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042話 ジューシーレインボー

 緑の空、白い草原。

 ここは何度来ても気持ちがいい空間だねえ。

 あたいら「ジューシーレインボー」は、今日も異次元迷宮にやって来た。

 ん? 「ジューシーレインボー」を知らないって?

 そんな無知な輩もいるもんだねえ。

 あたいらは、ジューシー族の巫女様に選ばれし勇者パーティー「ジューシーレインボー」なのさ。襲名八代目の由緒正しいパ-ティーだから、覚えときな。

 で、あたいはそのリーダー、レッド。


「ふー。見える範囲に人族はいないねぇ。お前たち、安心して調査を進めな」


 時々、あたいらジューシー族を知らない連中が魔物と勘違いして襲い掛かってくることがあるんだよ。だから、あたいは人族が嫌いなのさ。

 あいつら、あたいのことを巨大なリンゴに手足が生えている化け物だって言いやがる。あたいにしてみれば、あいつら人族がサルにしか見えないっていうのにさ。

 ま、普段からリンゴを丁寧に扱わない無知なサルは、あたいの神聖なリンゴの体がただの大きくなった果物にしか見えない、可哀想な奴らなんだ。


「さーて。今日こそ隠された宝箱を開けてやるよ」


 あたいら「ジューシーレインボー」は、この異次元迷宮の謎を探求する使命を帯びている。

 日々、異次元迷宮内を探索し、この近くに不思議な宝箱があることを発見していたのさ。それはこの迷宮独特の半透明な岩の中にあり、目視では見えず、通常の探索魔法でも発見できない珍しい物。

 仲間のパープルの固有魔法だからこそ発見できた物であって、サルの魔法では絶対に発見できない代物なのさ。


「おいレッド、あれを見ろよ、ごるぁ」


「なんだい? あっ! 岩が、大きな岩がなくなっているじゃないか」


 レモンの体のイエローが血相を変えて指差す先。

 そこには大きな岩があるはずだった。

 今、その場には黄色の転送ゲートがある。


「なんだいなんだい、岩がゲートに変化したのかい?」


「入ってみるろー」


 メロンの体のグリーンが、率先してゲートに触れようとしている。

 今までなかったゲートさ。探索しない手はないねえ。

 全員でゲートをくぐる。


「宝箱だ、ごるぁ!」


「フタが開いているろー」


「ひょっとすると、これがパープルの固有魔法に反応していた宝箱なのかい?」


「ぼぼぼぼ、反応していたのは、この宝箱ぼん」


 それは、あたいらがずっと解明しようとしていた、岩に埋もれた宝箱。正確に言うと宝箱の反応のする岩。


「一体誰が開けたのさ……」


 狭い小部屋だったから、これ以上長居してもしょうがなく、あたいらはすぐに元の場所に戻った。


「そもそも岩をどけやがったのは、どこのどいつだ、ごるぁ!」


「よく調べるろ。大きな岩は、破壊されたろー。ほら、破片が散乱しているろ?」


 グリーンがしゃがみ、体中に筋を浮かび上がらせて周辺を調査している。

 岩の破片は小さく、しゃがんで調べないと砂と見間違えるくらいに粉々になっているのさ。

 割れると粉々になる性質の岩? それとも、粉々にできるような強力な攻撃を受けたのかい?


「ここの岩が破壊できるなんて、あたいは想定すらしてなかったね」


「オレの蹴りでも、パープルの魔法でもビクともしなかった岩だぜ? 一体どうやって破壊したんだ、ごるぁ」


 イエローは俊敏さが取り柄で、蹴りや殴りなどを得意としている。ぶどうの体のパープルは、仲間の中では一番強力な魔法を放てる。

 これまでの調査で、その両者の攻撃を受けてもヒビすら入らなかった大きな岩。それが粉々に砕けているときたもんだ。


「人族の足跡だ、ごるぁ!」


 イエローは、そのレモンの体から周囲に向けて果汁を噴霧し、地面に残された人族の足跡を鮮明に浮かび上がらせた。

 人族の足跡は、おそらく三人分ある。


「まさか、サルが岩を破壊したのかい?」


「そう考えるのが妥当だろぉ。まだ近くにいるかもしれないろ。ほらパープル、探すろー」


「りっちさーちぶどー。……少し遠くに、人族を発見したぼん」


 早速パープルが探索魔法で人族を見つけ、その方向を指差した。


「あっちかい? おやおや。足跡の向かう方向と一致しているじゃないか」


 本来、ここは大きな岩で行き止まりだった。足跡はそれを破壊して一度ゲートの前に集まっていて、それから向こうへと進んでいる。


「早く行くろー」


 あたいらが狙っていた宝箱を横取りしたサル。どんな奴なのか、調査してやろうじゃないか。そして、宝物をぶん捕ってやる。

 あたいらは、サルのいる場所へと急ぎ向かう。


「魔物が五体、いるぼん。この先の崖の下だぼん。人族が魔物と戦っているみたいだぼん」


「この先に崖が? それなら、崖の上から見下ろして調査してやるよ」


 再び探索魔法で詳細を調べたパープル。

 今歩いている周辺には木々があって前方の見渡しが悪く、まだ崖は見えない。

 とりあえず、前方で大地が途切れていて、そこが崖になっているらしいから、そこから見下ろす形で、下にいるサルと魔物を観察してやる。


「ウッドバード二体が消えたぼん。……クリスタルラビット二体も消えたぼん」


「消える間隔が短すぎねーか? ごるぁ」


 崖がようやく視界に入り、これから観察してやると意気込んだ矢先、魔物が四体も倒された。

 残るは一体。じっくり見てやるから、残っていておくれよ。


「急いで行くよ」


 あたいらは走った。

 崖は近くに見えているようで、走ると意外と遠く感じる。

 ……はぁ、はぁ。

 急いで走ったら少々息が切れちゃったじゃないか。

 なんとか最後の一体が倒される前に崖の先端に到達できた。

 さーて見てやろうじゃないか。一体どんな奴らなんだ? 


「あれは子供のパーティーか、ごるぁ」


 弱そうなサル。

 本当にこいつらが、岩を砕いたのかい? あたいらができなかったっていうのにさ。


「魔物CDを掴んで押さえ込んでいるように見えて、実は触れているだけで戦っていないぼん?」


 今、サルは扉の形の魔物を掴み、なにやらその接合部分に手を加えている。あれは何をしているんだい?


「き、消えたろ? 魔物が消えてゲートが現れたろ?」


 あたいは夢を見ているのか?

 魔物が黄色いゲートに変化するなんて、見たことも聞いたこともない。

 しかも、魔物は倒されたわけでもないのに消滅した。一体、どうなっているのさ?


「サルどもが入って行くよ!」


「飛び降りて追うぼん?」


「そんなことしたら、圧搾ジューシーになるだろうが、ごるぁ!」


 飛び降りるには高すぎる崖。どこか近くにロープを結べる木や岩がないか探し……、


「あら? もう出てきたじゃないか」


「早かったぼん」


 サルどもが黄色いゲートから出てきた。

 ゲートの先は行き止まりだったのか、思いのほか早かった。

 あたいらもゲートの先に何があるのか調査しないといけない。

 くそ。利用できそうな木や岩が、近くには見当たらない。


「あそこから崖の下に行けるろ」


 でかしたグリーン。

 あたいらは場所を移し、崖から下りた。

 サルどもは先に進んだようで、もうこの場にはいない。


「あ、ああああ!」


「ごるぁ!」


「消えたぼん」


 なんてこった。あと少しの所で、ゲートが消えてしまった。

 しょうがない。こうなったらサルどもの後を追うしかない。

 パープルにサルどもの位置を調べてもらい、そちらに向かう。

 その途中、サルどもが第二階層へのゲートに入ったことをパープルの探索魔法が突き止めた。

 サルどもと同じ経路を進んでいるはずなのに、少々、魔物に多く襲われて距離が開いてしまった。

 あたいらは、サルどもに大きく遅れて第二階層へと進んだ。


「さーて。サルどもはどこにいる? パープル、早く調べな」


「りっちさーちぶどー。……後ろにいるぼん」


 後ろはゲートの裏側。サルどもはそちらに向かったらしい。

 あたいらも、そっちに行くとしよう。


「ぼてっ」

「う、うわぁ~。助けるろ~、止まらないろ~」

「ごるぁ~」

「あたいを巻き込むんじゃないよ! あ~れ~……」


 斜面を下り始めると、最後尾のパープルが体勢を崩して転び、グリーン、イエロー、あたいの順に巻き込まれて山の斜面を転がり落ちて行く。


「はぁはぁはぁ……。お前たち、怪我はないかい?」


「体は大丈夫ろ。中の果汁がメロンスムージーなっているろぉ」


「もう少しで葉を落としてしまうところだったぞ、ごるぁ」


「ぼぼぼ、すんませーん」


 ここ第二階層の地面は弾力があって歩きにくい。

 ぶどうのパープルの体は頂点を下にした三角錐のような形をしているから、バランスを崩すとすぐに転んじゃうのさ。

 そして、残り三人の仲間の体は球体で、斜面を転がりだしたら止まらない。斜面が終わるまで転がり続けるんだ。

 何度も来ていてそんなこと分かっていたのに、とろいパープルを最後尾に置いたのはあたいの判断ミスだった。


「パープルは悪くない。あたいの判断ミスさ」


 レモンのイエローが落としそうになった、頭の上の葉。

 これは、あたいらの生命線。

 あたいらは葉に日光を当てて栄養を補給している。サルみたいに口から栄養補給なんてしない。口は水と空気を取り込むためにあるのさ。話すことにも使うのはサルと同じさ。

 それと、地面に足をつけておくだけでも栄養補給ができる。素晴らしい体だと思わないかい?


「目が回っているのが治ったら、先に進むよ」


「人族は、どこにいるんだ、ごるぁ?」


「えーっと……。あっちぼん」


 さっき唱えた探索魔法がまだ稼働しているようで、すぐに居場所を突き止めた。

 体の汚れを払い、気を取り直して先に進む。


「また差が開いたねえ。仕方ない。お前たち、走るよ」


 転がって復帰するまでに費やした時間を取り戻すため、あたいらは駆けだした。

 でも、時々パープルが転ぶから、大して時間短縮にはなっていない。


「それにしても、人族はどこに向かっていやがる? 第三階層へのゲートは逆方向だし、こっちには宝箱はないぜ、ごるぁ」


「あるのは石碑ぐらいかねえ。きっとサルどもは、ここに初めて来て迷っているのさ」


「あ、あれを見るろ!」


 グリーンが指差す先。

 よく見れば石碑が横にずれている。


「そんな馬鹿な。あたいらが調査したときには何の変哲もないただの石碑だったはず」


 これは、近くに行って調べるしかないね。


「宝箱だ、ごるぁ!」


 石碑の前まで行くと、石碑の土台が横にスライドしていて、地面に空洞があった。

 その中には、フタの開いた宝箱が。


「また人族に宝箱を漁られたろぉ」


「悔しいねえ。どうなってんだい、まったくさあ」


「とにかく、追うしかないぼん」


 再び魔法でサルどもの行方を探し、すぐに居場所を突き止めた。

 あの砂利山を越えようとしているのかい。


「あたいらも登るよ」


 ぶよぶよの地面を覆うように散乱している硬めの泡。これが砂利の正体。

 あたいらが砂利山を登り詰めると、サルどもはその裾野に広がる野草の群生地に入っていた。


「おわっ! 人族が消えたぞ、ごるぁ!」


 一人、また一人と消えるサルども。

 瞬く間に全員いなくなった。


「なんだい? あそこで何があったんだい?」


「行って調べるろー」


 転ばないように慎重に斜面を下り、野草の群生地、サルどもが消えた辺りに行く。


「三角形の花が咲いているだけだぼん」


「きっと何か仕掛けがあるろ。慎重に調べるろ」


 この周辺に、遠くからでは見えないゲートがあるに違いない。

 慎重に調べようかねえ。


 …………。

 ……。


 どこをも見ても同じ花が咲いているだけ。


「おい! この花、怪しくないか、ごるぁ!」


「ただの花じゃないのかい? それとも、イエローには花の違いが分かるのかい?」


「違うろ。花の向きが違うろ」


 花の向き?

 そんなのは日光の加減で変わるもんだろうに。あたいらの常識……、


「ごるぁ!」


「消えた!? イエローが消えたろ!」


 花に触れたイエローが、レモンの香りを残して消えてしまった。

 どうなってんだい?

 この花がゲートになっているっていうのかい?


「お前たち。イエローの後を追うよ!」


 あたいらは花に触れ、どこかに転送された。

なっしんぐ☆です。【重要なお知らせ】

ここまでお読みくださいましてありがとうございます。

読者の皆様にはご負担となり心苦しいのですが、今後、エムの口調を少しだけ変更します。

投稿済み部分につきましては、既に(9月14日土曜)変更済みです。


【主な変更点】

 お花→花、猫さん→猫

 妖精さん→妖精、小人さん→小人

 兵士さん→兵士


詳細につきましては活動報告をご覧ください。


「お花」と「猫さん」だけを修正するつもりだったのですが、

勢いでいろいろ修正しました。すみません。

公開前からつけたり消したり、主観対象を入れ替えて誤魔化したり。

エムの口調についてずっと悩んでいました。

どうか、ご了承ください。

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