第9話『新キャラ登場!? “漆黒の魔導士”がリリィに決闘を挑んできたけど、まさかの陛下の弟でした』
「魔王の血を継ぐ者よ。貴様が“リリィ”か――!」
突然、冒険者ギルドの正門が爆発四散した。
カウンターのケーキが吹き飛んだ。私は泣いた。
「こらあああああああああ!!! チョコケーキを! 返せえええええええ!!!」
「……まずそこなのか!?」
現れたのは、漆黒のローブを身にまとい、片目を隠した超イケメン。
腰には魔導書、背中にはでっかい杖、口調はめっちゃ中二病。
「我が名は――クレイグ=グランゼル。
神々をも焼き払う《漆黒の断罪魔導士》だ」
……すごい。全部盛りだ。
ていうか、あれ……なんか顔、陛下に似てるような――
「こいつは俺の弟だ」
「出たぁぁぁあああ!!!?!?」
◇ ◇ ◇
クレイグくん(見た目25歳くらい)は、皇帝陛下の腹違いの弟で、
王家を出奔して以来、ずっと世界を放浪していたらしい。
曰く――
「兄上の“人間味ゼロの冷酷さ”に耐えきれず、我は旅に出た」
「お前もたいがいだと思うがな」
「お前に言われたくない!!!」
クレイグは、自分が見た幻影――“銀髪幼女が魔王を名乗り世界をチョコで覆う”というビジョンにより、リリィを「この世の災厄」と判断し、決闘を挑んできたのだった。
「うーん、それ、夢じゃなくて昨日の私じゃない?」
「やっぱりお前か!!」
◇ ◇ ◇
そして決闘本番。
場所:魔術競技場。
観客:ギルド職員+チョコケーキ(陛下が焼いた)。
審判:無言で圧をかける皇帝陛下。
「リリィ=ノクターナ。いざ、我が全霊をもってその存在を否定しよう!」
「よーし! 《チョコ☆カタパルト・ミサイル》!」
「ちょ、魔法が早――ッ!?」
ドガァァァァァァァァン!!!!!
観客「(……決着、早っ)」
「……ぐ、は……見事だ……まさか、チョコで負けるとは……」
「ちなみに今のは“チョコ風味の魔素爆弾”です☆」
「ひ、非人道的ぃぃぃぃ……!」
◇ ◇ ◇
その後、クレイグくんは無事に回復し、なぜか弟子入りしてきた。
「我にもチョコ魔法を教えてください……」
「中二病のままなの、直す気ないの?」
「兄上より、君のほうが世界を壊しそうだから……見守りたくなった」
「なにその歪んだ保護者心!?」
こうして、リリィの周囲にはまたひとり、
“めんどくさいイケメン”が増えたのでした。




