第10話 『チョコの神ゼルフィウス、就職活動する(リリィの監督のもとで)』
ある日の朝。私は、寝ぼけまなこでチョコパンをかじっていた。
「んー、今日も平和でよかった~」
と、思った瞬間――
「リリィ様ぁぁぁあああああ!!」
ギルドのドアが、今度は慎ましく開かれ、職員のお姉さんがやってきた。
「今度は何? また偽リリィが増えたの?」
「ちがいます! いや、それもちょっとあるんですけど! 今回は――」
「“神が就職活動を始めた”件です!」
……は?
◇ ◇ ◇
現場に行ってみたら、いた。
「ふむ……私の雷の力を活かすなら、建設業界か……」
そう呟くのは、元・雷の神王ゼルフィウス。
今やすっかり、チョコ信仰に染まった神である。
「ゼルさん? なにしてるの?」
「就職活動だ」
「え、えええええ!? 神って働くの!?」
「神々も現代に適応しなければ生き残れんのだ」
どうやら、リリィの“チョコ魔力”に影響されすぎた彼は、
「神としての存在意義を再確認するため、社会経験を積むべし」と思い立ったらしい。
なにその超意識高い系神様。
◇ ◇ ◇
ゼルフィウスの就職活動は混迷を極めた。
【建築会社】:
「雷で一瞬で建てるのはいいが、素材も一緒に燃え尽きるのはやめてくれ」
【ギルド案内人】:
「面接で“我が雷はすべてを焼き尽くす”って言った時点で落とされました……」
【カフェ】:
「チョコドリンクを温めすぎて湯気で天井溶けた」
「ゼルさん、あなた働かないほうがいい気がするよ……?」
「ぐっ……私はただ、リリィ様の信仰を広めたかっただけなのに……!」
「うっ……けなげすぎてちょっと泣きそう」
◇ ◇ ◇
最終的に――私は決断した。
「よし。ゼルさん、チョコの宣教師になって!」
「え?」
「ほら、各地を回ってチョコ文化を布教して、現地の人に笑顔と糖分を届けてくれると、世界が平和になるじゃん!」
「それは……最高の職業……!」
その瞬間、ゼルフィウスの背後にチョコの光輪が出現し、
雷神のオーラがスイートに再構築された。
「私は、チョコの神として新たに生まれ変わった……!」
「転職、おめでとうございます☆」
こうして、ゼルフィウスは正式に“チョコの神・巡礼者”として登録され、
ギルド公認のスイーツ文化布教員となった。
今日も彼は、どこかの街角でこう叫んでいるだろう。
「チョコは世界を救う――!」
「ただし、温度管理は慎重に!」




