第11話『魔王軍襲来!? でもチョコの匂いにつられて同盟組んじゃいました』
その日、ギルド上空に黒い雲が渦を巻いた。
「おのれリリィ! 貴様が神を従え、チョコで世界を支配しようとしていること……我ら魔王軍は見逃さぬ!!」
――と、空から降ってきたのは黒甲冑の騎士団。そしてその後ろには、
でっかい旗に「反チョコ主義連盟」って書いてある。
「なんか……全体的に小物感がすごい……」
◇ ◇ ◇
魔王軍、というからにはもうちょっと威厳があると思ったけど、
話を聞いてみると、どうやら西の大陸でチョコレート禁止令が出たのがきっかけらしい。
「お菓子は子どもを堕落させる! 甘味は戦士を弱くする!」
「スイーツに頼らず、己の力だけで戦うべし!!」
「で、どうしてわざわざ海渡ってうちのギルドに来たの?」
「……最近、兵が次々と脱走して……“リリィ様の布教所に行きたい”って……」
「まさか、こんなに根付いているとは……っ」
――はい、チョコ神ゼルフィウスさん、布教しすぎた結果です。
◇ ◇ ◇
最初はやる気だった魔王軍の総司令官も、
ギルドに漂うカカオの香りと、私の淹れたチョコレートミルクティーに負けてこうなった。
「……っ、なんだこの、心が溶けるような味は……っ!」
「それは、陛下直伝の《カカオ圧縮濃縮蒸留スチーム煮出し式》です!」
「なにその錬金術レベルの手間!?」
一杯飲んだだけで、敵兵たちは全員こうなった。
「我ら、チョコ教に帰依いたす……」
「リリィ様こそ、我が主……」
「チョコ万歳……」
全員目がとろけてる!?!?!
◇ ◇ ◇
最終的に、魔王軍はギルドに全面降伏し、
リリィ教(※通称)と同盟を結んでいくことに。
西のチョコ禁止国には、後日陛下から「友好的な外交圧力」が送られたらしい。
(※内容:金箔入りトリュフ500個+魔力付きメッセージ「NO CHOCOLATE, NO PEACE」)
「陛下、やっぱりあんたが一番怖い……」
「ありがとう、嬉しい」
「誉めてないです!!」
こうして今日も、世界はチョコの香りとともに、
ゆるく平和になっていくのでした。




