不良と呼ばれた男子高校生(攻略対象その1の場合)
俺の名前は佐伯勇治、柳清学園の2年だ。
見た目は不良だが別に本当に不良になったわけじゃない。
これには理由がある。
俺は母さんの連れ子で父親や兄とは全く血が繋がっていない。
再婚は俺が小学生、兄が中学生の時だ。お互い思春期で複雑な心境だったが徐々に距離を縮めてなんとか兄弟として形作って行った。
兄は勉強は得意ではなかった。でもその分人当たりがよく人徳があって人を引き付けるカリスマがものすごかった。いつも周りに誰かいたな。俺はそういうのは全くだが勉強は得意だった。だから将来は兄が社長で俺が補佐だななんてお互い軽口を言い合えるほどになっていた。
おかしくなったのは弟が生まれてからだった。母親に欲が出てきたらしい。弟を社長にしたいとこぼすようになった。俺は何バカなこと言ってんだと相手にしなかった。それがいけなかったんだろうか?もっとしっかりとめていればよかった?学園に入学後、初めての長期休暇で家に帰ると家のようすがおかしくなっていた。
会社を継ぐために大学の経済学部に入学した兄、このままいけば順調に後継者として育つはずだ。なのに母や会社の役員は兄は不出来で会社を継がせることはできない、俺を補佐にして弟を社長にすべきだなんて主張していた。
いつ俺が弟の補佐になったんだ?唖然とする俺に兄はひどく冷たい目を向けてきた。『うらぎりもの』そう言われた気がした。
跡目争いに関与するつもりはない。そう主張するつもりで不出来な息子になることにした。ピアスを開けて髪も染めて。何なら学校を退学になってもいいとさえ思ってた。実際は仲良くしていた先輩にはったおされて家の実情とか、俺の気持ちとか全部吐かされたけど。
先輩が掛け合ってくれたおかげで1年間様子見の処分になった。ただし成績は現状維持のうえ大量の課題もこなさなくちゃいけないけど。自分の将来をつぶすなって担任に怒られた。ちょっと感動したね。
春になって、変な後輩に出会った。すっげぇ方向音痴。あとで先輩からメールが届いて7月まで部屋にこもろうかと思った。遭遇率半端ないんだ。見かけるたびに全力で隠れるのは疲れた。最後の方は先生にも同情されたぞ?
やっと雲隠れ生活から解放されたと思ったらあのへんな後輩に突撃された。お礼だとか律儀だな。別にお前のためじゃないし・・・なんでお前が先輩のこと知ってんだ!?
なんてことだ。先輩から俺のこととか聞いていたらしい。しかも俺の今の態度で俺の先輩に対する気持ちとか・・・言うなよ?絶対言うなよ!?
それから時々何故か一緒に菓子を食う中になった。菓子はあいつ持参。お茶は俺が持参して話題は先輩のことだ。・・・うん。先輩大好き同盟だが何か文句あるか?
なんか会長にからまれるんだがお前心当たりないかって顔赤いぞ大丈夫か?あん?告白された?あのヘタレ野郎、先輩のことはどうしたんだ泣かせてたらコロだぞ。んで?なんて答えたんだよ?・・・まあな、あのヘタレより先輩の方がかっこいもんな?でも先輩女だからな?あ?な、なにいってやがる!?俺じゃ先輩に迷惑が・・・本当にそう思うか?
お、俺は今人生最大の幸運を使いきった。後輩にのせられて当たって砕けろ骨は拾わん!(ダメだろそれ)って勢いで先輩を呼び出し、今までのお礼とか、感謝している気持ちとか、家のことに対する覚悟とか全部話して・・・こ、告白なるものをしたわけだよ・・・
聞いて驚け愚民ども!あ、すいませんどうか聞いてくださいお願いします。ちょっと言ってみたかっただけなんです。あ、許してくれますかありがとうございます。
どこまで話したっけ?告白結果はよ?おお、それだよ。なんとだな?お、OKもらえたんだよィヤッホーイ!!マジ人生の幸運使い果たした感があるね!ちなみに返事は「あなた目が離せないんだもの」でした!ヘタレのことも確認したら「あれの面倒はもう見きれん」だった。うん、俺見捨てられないよう気をつける!ヘタレの二の舞にはなるまい。
後輩に報告したらキャッキャして喜んでくれた。先輩からメール届いた。
「浮気は許さないわよ^^」
後輩にもメール届いた
「ふたりでキャッキャして遊ぶのはかわいらしいけどほどほどにね?^^」
二人で速攻土下座しに行った。
後輩=ヒロインです
この話を第三者視点からみると
佐伯赤面→あ、堕ちた
茶飲み友達化→佐伯と後輩が付き合っている
になるわけですね。