第6話『迷宮で拾った不思議な魔法書、実は古代最強の封印アイテムだった件』
その日は、いつものように“チョコレート探索依頼(Aランク)”のついでに、
迷宮探索に来ていた私とカイゼル。
「リリー、奥に強い魔力の反応がある」
「お菓子の匂いは?」
「ない」
「帰ろっか」
「待て。……リリーが好むものがあるかもしれない」
「すごいね、チョコの幻覚見えてる?」
「リリーのためなら幻覚すら具現化する」
「それ、もはや創世神じゃん……」
◇ ◇ ◇
探索を続けていた私たちは、
封印魔法が絡まる一つの部屋に辿り着いた。
そこにあったのは――
「本? しかもなんかボロボロ……え、これが魔力源?」
カイゼルが眉をひそめて言う。
「これは……“古代アリシア語”で書かれた、封印書だ」
「なんか聞いたことある。あれでしょ、開いたら世界が終わる系」
「そうだ。だがリリーなら大丈夫だ」
「根拠どこ!?」
私はためしに本を開いてみた。すると……
《――我ヲ解放セシ者ヨ、名ヲ述ベヨ》
「え、喋った!?」
その瞬間、部屋全体が青白い光に包まれ、天井から魔法陣が浮かび上がる。
カイゼルはすぐさま私の前に立ち、魔力を解放――
だが、次の瞬間。
「……あれ? なんか……女の人が……出てきた?」
光の中心から現れたのは、長い銀髪を持つ幽玄な美女。
いや、正確には――霊体のような存在だった。
《我ガ名ハ、アルフェナ。古ノ時代、魔術ヲ司ル精霊ナリ》
「おぉ……めっちゃレジェンド級出てきた……」
《我ヲ解放セシ者ヨ、契約ヲ交ワサン。汝ニ、全知ノ加護ヲ授ケヨウ》
「ちょ、ちょっと待って!? 契約ってどういう!? 勝手に結ばないで!?」
《契約、成立シマシタ♡》
「聞いてないようううう!!」
◇ ◇ ◇
――というわけで、私はこの日から
“古代魔術の精霊”と契約した、チートな幼女
として、さらにカオスな日常を送ることになる。
アルフェナ(霊)「契約者リリィ、汝ノ望ミヲ答エヨ」
「……チョコケーキを無限生成できる魔法、ある?」
アルフェナ「今スグ創ル」
カイゼル「それを国家機密にする」
「いや食べ物にまで国家機密使わないで!?」
◇ ◇ ◇
後日。
ギルドの受付がざわついた。
「“リリィ様が古代精霊と契約した”って本当ですか?」
「はい、チョコケーキで釣りました」
「えええええええええ!?!?」
国が、いや世界が、また一歩リリィ中心に回り始めた気がした――。




