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chapter 4

 次の日も、アヤはお気に入りの丘に来ていた。

 この日は午前中に訪れたにもかかわらず、先客がいた。その先客は、昨日一緒に話をしていたセイラだった。

 セイラのことを考えたくてこの場所に来たはずだった。いつもセイラと会っていたのは午後だったため、午前中に来てみた。だから、まさか本人に合うとは思っていなかったアヤは、内心驚いていた。

 そんなことはおくびにも出さず、アヤはセイラと何気ない話をしていた。

 すると、街の方から鐘の音が聞こえてきた。それは、正午を知らせる音だった。


「アヤー?」


 丘の下から、聞きなれた声がした。

 タクトが丘までアヤを迎えに来たようだ。


「今行くー」


 アヤはそう返すと、セイラに「またね」と言って丘を下りる。

 タクトは、アヤを迎えに行こうと丘を少し登ったところで、思わず足を止めてしまった。

 小さい丘はそんなに高くないため、少し登るだけでも上のことが判ってしまう。そのため、丘を少しだけ上がったタクトの目には、アヤともう一人の少女の姿が映った。

 タクトは、アヤの隣にいた少女を見て、目を見開いた。しかし、すぐにアヤと合流したため、すぐに笑顔を浮かべた。


「アヤ、一緒にいた子は?」


 さり気なく尋ねてみる。


「友達。夏休みが始まる前に、この丘で会ったんだ」

「そうなんだ」


 アヤの答えに頷きながら、タクトはそっと隣を歩く彼女を見た。

 ――アヤは、知っているのかな。でも、この様子じゃきっと知らないんだろうな。

 そう思うと、タクトは何とも言えない気持ちになった。

 そんな気持ちを隠したまま、タクトは午後を過ごした。






 丸い月が一番高くなるころ、城から出ていく人影があった。

 黒いフードのついたマントを着ているため、それが誰なのかは判らない。その影は、まっすぐ街を抜けて小さな丘へ向かっているようだった。

 白い月明かりが注いでいるため、迷いなく進んでいく。

 その人影が丘に着くと、丘にも人の影があった。


「こんな夜遅くに外を出歩くなんて、感心しないな」


 黒いフードをかぶった人影が、丘にいる先客の背後で口を開く。声からして、少年のようだ。


「――っ!?」


 丘にいた人影は、突然声をかけられたことに驚き、勢いよく身体ごと振り返る。月明かりによって見えた顔は、まだ幼さの残る少女の顔だった。


「夏とはいえ夜は冷えるし、それに何より、危ないよ?」


 口元にやわらかい笑みを浮かべて言った少年は、ゆっくりとした動作でかぶっていたフードをとった。


「あ……。タクトさん」


 黒いマントを着ていた少年は、タクトだった。


「やぁ、久しぶりだね」


 タクトはそう言うと、にこりと優しく笑う。その笑顔を見て、少女はほっと息を吐く。


「お久しぶりです。でも、どうしてここに?」

「昼間、君の姿が見えたからね。ちょっと気になって来てみたんだ。まさか、君がこんな時間にここにいるとは思ってもいなかったけれどね」

「それは……」


 少女は途中で言葉を切り、俯いてしまう。そんな少女を見て、タクトは一瞬だけすっと目を眇めた。

 心当たりがあったのだ。かつての自分が、そうだったように。

 だから、少女が口をつぐんだ、理由の続きを静かな声で告げた。問いかけという形をとって。


「この丘にいる時、身体が楽なんだろう?」


 タクトの言葉に、少女は弾かれるように顔をあげた。

 目の前で優しく微笑むタクトには、すべてお見通しのようだった。


「……はい」

「まぁ、元気そうで安心したよ」

「それは、私もです。タクトさん、急にいなくなってしまったから……」

「ははは、ごめんね」


 タクトは困ったような笑みを浮かべて謝る。

 アヤに救われたタクトは、挨拶をすることもなくアクマ側を去った。それはあまりにも突然の出来事で、そのことを後から聞かされた少女は戸惑うことしかできなかった。アクマとはいっても変わり者だった少女にとって、タクトは唯一の理解者だったのだ。


「急すぎたよね。僕は元気にしてるから、安心して」

「今、元気そうなところを見て安心しました」

「それはよかった」


 そう答えて笑ったタクトだったが、一瞬だけ顔に雲が射した。少女はそのことには気付かず、タクトの笑顔につられて笑みを浮かべる。


「さてと、僕はそろそろ帰るよ」

「そうなんですか」


 少女は少し残念そうな顔をする。


「あまり長く城を抜け出しているわけにもいかないからね」

「そうですよね」

「じゃあ、またね」


 タクトはそう言うと、フードを深めにかぶった。そして、丘を後にした。

 その姿はすぐに暗闇の中に消えた。

 タクトは丘を下りて少し歩いたところで足を止めると、先程までいた場所に目をやった。

 少女と話していた時に感じたアクマの気配が、あの丘の上に来たのだ。


「逃げてきて正解だったな……」


 タクトはぽつりと呟いた。

 丘を去る前に少女に言った理由は嘘ではなかったが、本当はあの丘を去る口実だったのだ。

 アクマから裏切り者扱いされているタクトが、今アクマと会うのはまずい。だから、逃げるように丘を下りてきたのだった。





 タクトが去ったことで、丘に一人残された少女はふと空を見た。

 丸く白い月が、辺りをぼんやりと照らしていた。


「姿が見えないと思ったら、こんなところにいたのね」


 少女の上空から声が降ってくる。その声は、少女よりいくらか年上の女の人のものだった。少女は女の人の姿を見ると、顔を下に向けて辛そうな表情をした。


「…………」

「さ、戻るわよ」


 少女は無言のまま頷くと、上空に姿を現した女の人と一緒に小さな丘から姿を消した。





 タクトが丘から城に戻ってくると、二階のバルコニーに人の姿があった。

 見上げる形でその人影に目をやると、どうやらアヤのようだった。きっと、眠れなくなって外に出たのだろう。

 アヤはなかなか寝付けなくて、薄手の上着を羽織って部屋についているバルコニーに出ていた。

 考えていたのは、セイラのことだった。

 二人で話をするようになって、セイラは思っていた通り優しい子であることを知った。けれど、時折セイラからアクマの気配を感じる。信じたくはないが、セイラはアクマなのかもしれない。あんなに、アクマらしくないのに。

 アヤは青白い光を放つ丸い月を見ながら、ぐるぐると悩んでいた。


「こんな時間にどうしたの?」


 突然声をかけられて、アヤは考え事を中断した。そして、声のした方に目をやる。すると、ちょうどアヤのいるバルコニーの下、かぶっていたフードを下ろしながらこちらを見るタクトの姿があった。


「…………」


 答えずにいると、ふっとタクトの姿が消える。次の瞬間には、アヤの隣にタクトは立っていた。


「眠れ、なくて」


 アヤは小さな声で答える。


「タクトこそ、どこか出かけてたの?」


 アヤの隣に立つタクトは、黒いフード付きのマントを着ていた。その姿は、今でも暗闇に紛れこんでしまえそうに見えた。


「まぁ、ね」


 タクトの答えは曖昧なものだったが、アヤは深く尋ねようとはしなかった。


「それより、何かあったの?」

「どうして?」


 思いがけない言葉に、アヤは首を傾げる。


「なんだか、元気がないような気がして」

「何もないよ」


 そう答えるアヤの声は、いつもとそう変わらないものだった。


「そう? もし、何かあったら、僕でよければ話を聞くから」

「うん。ありがとう」


 アヤはタクトの顔を見ると、優しい笑みを浮かべた。





 数日後の夕方、この日もアヤはセイラと丘で話をしていた。

 何度も会ううちに仲良くなっていき、今ではお互いのことを話すようにもなった。

 夕刻の鐘の音が街の方から聞こえてきて、セイラは立ち上がる。


「そろそろ戻らないと」

「そっか。またね」


 いつものように笑顔を浮かべ、アヤはセイラに手を振る。セイラもアヤに手を振り返すと、丘を去っていった。

 そして、セイラと入れ違いになるかのようにして、丘にタクトが姿を現した。


「アヤ、さっき話をしていた子は?」


 アヤの隣に立ったタクトは、セイラのことを尋ねる。


「この前話した友達だよ。セイラっていうの」


 その答えを聞いて、タクトはきゅっと唇を引き結んだ。

 本当のことを伝えるべきか、それとも、もう少し時間を置くべきか。タクトは悩んだ。

 真実を告げれば、確実にアヤは傷つく。それが判っているから、本当のことを話せずにいる。けれど、いつかは知られてしまうことでもある。そうなった時、より傷つくのは目に見えている。それなら、今ここで告げてしまった方がいいのかもしれない。

 タクトはそう考えると、ゆっくりと口を開いた。真実を言うために。


「アヤ……。さっきの子、セイラのことなんだけど……」


 タクトの声は、いつになく真剣な響きをしていた。だから、アヤの表情も自然と真剣なものへと変わる。


「アヤのことだから、もう気付いているかもしれないけど」


 タクトの声は、ゆっくりとしていて重かった。それで、アヤは判ってしまった。

 この先の言葉は、安易に予想できる。ここから先は、聞きたくない。聞いては、いけないのだ。

 そう思いながらも、アヤは自分の耳を塞ぐことはできなかった。


「セイラは、アクマだよ」


 目の前が真っ暗になった。タクトが発した言葉が、頭の中で何度も繰り返される。

 覚悟は、していたつもりだった。それでもやはり、ショックは大きかった。

 反応のないアヤが心配になり、タクトはしゃがんで表情を窺うようにして声をかける。


「アヤ……?」

「……気付いては、いたんだよ」


 それは、とても弱い音だった。今にも消えてしまいそうなほど小さく、震える声でアヤは言葉を紡ぐ。

 タクトに顔を見せないよう俯くアヤの表情を見ることはかなわなかった。しかし、タクトにはアヤが泣いているように思えた。


「なんとなく、そうなんじゃないかって。そう思うこと、あったよ……。でも、でもね」


 アヤの声は次第に涙ぐんでいった。


「信じたくなかった」


 そう言って、アヤは静かに涙を流した。タクトはそっとアヤを抱きしめる。


「信じたく、なかったよ……」


 抱きしめてくれたタクトの背に腕を回し、ぎゅっと服を掴む。

 泣きじゃくるアヤを、タクトは先程より強い力で抱きしめることしかできなかった。


「あんなに、優しい子なのに……」

「うん……」


 腕の中で震えているアヤを見て何とかしたいと思うのに、何もしてあげられない。無力な自分を感じながら、タクトはただただアヤの言葉を静かに聞くことしかできなかった。

 タクトに抱きしめられたまま、アヤは泣き続けた。たまに、言葉を漏らしながら。

 そんなアヤの背を、タクトは優しい手つきでさすり続けていた。

 陽が傾き、街が茜色に染まりだしたころ、アヤは泣き止んだ。


「ごめん……」


 涙が止まったアヤの第一声は、謝罪だった。

 本当は、頭のどこかで判っていたのだ。

 何故、タクトがセイラのことを教えてくれたのかを。悩んだ末に、早いうちに知った方が傷が浅くて済むと、そう考えて話してくれたことを。

 だから、アヤは謝った。困らせてしまったであろう、タクトに。


「アヤが謝る必要なんてないよ。僕の方こそ、ごめんね。アヤを、傷つけた」


 そう告げるタクトの声は、いつも以上に優しく、そして温かかった。


「ううん。話してくれて、ありがとう」


 判っているから。真実を告げる前、タクトがどんな気持ちでいたのかを。想像でしかないけれど、間違っていないことを知っている。確かに、傷ついた。けれど、感謝こそすれ、責める理由にはなり得ない。

 「ありがとう」と言ったその一言に、アヤはそんな意味をこめていた。


「帰ろうか」


 タクトはアヤの手を取ると立ち上がる。アヤが「うん」と頷き返すと、二人は城に向かって歩き出した。





 その日の夜、アヤはタクトの部屋の扉を叩いた。

 扉を開けた時にアヤが立っているところを見たタクトは、驚くこともなく自然と部屋の中に招き入れた。

 アヤは丸テーブルにある椅子に腰かけた。そして、小さな声でタクトに尋ねる。


「ねぇ、タクトは、セイラのことを知っているんだよね?」

「まぁ、多少はね」

「教えてもらってもいい? セイラのこと、知りたいの」


 下を向いていたアヤは顔をあげ、タクトを見る。


「ダメ、かな……?」

「ダメじゃないよ」


 今にも泣きそうにしているアヤを見て、タクトは目に優しい光を浮かべる。


「そこに座ってて? 今、お茶を入れてくるから」

「うん」


 タクトはそう言い残すと、部屋を出て行った。

 少しすると、紅茶を淹れてタクトが戻ってきた。そして、アヤの向かい側の席に座る。

 二人が紅茶を口に含み一息吐いたところで、タクトが語りだした。


「僕は、セイラはこちら側の人間だと思ってる」

「それって、セイラがアクマらしくないから?」

「それもある」


 理由が一つではないことを知ったアヤは、ことりと首を傾げる。


「セイラがいつからアクマ側にいるのかは、正直僕も判らない。ただ、セイラが普通のアクマ達と違うところで生活していたことは知ってる」

「どうして?」

「それは、僕も知らないんだ。けれど、これは予測でしかないんだけれど、セイラが病弱だったのが原因かもしれない」

「えっ? じゃあ、もしかして……」


 タクトの言葉を聞いて、アヤはあることに思い至る。


「うん。アヤが思っている通りだと思うよ?」


 タクトも、同じことを思っていたようだ。

 アクマと普通の魔術師とでは、大本となる魔力の種類、質が違う。今のようにアクマの行動が目立つようになる前までは、アクマの魔力にあてられて体調を崩す人は少なかった。しかし、アクマの力が強くなり始めた今、体調不良を訴える人は増えてきている。アクマの魔力にあてられると言っても、人によって差がある。きっと、その人の体質によるものが大きいのだろうと言われている。

 セイラが病弱だったのは、もともとアクマの魔力にあてられやすい体質だったせいだろう。


「セイラは、アクマの力とは相性が悪いんだと思う。だから、病弱だったのかもしれない」

「そうなんだ」

「でも、最近は元気そうにしていたよ」

「遠くから見ただけで判ったの?」


 アヤは数日前のことを指して言った。


「いや、その日の夜にあの丘に行ったんだ。その時に、セイラに会ったんだよ」

「そうだったんだ」

「うん。それで、話を戻すけれど、僕がまだアクマで、操られる前まではアクマらしいところがなくて周りから変わり者扱いされていたって話は、したことがあったよね?」


 その言葉に、アヤは静かに頷く。

 タクトがこちら側に来て少ししたころ、思い出話のようにアヤに話してくれたのだ。


「そんな環境の中でも、クリスがいつもかばってくれていたってことも話したよね」

「うん」


 当時、タクトの話を聞きながら、クリスは結構優しいところがあるんだなと思っていたことを覚えている。


「ずっと変わり者扱いされていたから、自然と一人になっていったことも言ったね」

「そうだね……」


 心なしか、アヤの声が沈む。

 タクトの思い出話を聞いていた時も、この部分は聞くのが辛かった。

 そんなことを思い出して、アヤの顔は自然と下を向いていった。

 もとから元気はなかったが、今の話でさらに落ち込んだアヤを見て、タクトは哀しげな表情を浮かべる。しかし、話をやめることはなかった。


「あの時は話さなかったんだけど、そのころにセイラに会ったんだよね」


 そこで一旦紅茶を含み、息を吐く。そしてすぐに、タクトは続きを話し始めた。


「初めて会った時はびっくりしたよ。顔色が悪くて、今にも倒れそうでさ。心配して部屋まで送っていったら、『優しい人なんですね』って笑ってたんだ」


 タクトはその時のことを思い出しているのか、懐かしそうに当時のことを語った。


「それから、よくセイラと会うようになってね。そして、ある日思ったんだ。セイラは光側の、普通の魔術師なんじゃないかって」

「純粋、だったの?」

「多分ね」


 セイラがアクマの魔力にあてられやすい体質であるというのは、本当のことなのだろう。けれど、体質の他にも理由があったのも確かなのかもしれない。

 アクマの魔力にあてられてしまうのは、その人の性質の他に、心が純粋であるという理由もある。特に、幼い子供がそうなのだ。

 セイラが病弱だったのは、もとからの体質と、単に純粋であったという両方の理由があるのかもしれない。


「こんな言い方するのはよくないけれど、僕がセイラに会った時、セイラはまだ子供だったんだ。まぁ、僕も二つくらいしか変わらない歳だったけどね」


 そう言って、タクトは笑って見せた。


「それじゃあ……」

「うん、そうだね」


 最近タクトがセイラに会った時、タクトから見ればセイラは元気そうにしていた。そこから考えられることは、そう多くない。

 アヤとタクトは同じ可能性を考えていた。


「セイラは、アクマの魔力に慣れてきたのかもしれない。まぁ、体質のせいでそう簡単には普通の人と同じようにはならないと思うけれど、少なくとも、ただ単に純粋だからあてられていたって線はもうなくなるだろうね」

「でも、このままアクマ側にいたら、その体質も変わる可能性って出てくるよね?」

「確かなことは判らない。でも、否定はできないね」


 それを聞いたアヤは、唇を引き結び考えこんでしまう。

 タクトは静かに、アヤが口を開くのを待っていた。


「……タクト」


 数分後、アヤは下を向いて考えたままタクトの名前を呼んだ。


「ん?」


 タクトは何も言わずに、アヤに続きを促した。


「私、セイラのこと助けるよ」


 そう言って顔をあげると、まっすぐにタクトを見た。アヤの目は真剣で、強い意志が込められていた。


「何とかして、こっち側に連れてくる」

「うん。僕も、手伝うよ」


 アヤの答えを聞いたタクトは、同じく真剣な表情でそう告げた。


「ありがとう」

「お礼はいいよ。僕だって、セイラのことは何とかしてあげたいと思っていたんだから」

「そっか」


 話が落ちつくと、アヤはティーカップに残っていた紅茶を飲んだ。


「ごちそうさま。セイラのこと、話してくれてありがとう」

「どういたしまして」

「本当に、今日はありがとね」


 改まってお礼を言うアヤに、タクトは一瞬目を見張った。


「そんな、昼間はアヤを傷つけちゃったし……」

「うん。でも、後になって知るよりは良かったから。だから、ありがとう」

「……うん」


 アヤの優しい笑顔を目の当たりにしたタクトは、少しだけ俯いて頷いた。


「おやすみなさい」

「うん、おやすみ、アヤ」


 アヤが部屋を出ていくと、タクトは詰めていた息を一気に吐き出した。心なしか、頬が熱い気がする。

 タクトは再び息を吐くと、テーブルの上にある食器を片付けるために動いたのだった。



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