第8話『冒険者ギルド騒然! リリィの偽物(量産型)が大量発生!?』
それは、いつものようにギルドでチョコレートケーキを食べていた日のこと。
「リリィ様! たいへんです!!」
バン! と勢いよく扉を開けて飛び込んできたのは、ギルド職員のお姉さん。
「ケーキがなくなった!? それは一大事です!」
「ちがいます!! いえ、ちがわなくはないですが!!」
「今朝から、**“リリィ様を名乗る者が各地に出没している”**との報告が……」
「…………」
「しかも全員、魔力が高く、見た目もリリィ様そっくりで……」
「………………」
「そして、なぜか全員、チョコの布教をしていると……」
「私のチョコ愛、勝手に広めないでえぇぇぇぇぇ!!??」
◇ ◇ ◇
その日のうちに、偽リリィは確認されただけで12体。
しかも全員、チョコ関連の魔法を使いこなし、口調まで完コピしていた。
「こんにちは! チョコを信じれば世界は救えるよ!」
「にせものーっ!?!?!? そのセリフ言った覚えない!!」
中には――
・プリン派の反逆者とチョコレート魔法で対決している偽リリィ
・チョコと味噌ラーメンを融合させた偽リリィ(※罪)
・なぜかパフェを頭に乗せて踊る偽リリィ(もはや誰)
ギルド中が騒然となるなか、ひとり冷静な人物がいた。
「……リリィ、これは**君の魔力から分離した“魔力残留体”の可能性が高い」
と、いつものように横から現れるカイゼル。
「は?」
「要するに、君が強すぎて、魔力が勝手に“自己増殖”して独立したんだ」
「私、そんなウイルスみたいなことしてるの!?」
◇ ◇ ◇
その後、魔力感知で調査したところ、偽リリィたちはすべて**“幻影の大迷宮”のチョコ神殿**から発生していたことが判明。
どうやら、封印を解いた際にリリィの魔力が漏れ出し、
ゼルフィウス(雷神)が勝手にそれを“チョコの神像”として複製しまくったらしい。
「すまない。チョコの伝道に尽くしたくてつい……」
「神さまぁぁぁ!?!?」
◇ ◇ ◇
最終的に、偽リリィたちはリリィ本体の魔力で吸収・統合され、
“リリィの魔力容量がさらに増える”という結末に。
「なんか私、またチートに磨きがかかった気がする……」
「次元破壊級になったな。よかったな」
「よくないよ!!」
――こうして、“量産型リリィ事件”は無事解決。
ギルドは通常業務に戻り、
私はというと……
「……あの、リリィ様?」
「ん?」
「結局、チョコ味噌ラーメンって美味しいんでしょうか?」
「それだけは真似しちゃダメ!!!!」




