オタクな姉を持つ男子高校生(モブ男子Bの場合)
ある日 、私立柳清高校に入学の決まった俺に乙女ゲームにハマっている姉は言った。
「柳清高校ってあの有名な王道学園だよね!?ネタがあったら提供ヨロ!ちゃんと報酬も渡すから!」
「なんだよネタって・・・」
その時の俺は本気でそう思っていたんだ・・・現実に姉の妄想するようなことが起こるわけないだろうって。
そんな俺に4月の入学式は衝撃だった。姉の妄想が現実に起きているのだから。クラス1の美少女と名高い春日 光、彼女の一言で顔を伏せ、胸を抑える奴多数。萌えているのではない。胸やけだ。俺は入学式のつぶやきしか知らなかったがあとから仲良くなった伊藤いわく、登校時からあんな展開が続いているらしい。さすがに絶句した。ついでに姉にメールした。報酬に5千円もらった。
春日光と彼女を取り巻くイケ面男子連中はその日から俺の多大な精神的ダメージと引き換えに小遣い稼ぎの対象となった。今も姉に絶賛実況中だ。調理実習で作ったクッキーを持ってなぜ退学にならないのか仲間内で七不思議に数えられている不良系イケ面・佐伯 勇治センパイにアタックする天音。
別に告白じゃない。本人いわく入学式のときに助けてもらったお礼らしい。伊藤に確認した。道を間違えて中庭に出た春日が佐伯センパイに道を聞いていたらしい。お、佐伯センパイが受け取った。顔が若干赤い。ああ、おちたかな?
「春日、無事に佐伯にクッキーを手渡す。佐伯赤面なう。っと」
「佐々木、また実況?あんた胸やけ大丈夫なの?」
おっとうわさをすれば?伊藤だ。こいつは俺と違ってなぜか乙女ゲーイベントに遭遇してしまう不憫属性だ。あんまり可哀そうなんで情報流してもらって報酬の山分けをしている。
「めっちゃ胸やけ中。そろそろ離れたいからお前なんかネタあったら提供して」
「え~、思い出すだけでも胸やけするんだけど・・・あ~それじゃあ4月後半だったか5月初旬だったかに、副会長と遭遇してたネタはしゃべったっけ?」
「は?何それ聞いてねぇ!?副会長ってあの姉御だろ?会長を尻に引いてるとか何とか。将来婚約確実とか言われてる・・・」
「そう、『乙女と書いて漢と読む』な姉御様。あのやり取りは会長を取り合うライバルの出現イベントだったね、しかもヒロインを権力で脅す悪役令嬢系」
「マジか」
「マジだ。本人言い終わってその場を離れた後に自分のセリフ思い出して「まるで乙女ゲーライバルのセリフかっ」て自分に突っ込んでたけど」
「まじかよ?キャラ変わってるじゃねえか姉御キャラどこ行った」
「なぁ?」
「俺副会長に親近感もっちまった」
「安心しろ、その場面を見ていた全員が膝をつく副会長に同情の生温かいまなざしを送った」
しかしなんて恐ろしい奴だ春日光。乙女ゲーの存在を知っている姉御な副会長に悪役令嬢系のセリフを言わせるとは、これはもはや呪いではないのか?
「なんかさ、さすがにどうかと思って春日さんに尋ねた子がいるらしいのよ。乙女ゲームって知ってるかって」
「なんて答えたんだ?」
「此処に入るためにずっと勉強漬けだったからゲームなんて触ったこともないって」
「つまりあれは天然なんだな?」
「そうみたい。それで、今女子の間で論争が起こってる・・・」
「なんでだよ」
「知らないから起こってる現象なら注意を促してやめさせればいいって子と、天然乙女ゲームキタコレ!って佐々木のお姉さんみたいにテンション上がっちゃった子の論争・・・」
「おい・・・おぃ・・・」
「ちなみに春日さんと大の仲良し親友候補な武藤さんは後者です」
「修正絶望的じゃねーか」
「それで情報流して金もらってるうちらが言えることじゃないけどね」
「やめろ俺らが一番汚いみたいじゃねーか。ココロガイタイ」
「私としてはこんだけ精神的なダメージ食らわされてるんだから慰謝料としてもっとほしいくらいだけどね」
「おまえ・・・強くなったな・・・最初はあんなに胸やけがするって顔色悪かったのに」
「こんなん神経図太くないとやってらんないわよ」
「なんか春日も哀れになってきた」
「何にも知らないんだしね、面白がってる人たちの手のひらの上で踊らされているというか」
「やつらが最凶じゃねーか」
「うちらが胸やけ起こすところでテンションMAXになるくらいにはね」
「俺・・・あいつらには逆らわないことを今誓った」
「遅いわよ」
今のところモブ子&ヒロインが4月初旬
生徒会副会長が4~5月
モブ男が6月後半の話なつもり