第2話『リリィ、皇帝陛下からの“婚約者扱い”に混乱中。侍女たちはもう祝賀ムード!?』
朝起きたら、まず最初に侍女たちが言った。
「おめでとうございます、リリー様!」
「えっ、何が!?」
「陛下が、リリー様をご婚約者として正式にお迎えになると……」
「言ってなぁぁああい!! 聞いてないですぅぅ!!」
どういうことか聞いてみたら、カイゼルが宮廷内の重臣たちに「リリーは私の大切な存在である。いずれ正式に迎える」って発言したらしい。
なにそれプロポーズ!?
というか順序おかしくない!?!?
◇ ◇ ◇
しかも今日は朝から、やけに豪華な朝食。
「陛下特製・チョコづくしブランチ」「婚約記念スイーツセット」って書いてあるし。
「これ、勝手に決めたでしょ!!」
「いや、味はいいはずだ。手ずから作ったからな」
「ううう……それがまた美味しいのがずるいぃ……」
でもね、こうしてチョコを食べながらふと気づいたの。
カイゼルは、いつも私のペースを尊重してくれてた。
迫ってくるように見えても、本気で“嫌がったら止める”って目をしてた。
それが……ずるくて優しくて、だから心がついていけなくなる。
◇ ◇ ◇
「リリー」
「ひゃいっ」
背後からそっと抱きしめられて、肩が跳ねる。
「……お前が不安なら、何も急がない。
ただ、知ってほしい。俺は、お前を“そういう対象”として、真剣に見ている」
頭を撫でられて、ドクンと心臓が跳ねた。
「……今すぐ“皇后”にとは言わない。
でも、未来において“お前以外”を選ぶことは、絶対にない」
そう言って、カイゼルは静かに私の額に口づけた。
子供としてではなく、“女”として。
……こわい。
こんな感情、初めてで。どうしたらいいのかわからない。
でも――
「……じゃあ、ちょっとずつ、教えて。
“好き”って、どうすれば返せるか……」
この恋が、いつかちゃんと“私の言葉”になるその日まで。
私は逃げずに、まっすぐ、向き合ってみようと思った。




