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なんだか周囲の状況がおかしいと感じる女子高生(周りから乙女ゲーヒロインと呼ばれる彼女の場合)

乙女ゲーヒロインみたいな彼女、本人はどう認識しているのでしょうか?

 小さい頃父が死んだ。過労だった。もともと忙しい人で私が生まれたのをきっかけに生命保険に入っていたために母の収入と合わせて親子2人、何とか生活はできている。


「やっぱり入っていてよかったわ。これで光を大学までやれる」

母は保険金を全て私の学費に充てようねとほほ笑んでいたが、夜にこっそり泣いていることを私は知っている。

「お金なんていらない、あなたに生きていてほしかったのに・・・」

寂しそうに父の写真に語りかける母の姿は私の脳裏に焼き付いて離れなかった。


 中学1年の時、学費がかからない高校を探して学校においてあるいろいろなパンフレットを読んだ。3年になってから探して成績が足りなかったら困るからだ。

 担任にも相談して進路相談室にも通って、そうして私に提案されたのは私立柳清学園だった。最初確認した時はなんでこんなところを紹介されるのか分からなかった。明らかに公立校より高い学費の私立高校だったからだ。


 疑問が顔に出ていたんだろう、進路指導の先生は丁寧に説明してくれた。私立高校としてかなり高い学費だがその分将来の保証が他に類を見ないこと、完全な全寮制で寮費が学費に含まれていること。寮は学食になっていてそこで食べた分は寮費に含まれるため最初に学費を払ってしまえばあとは支払いがいらないこと。そして、学費の免除申請をすれば家庭の収入状況と本人の学力如何によっては全額免除になる可能性があること。私はまだ中学1年だから今から頑張れば充分可能性があること。偏差値の高い高校だからここを志望校として頑張っていればたとえ柳清学園の合格ラインに届かなくても他の高校試験でも通用することを。


 そこから私は猛勉強を開始した。授業後は先生のところに通い、放課後も図書館に通って。友達はあまりできなかったがそれでもできた友達は応援してくれた。私が根を詰め過ぎると倒れる前に止めてくれて息抜きに連れ出してくれた。公園とか、ちょっとした甘味屋さんだったのは友達の気遣いだったと思う。カラオケとか連れて行かれても勉強漬けで流行りを全く知らない私は楽しめなかっただろうから。


 無事に合格通知が来た時、みんなでお祝いした。そのあとにまた連れ出された。今度はショッピングやカラオケ。寮に行くのに流行を知らないのは思春期の女子の中で不味いとのことだ。しっかり勉強させられた。おかげで入寮後に私服で寮を歩いても周りから浮かないですんだ。ほんと感謝。


 入学式の日に友達から初めが肝心って言われてたから精一杯身なりを整えて登校した。なのに校門前で強風にあおられて髪の毛がぐちゃぐちゃになった。目にゴミもはいったし散々だ。風がやんだら目の前に風紀委員の先輩がいた。どこか違反をしてしまっただろうか?不安になったけどどうやら目にゴミが入った私に気付いて平気か聞きに来てくれたようだ。親切な先輩だとは思ったがもうゴミは取れたので大丈夫だと伝えて校舎に進む。なんだか周りの人が立ち止っているがみんなも目にゴミが入ったのかな?


 昇降口前でクラスを確認して進む、廊下が三又になっていたの簡易地図で確認。まっすぐ進めばクラスに出るらしいと真ん中を通ったらなぜか中庭に出てしまった。地図には中庭なんて書かれていない。私は方向音痴だから地図がないとどうにもできない。困っていたら木陰からなぜか頭が金髪でピアスをした不良っぽい人が出てきた。「あれ?校則違反?」なんて一瞬考えたがそんなことより私が無事に教室に行くことの方が重要だ。他に人がいないのだからしょうがない。思い切って声をかけた。


 不良っぽい先輩は意外とやさしく、方向音痴であることと地図に書かれていない場所に出て完全に分からなくなったことを伝えたら書き込んでくれた。どうやら三又のところで左右どちらかに曲がればぐるっ校舎を一周できるらしい。真ん中は中庭に通じるだけなんだね。三又まで戻って教室に向かった。


 教室に向かう途中で後ろから声をかけられた。廊下の窓から中庭の様子が見えていて、新入生があの先輩にからまれたのかと心配して来てくれたらしい。心配してくれたのはありがたいけど、親切にしてくれた先輩を悪くいわれるのは面白くない。「でも、あの先輩はやさしくて、困っていた私に丁寧に道を教えてくれましたよ?」って伝えたらびっくりしていた。人を見た目で判断しちゃいけないと思う。しかし廊下の窓から見えていたなんて、他に道に迷った生徒がいなければとんだ赤っ恥じゃないだろうか。周りの人がときどきチラチラ見てくるのはもしかして私の赤っ恥目撃者だから!?うわっ、恥ずかしい(泣)


 教室にいったらもうみんな並び始めていた。急いで指定された机に荷物を置いたら隣の男の子が迎えに来てくれた。どうやら彼も私の赤っ恥場面目撃者らしい。うぎゃーっと悲鳴を上げる私に迷子にならないよう気をつけろよ?とからかってきた。周りの人もニヤニヤしている。中学の時は勉強漬けでこんなことなかったから新鮮ではあるけど、いじられキャラは嫌だなぁ。とほほ。


 いよいよ入学式だ。これからの高校生活を考えるとワクワクする。私は将来医者になりたいからここの高度な授業内容は絶対受験に役立つはず!友達もさっそくできたし・・・?いじられ役だけど、そのうち挽回してやる。そんなこと考えながら式典の話を聞いていたらさっきの人が出てきた。生徒会長だったんだ。だから新入生の様子も見ていたんだね、責任感の強い人なのかな?・・・あれ?みんな胃をおさえてる。気持ち悪いのかな?頭をおさえている人もいる。式典長いから気分悪くなっちゃった?先生呼ぼうか?


 

結果、彼女はすごくまじめに生きているだけだった。

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