番外編『皇帝の悲願、2人の初夜』
――夜の帳が降り、式の喧騒がようやく遠のいた頃。
私はドレスを脱ぎ、柔らかな薄衣に身を包んで、皇帝の寝室にいた。
重厚な扉が開かれたその瞬間から――空気が変わった。
「リリー」
名を呼ばれるたびに、心臓が跳ねる。
カイゼルは、静かに歩み寄ってくると、私の頬にそっと触れた。
「ずっと……この夜を夢見ていた。お前が、大人になるのを……この腕に抱ける日を、どれほど願ったか」
その声が、震えていた。
皇帝である彼が、誰よりも冷酷で、誰よりも孤高だったあの人が――
今、私の前でただの「ひとりの男」になっている。
「リリー……もう、止められそうにない。怖くないか?」
「……ううん。カイゼルになら……全部、委ねてもいいって、ずっと思ってた」
◆ ◆ ◆
薄衣の肩紐が、静かに滑り落ちる。
それを指先でなぞるように下ろしながら、カイゼルが私を抱きしめた。
熱を帯びた肌と肌が触れ合い、体温が溶けていく。
「……なんて柔らかいんだ。まるで壊れそうで、怖いくらいだ」
「でも、壊れてもいいって思うくらい……カイゼルのものになりたい」
唇が触れ合い、ゆっくりと、深く重なっていく。
最初は優しく、けれどだんだんと熱を帯び、
くちづけは何度も交わされ、その合間に言葉すら奪われて――
「リリー……お前は、俺の宝だ。生涯、誰にも触れさせない」
「うん……私も、誰にもあげないよ……カイゼルだけのもの……」
彼の手が、私の身体をなぞるたびに、
心も、身体も、甘く震えた。
その夜、私は何度も名前を呼ばれ、何度も愛を囁かれ、
そして――何度も、彼に愛された。
◆ ◆ ◆
朝日が差し込む頃、私はカイゼルの腕の中で目を覚ました。
「……おはよう、皇帝陛下」
「おはよう、皇后陛下。……起きたばかりなのに、もうまた触れたくなる」
「……昨日、あんなにしたのに?」
「足りるわけがない。永遠に、お前を抱き続けたい」
「……やっぱり、重い……でも、大好き……」
それは、静かで、甘くて、永遠に続いてほしい――
そんな、幸せな朝の始まりだった。




