第4話『暗殺者が来た? → あ、逆に惚れられました』
学園で“魔術界の天災”として認知された私、リリー=ノクターナ。
今日も元気に爆発魔法の研究をしていたら、学院の屋上にこんな貼り紙があった。
『この子供、調子に乗ってるので誰か始末して下さい。依頼金金貨5万』
「え、なにこれ!?」
どうやら、重臣の一人が私に嫉妬して、魔術ギルドに“懸賞金"をかけたらしい。
いや、子供を懸賞首にするってどういう神経!?
……そして夜。
◇ ◇ ◇
「――“終焉の刃”って呼ばれてる暗殺者が来るって聞いたんですけど?」
私はベッドの上、布団にくるまりながらお茶をすすっていた。
物陰から、黒いマントをまとった男が現れる。
その顔は仮面で隠されているが、鋭い気配と気配遮断の魔術――只者じゃない。
「貴様が、リリー=ノクターナか」
「はーい! 5歳です! 魔法はだいたい全部いけます!」
「……覚悟しろ」
(き、来た……殺気、マジだ……!)
だが私は怯まない。
なぜなら――
「暗殺者さん、紅茶飲みます?」
「…………は?」
私は、とりあえず話せば何とかなる理論を信じている。
◇ ◇ ◇
「……で、なんで俺、クッキーまで食ってんだ……?」
「おいしいですよね、これ。陛下が帝国一のパティシエに作らせてるんですよー」
「なんだこのフワサク……こんなの食ったら戻れねぇ……!」
その後。
私は軽く【精神魔法】で彼の過去を覗いてみた。
「……あれ? 暗殺者さんって、孤児出身で、軍に裏切られて……え、妹さん、難病だったのに?」
「なっ、ちょ、おまっ、なぜそこまで――!」
「うん。助けます」
「…………え?」
「妹さん、私の回復魔法で治せますよ?」
「…………」
■そして彼は、こうなった。
「リリー様ァァァァ!! 貴女こそ俺の光!!」
「ちょ、近い近い!!」
「もう殺す気は微塵もありません!! 俺の命、どうぞ好きに使ってください!!」
「いや嬉しいけど、命預かるの重たいからやめて!!」
◇ ◇ ◇
その後、“終焉の刃”は正式に皇帝直属のリリー専属護衛となった。
カイゼル陛下は言った。
「俺のかわいいリリーの命を狙った罪……その命、リリーのためだけに使うといい」
「はいっ!!」
「え、何この流れ? また私、知らないところで重婚フラグ立ってない??」