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prologue 〜 悪夢 〜

 これは悪夢だ。

 何度も繰り返し見た、ソレ。

 視界一面を覆い尽くす紅蓮。

 猛烈な吐き気を催すような腐臭と肉の焼ける臭い。

 周囲三百六十度から絶えず耳に届く悲鳴。

 絵画など到底生温い、本物の地獄がそこにはあった。

 私はただソレを眺めることしかできない。

 無力。

 ただ、無力だった。

 どれだけ他者から羨望を集めようと。

 圧倒的な魔力を持っていようとも。

 本物の地獄の前では微塵も役に立つことはなかった。

 今思えば、それはただの思い上がりでしかなく、あの時の私の実力など、まだまだ未熟なだけだった。

 できるのはただただ思い知ることだけ。

 永遠に拭い去ることのできない後悔のみが心の奥底に楔を打つ。

 最善は、この時に一緒に死んでおくべきだった。

 きっと――

 でなければ、こんなことにはなっていなかった。

 今、こんなにも虚無に溺れることもなかったに違いない。

 死人に口なし。

 死屍に鞭打つ。

 非難されることはあれど、後悔することも、言い訳を口にすることもなかったはずだ。

 あの時、ああしていれば。

 いや、もっとこうしているべきだった――

 後悔は後悔を呼び、懺悔は尽きることがない。

 何故、私は生きているのだろう。

 生きてしまっているのだろう。

 みっともない恐怖に打ち負け、生にしがみ付いてしまったのだろう。

 家畜の餌にすらならないゴミ以下の執着をどうしたら捨てることができただろう。

 人のように頬を濡らす心はすっかりと乾き切ってしまった。

 他人に思いを馳せる気心は真を無くしてしまった。

 私はもう生きているとは言えないのだろう。

 生きる意味を成していないのだろう。

 しかし――


 それを肯定する友はただの独りもいない。

 もちろん、それを否定する悪意もない。

 ただ、そこにあるだけ。

 罪深き石ころとして、私は今日もここにある。

 目の前のキャンバスに筆が走ることはなく、ただただ『無』が広がっている。

 永遠と呼ぶには余りにも愚かすぎる一万の罪が。


 あぁ――


 あぁ――――

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