ男なのは解っているのだろう。
『食事なんて、食えればいいじゃないですか…。』とブツブツ言いながらも、太郎が食事を作ることを認めた。
奴隷のお姉さん達も、それを苦笑しつつ生暖かい目で見ていた。
ちなみに、お姉さん達の料理の腕も、クルトと似たようなものらしい。
料理となると、皆さん目を太郎と合わそうとしなかった。
ただ…。
「あと3日ほどで街に着く予定とはいえ、何がおこるかわかりません!
ですからあまり1回の食事に、食糧を使えませんからねっ?!」
クルト、食糧を今以上に使う事は、ガンとして譲らなかった。
クルト、食糧をケチるためか、はたまた単に慎重な男なのか。
兎に角、全員があと10日は保ちそうな食糧があるはずなのだが、贅沢な使い方はさせようとはしなかった。
だが太郎、そうクルトが言うのを読んでいたようで、何か考えがあるようである。
「大丈夫!
そこは、りゅーさんがなんとかしてくれます!」
…まさかの、りゅーさんに丸投げであった。
いや、どうやらソコんとこは、事前にりゅーさんと話をしていたようだ。
「りゅーさん、じゃあ、お願いします!」
太郎がりゅーさんにそう言うや、りゅーさん、ひとつ頷いて単騎で何処かに駆けて行った。
彼の背には、盗賊共からせしめたクロスボウと矢筒がかけられていた。
「ちょ、ちょっと!
ゴーレムを護衛から離すなんて、何、考えてるんですかっ?!」
「あ、大丈夫です。
りゅーさん、この近辺で、危険な気配は全く無いって言ってますんで。」
「…あのゴーレム、そんな事まで判るんだ…。」
唖然とするクルトであった。
……そして1時間と少しして、りゅーさんは帰ってきた。
肩にはガゼルっぽい動物を担ぎ、腰にはニワトリ大もある鳩モドキを2羽縛りつけてのお帰りである。
大収穫である。
「…考えてみたら普通、ゴーレムが勝手にこんな狩りできませんよねえっ?!
なんなんですか!あのゴーレムっ?!」
クルト、今さらなツッコミを入れている。
その先には、獲物の血抜きから捌いていくまでを、流れるような手際の良さで行うりゅーさんがいる。
見た目は豪奢な騎士鎧を着込んだ骸骨剣士が、甲斐甲斐しく獲物を解体しているのである。
違和感がハンパない。
「はっはっはっ!
だってりゅーさんですから!」
「説明になってねーべさっ?!」
自分の事の様に胸をはる太郎に、またまたツッコミを入れるクルト。
クルト、今日はツッコミで大忙しである。
りゅーさんの歴代のマスターの中には、辺境を放浪の日々に暮らす者も結構いた。
おかげてりゅーさん、狩りの仕方から動物の解体まで、ひと通りが出来るのである。
りゅーさんは、サバイバリティーもすっげー高いひとだった。
しかもりゅーさん自身は食事が要らない。
りゅーさんが居たら、どんな辺境でも生きていけるだろう。
りゅーさん、様様である。
「まあまあ、りゅーさんはとっても優秀なゴーレムなんですよ!
だから色んな事が、自分で出来るんです。
それより、夕飯の準備をしましょう!
クルトさん、火をおこしてもらえますか?」
「は、はあ…。」
太郎、無理矢理話を逸らしてクルトを促す。
クルトもまたブツブツ言いながらも、薪の準備をしに向こうへむかった。
「―さて!
この間にと…。」
太郎、こっそり馬車の裏に向かう。
「では、【タローの掲示板】起動!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ここは混沌の女神によって、むりやり地球のニホンという異世界から連れてこられたタロー(19才童貞)が、いろんなことをボヤいたり、呟いたりする掲示板です。
異世界でひとり頑張るタローに、ぜひエールをお願いします!
今までの話を見たい人は、こっちを触ってね!
→[タローの過去ログ]
あ、個人情報がバレないように、くれぐれも自分の正体が判るような情報は書き込まないようにね!
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
1 タロー:
うおーい!
駄女神さまー!
そろそろ段ボールから出てきて下さいよー!w
太郎、どうやら○リッドで○ネークなゲームにハマっているはずの混沌神に用があるようだ。
そしてそのゲーム中毒神は、ゲーム三昧な生活を一段落出来ていたようである。
太郎がメッセージを書き込んですぐに返事が返ってきた。
2 駄女神:
今回も地獄から帰ってきたぜ…。
やふー!おひさー!
いやーメタ○ギアって凄いねー!
あんなものを造っちゃう地球のカガク、っていうか兵器ってコワイわー…。
アレ、そっちだったらS級モンスター並よ?
火竜とタメ張れるんじゃあないかしら?
3 タロー:
いやいや、アレ、フィクション、実在してませんからっ!
どうやら駄女神様は、あの巨大兵器が本当に在るもんだと思っていたようだ。
まあ確かに実在していれば、ファンタジーのドラゴンとタメを張れそうではあるが。
4 駄女神:
なんだー、そうなんだ。残念。
5 タロー:
そんな事より、ひどいじゃないですか!
プレゼントの機能とか、全然説明してくれてなかったし!
6 駄女神:
あ、そうだったけ?
いやーメンゴメンゴ。
こういう時、どう言うんだっけ、アヘエロ?
7 タロー:
テヘペロだっ!
つかなんかイヤラシイな!その響き!
あとやっぱり、サラっと流された!
8 きさくな王様:
やっと出てきおたかっ!
ケイオスフィラよ!
9 タロー:
ああ…、きさくな王様が出て来ちゃったよ…。
話がややこしくなるう!
10 駄女神:
おおー、キミが掲示板参加1号のひとだね!
はじめまして!
あと、相手の実名は出しちゃだめだよっ!今さらだけどw
11 きさくな王様:
そのような些末な事、どうでもよいわ!
それより貴様、この男を使い、此度は何を目論んでおるっ?
12 駄女神:
ええー?
タローくんとの会話ログ見たでしょー?
単に私が、地球でゲームしたいだけだよー?
13 タロー:
それだけに異世界へ跳ばされた俺…。
14 駄女神:
もお!拗ねないでよー!
でもキミ、そっちに行って、けっこー喜んでんでしょー?(ニヤニヤ)
ちゃあんと、モニターしてたわよー?
どおよ?初めてナマを見た感想は?(グヒヒ)
15 タロー:
うっ!
16 きさくな王様:
ええいっ!
話を逸らすなっ!
…混沌神よ、今一度問う。
貴様の言葉に、嘘偽りは無いと申すのだな?
17 駄女神:
ロンのモチよー!
18 タロー:
言い方が、びみょーに古りぃーな…。
19 きさくな王様:
…ならばその言葉、総神リンデル様に誓えるか?
20 駄女神:
うっわ!アンタ、恐い事言うわねー。
…うん、構わないわよ。
『我、ケイオスフィラは、統べる御神、リンデルの名に於いて彼の言葉に嘘偽りの無き事を誓う』
これでいーい?
21 きさくな王様:
う、うむ…。
……まさか本当に、己れの娯楽の為だったとは…。
22 駄女神:
ムフフー!甘いわね!
この混沌神様をなめないでもらいましょーか!
23 タロー:
それ自慢するとこか?
あと総神って?
24 駄女神:
いっちばんエライ神様のこと。
とーーてもコワイ神様だから、タローくんも迂闊に名前いっちゃダメよ?
私でも名前を呼ぶだけで、ブルッてきちゃうんだから!
25 タロー:
うっわー、聞かなきゃよかった…。
―次回!
掲示板スキルの新たな力はどうなった?!
構成が相変わらずダメダメで凹む作者!
次回こそ、その力が暴かれる!
見放さないで、お待ちあれ(お願いします)!
数年前からこんなのを書いてます。
生まれて初めて投稿した作品です。
よかったら、こちらも見てもらえたら嬉しいです。
『スマホのカード使いに転生しました!』
http://ncode.syosetu.com/n5440ca/
いつも読んで頂いてありがとうございます!
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