第4話『敵国の王子がダンジョンで遭難 → 助けたら求婚されたんですけど!?』
ある日、ギルドの受付に呼び出された私は、
お菓子をもぐもぐしながらカイザード(=中身は冷酷皇帝)と一緒に出向いた。
受付嬢「その……実は、捜索依頼が出まして……」
「また?」
「今回の依頼主は、他国……ルヴィア王国の王子です」
「――王子がダンジョンで遭難中、と」
「正確には、護衛ごと消息不明です。場所は《水鏡の迷宮》、Bランクの水系ダンジョンです」
「どうでもいい」
「はやっ!? カイゼル、あなた王子のこと知らないよね?」
「リリーが行くなら行く。王子? 溺れてればいい」
「ちょっと口に本音ダダ漏れなのやめて!?」
◇ ◇ ◇
《水鏡の迷宮》の奥、私たちはひときわ強い魔力の反応を察知する。
カイゼル「……これは“暴走した水霊”だな。しかも、結界を形成している」
「結界解除、お願いしていい?」
「リリーの頼みなら、海も割ろう」
ズバァァァン!!
カイゼルの剣が空を斬ると、霊気の結界が一瞬で霧散した。
そして――
「うっ……けほっ……っ!」
水に沈んだ結界の奥にいたのは、びしょ濡れでぐったりした美青年。
金髪に宝石のような碧眼、濡れて張りついた白いシャツから、鍛えられた体がうっすら見える。
「ま、眩しい……妖精か、女神か……」
「どーも、ただの幼女です」
「……君、僕を助けたのか?」
「うん」
「君を王妃に迎えよう」
「いや早すぎない!?」
◇ ◇ ◇
彼の名前はアレク=ルヴィア。ルヴィア王国の第二王子であり、
外交のため極秘に帝国を訪れ、こっそりダンジョン探索をしていたらしい。
「まさか水霊が暴走するなんて……僕、完璧主義なのに……」
「完璧っていうなら、なぜ護衛と迷子になってるの?」
「言い返せない……!」
とにかく、無事に王子は保護され、ギルドも一安心。
だが――
「僕、本気で君に惚れた」
「いや、幼女だよ!? 私、5歳だよ!?」
「外見は関係ない。心が通じ合えば年齢など――」
「その通じ合う心、溺れさせてやろうか?」
カイザードが後ろからそっと囁いた瞬間、
王子は1ミリも動かずに白目を剥いて倒れた。
◇ ◇ ◇
後日。
「リリィ嬢、これは僕の真心を込めた贈り物だ。王国の最高級スイーツ百種詰め合わせを――」
「受け取ってもいいけど、君、うちの皇帝に殺される気?」
「まさかそんな!?」
「心臓に剣先当てられたくなかったら、やめた方がいいんじゃない?命の保証はしないよ☆」
「ひ、ひぇええ!!」
リリィの冒険者ライフ、毎回命の危機(他人の)である。




