第1話『拾われたと思ったら、即・溺愛対象でした』
転生した世界は、剣と魔法のファンタジー。
そして私――リリー・ノクターナは、いきなり森の中に放り出された。
「え、待って、何このチュートリアル不親切すぎじゃない!?」
しかも、体はちっちゃい女の子。明らかに幼児。
たぶん5歳くらい? ……というか、なぜか魔力だけ異常値なんですけど。
「よし、火の玉でも出して暖を……」
ボンッ!!
「ちょ、何これ小規模爆発してる!? 私、村ひとつ消せるレベル!?」
うっかり火の玉を出したら、森の一角が消し飛んだ。
そんなドタバタの中、現れたのが――
「……何だ、この魔力は」
金の髪に赤い瞳。彫刻のように整った顔。
人ではなく、“神”のような美貌を持つ男が、馬を降りて歩いてきた。
(え、だれ……こわ……でも美形……え、こわいけど美形……!!)
「貴様、名は?」
「ひゃ、ひゃい!? え、リリーですっ!」
「……小娘、今から貴様は俺のものだ」
「え、えぇぇぇぇええええ!!?!?!」
■そして即・溺愛生活
「この部屋は寒い。リリーには最高級の毛布を用意しろ」
「おやつが足りん。毎日三種の焼き菓子を揃えろ。味は日替わりだ」
「誰だ、リリーに塩味スープを出したのは。彼女は甘口が好みだ」
「リリーが笑った。今すぐ祝宴の準備をしろ」
(ちょっと待って!? 私、拾われたばかりですよね!? 何この過保護モード!?)
しかも――
「……リリー。おまえが隣にいないと、眠れない」
「えっ、あの、皇帝陛下? お膝に乗せながら寝ないで!? 重い重い!」
「重いのはお前の可愛さだ。尊い」
「はい!? 何その中毒発言!?!? こわい!!」
■だけど――時々、本気の顔になる。
「リリーに近づいた男の名前は?」
「ちょっと話しかけられただけですから!」
「処刑では足りんな。存在の抹消だ」
「やめて!!! 魔法で人ごと消さないで!!!」
■まとめ:
私は魔法チートな幼女で、
冷酷皇帝に拾われ、
今――
とんでもなく、溺愛されている。