第1話『幼女、ギルドデビュー!なお皇帝は変装が雑』
第1話『幼女、ギルドデビュー!なお皇帝は変装が雑』
帝都から南に位置する巨大都市「ロゼルナ」。
その冒険者ギルドには、今朝もにぎやかな冒険者たちの声が響いていた。
「さーて、リリー=ノクターナ、5歳! 今日から冒険者になりますっ!」
私はそう叫んで、ギルドのカウンターに小さな手を置いた。
受付嬢「……え?」
無理もない。
私の見た目は、どう見ても魔法使いごっこしてる貴族の幼女。
でも私は【帝都中央魔導学院主席・最年少記録保持者】【皇帝の寵姫】【魔力偏差値測定不能】の三冠チート幼女なのだ。
「年齢制限は、【保護者が同伴すればOK】って書いてありますよね?」
「そ、そうですが……保護者の方って……」
「――俺だ」
そう言って現れたのは、黒マント・フード深め・サングラス・明らかに気配が皇帝な男。
「……いや、それ皇帝陛下ですよね?」
「違う。私は一般冒険者カイザード・フレイムだ」
「絶対バレるからその名前やめてぇ!?」
◇ ◇ ◇
こうして、私は【リリィ】、そしてカイゼル改め【カイザード】と名乗って、
ギルドの新人登録を果たした。
目標は――
「このダンジョン、“最下層に神の試練が眠る”って言われてるんだよね。調べたいの」
「リリーの望みなら、神ごと倒してこよう」
「そういうとこ本当やばいからね!!?」
でも実際――
私が軽く魔力で気配を飛ばせば、
「ゴブリン100体、一瞬で石像にしましたー!」
カイザード(仮)が剣を一振りすれば、
「ボスオーガ? 斬る前に泣いて降参してましたー!」
結果――。
「リリィちゃんとカイザードさん、すごすぎる……!」
「回復なしでダンジョン10層突破!? は、はい、もう金ランクにします!」
私は1日で、冒険者ランク金(最高位)になってしまった。
◇ ◇ ◇
「ねぇ、カイゼル。ダンジョン探索ってもっとこう……冒険っぽいっていうか……危機とか……ないの?」
「ない。俺とリリーが一緒にいる限り、世界に危機はない」
「いやあの、真顔で世界断言されても……」
でも、こうして私は、
“身分も立場も関係ない、自由な冒険者”としての世界を知ったのだった。
もちろん――
「リリーが旅に出るなら、世界を丸ごと護衛する」
冷酷皇帝(自称冒険者)つきで。