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Nulla

人は、未知なるものを恐れ、遠ざける。

新しい考え、新しい文化、新しい方法――

そして、新しい病もまた、その代表例だ。


人に害をなさないものは、

時間をかけて受け入れられていく。

だが、人に害をなすものは違う。

恐怖は嫌悪へと変わり、やがて排除される。


それでも、この世界が広がってきたのは、

恐怖を好奇心へと変えた者達がいたからだ。


これは――

病を恐れず、病を愛した、

ひとりの男の物語である。


6年前、世界にひとつの病が現れた。


発症の兆しは、あまりにもささやかだった。

皮膚に浮かぶ細い線。

それは、まるで植物の芽が描いた痕のようだった。


やがて線は増え、形を持つ。

皮膚の下で、何かが育っていく。


最初のうち、痛みはない。

だから多くの者は、それを見過ごした。


だが病が進行するにつれ、

植物は確かに”成長”を始める。

そのたびに、耐えがたい痛みが体を襲った。


神経は少しずつ侵され、

叫び声さえ意味を失っていく。

やがて痛みは消え触覚も、温度も、恐怖さえも薄れていった。


そして最後に残るのは、

人ではなく、

完全に植物となった身体だけだった。


元には戻らない。

その不可逆性こそが、人々を恐怖させた。


病は研究され、名前を与えられ、

そして――隔離される事になった。



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