番外編『皇后就任式、本番――リリー、帝国全土にキスされました』
「本当に……やるんですね。あの宣言、冗談じゃなかったんだ」
私は白金に輝く皇后の衣装の裾をつまみ、カイゼルを見上げた。
「何度でも言うが、冗談ではない。今日、帝国中に正式に“お前は俺のものだ”と宣言する」
「うわ……重たい。でも嫌じゃない自分が悔しい……」
「むしろ俺としては、もっと重くてもいい」
「え、それ以上はたぶん酸欠で倒れます」
今日は、帝国の歴史に残る日。
私たちは結婚式を終え、民の前に立った。
《皇后就任式》――つまり、私が帝国の公式な皇后として、世界に発表される式典。
この日のために、あらゆる国から使節団が訪れている。
空には飛行艇が浮かび、会場は帝国民であふれかえっていた。
そして、私は――巨大な宮廷のバルコニーから、カイゼルの隣でその全てを見下ろしている。
「帝国民よ――聞け。我が名は、カイゼル=ヴァルフレイム。帝国の皇帝であり……」
そう言って、彼は私の手を取り、腕を引き寄せた。
「この少女、リリー=ノクターナこそ、我が妻である」
「……っ!」
「彼女は帝国に光をもたらし、俺に心をくれた女だ。俺は、命をかけて彼女を守り、愛し、貫く」
その瞬間、バルコニー下で雷のような歓声が巻き起こった。
「うわ、すごい、なんかもう音が地鳴りみたい……!!」
「当然だ。お前が俺の“唯一”だからな」
そして――カイゼルは、私の腰を抱き、優しく顔を近づけ……
「世界に見せつけてやろう。俺の女だと」
――そう言って、その唇を私の唇に重ねた。
深く、熱く、息を奪うようなキス。
世界が霞んで、彼の体温だけがすべてを包む。
「っ……ん……!」
まさか……帝国の公式放送に乗ってるこの瞬間を、
カメラ越しに世界中が見てるなんて……っ!!!
「だ、だめだよぉ……!! 今、全世界にキス顔晒したぁぁぁぁ!!」
「可愛かったから問題ない。永久保存する」
「絶対すると思った――!!」
◆ ◆ ◆
式典の終わり――控室に戻ってから、私は顔を真っ赤にして叫んだ。
「か、カイゼルのバカぁぁあ!!世界中に公開キスするなんて前代未聞!!!!!」
「後悔しているか?」
「……ちょっとだけ。でも、カイゼルが私をちゃんと“選んでくれた”の、嬉しかった」
「なら……今度は、夜も含めて、すべて俺のものにする」
「その台詞、真顔で言わないで!? 無理、理性も体力も足りない!!!」
「なら、今から鍛えていこう。体力も、心も、夜の技術も」
「だから何の教育なのぉぉぉぉ!?」
――こうして私は、この美貌の皇帝の妻として世界に認められ、
そして変わらず――むしろ以前にも増して――
皇帝陛下の溺愛と独占に日々悶える日常へ突入したのでした。




