第3話『冒険者ランキング1位(18歳イケメン)に決闘を申し込まれたので、皇帝がキレました』
ギルド本部に戻ってきた私たちは、
“影竜を単独討伐した幼女とその付き人の謎の黒マント男”として、瞬く間に噂の的となった。
「なぁ、見たか? あれがリリィ様ご一行……!」
「ただの子どもじゃねぇよ。俺たちが逃げた影竜を……」
「しかも付き添いの男、アレ絶対ただ者じゃねぇ……」
「……え、いや、あれ皇帝陛下じゃね?」
「は? バカ言うな、お前見間違い――」
「静かに」
黒マントが低く呟くだけで、場が凍りつく。
「……(やっぱり陛下だー!!)」
全員が心の中で土下座した瞬間だった。
◇ ◇ ◇
そんな中、現れたのは――
「やぁ、君が噂の……リリィ嬢かな?」
長身のイケメン。銀髪赤眼、やたらキラキラした笑顔。
……個人的には、「爽やかを勘違いしてる系男子」だ。
「僕はラファエル・グレイス。冒険者ランキング、現1位」
うん、知ってる。ギルドでやたらとポスター貼ってある。
「君の実力、見てみたいんだ。よければ、僕と――決闘しないかい?」
「……えっ」
いや、なんでそうなるの? 決闘って、剣か魔法か知らないけど、私5歳だよ?
「えっと、私お菓子食べながらアニメ観てたいんだけど……」
「その“余裕”、試したくてね。ここで決着をつけよう。君が本物かどうか……!」
――パァン。
乾いた音が響いた。
振り返ると、カイザード(※中身皇帝)が、無表情でラファエルの頬をはたいていた。
「……何すんのさ!? 僕はただ、実力を――」
「俺のリリィに戦闘を申し込んだ罰だ」
「いや、彼女冒険者で――」
「それがなんだ。“リリィは戦う必要がないほど強い”。私がすべて片付ける」
「いや、なんであんたがキレてんの!?」
「リリィに対する感情以外、俺はこの世界に興味がない」
「怖っっっっ!?」
◇ ◇ ◇
結局、決闘は行われた。私とラファエルの、**“魔力制御対決”**という形で。
魔法で用意された蝋燭の炎を、魔力で“触れずに吹き消す”という高度な技術競技だ。
ラファエル「……ふぅっ……よし、一つ消せた!」
私「……ふぅーっ」
(会場の蝋燭、全部消滅)
ギルド「勝負にならねぇ……」
◇ ◇ ◇
「リリィ嬢……君は、すごいな」
「うん。だからお菓子くれる?」
「……もちろん!」
その後、ラファエルは私の親衛菓子騎士団(私命名)に自ら加入。
“リリィ様とカイザード様を勝手に守る会”の初代団長となった(非公式)。
「世界中が君に跪いても、僕は驚かないよ」
「いやいや、私はただの幼女だよ?」
「“ただの”幼女が影竜を光魔法で焼き払うかよ」
「……確かにー」
カイゼル「……リリィの騎士団に入るなら、誓約の血を流してもらう」
「え、こわっ!!?」