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戦国天神伝~神騙りスローライフ~  作者: 菅原暖簾屋


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天神会議1528冬・後

「建築部門の善治です。作物部門と同じく領地が増えたとしても急に建築が進むわけではないので天神村の建築状況に限らせて報告申し上げます」

「よろしく。っていっても建築部門は俺が随時口出してるから他の皆に向けての報告になるが」


 善治の言った通り、俺は村の全ての建築物に文字通り口出ししている。ないとは思うが不良建築なんてされても困る。


「おっしゃる通りです、十川様には新築した建築物全てを確認していただいておりますので、住居以外の施設を皆様に報告させていただきます。

 まずは、大規模地下室。こちらは乳酪を保存するための設備とのことで、十川様に指示された通りの図面と工法で施工しました。入室の際には管理人の許可が必要ですのでご注意ください。地下室自体は既に完成していますが、肝心の牛乳が入手できませんので本格的な稼働は子牛が産まれてからになります。

 次に食堂、酒場のような施設ですね。こちらは十川屋敷に人が集中している現状を打破するために早朝から深夜まで食事を提供するだけの場が必要になりました。そこでこの食道を十川屋敷から少し離れた場所に建てました。内装が出来上がれば使用可能になり、正月明けには工事完了予定です。

 最後に、十川様が熱望された銭湯ですが……」

「せんとう? 武芸鍛錬場みたいなものか?」

「ちげーよ、なんでお前は体動かす方に思考が行っちゃうかね」


 半分居眠りで意識を飛ばしていた孫三郎が銭湯のワードで覚醒した。戦闘と勘違いしたなコイツ。

 この時代の入浴施設はサウナみたいな形式が一般的だったようだが、俺が求めたのは現代日本人の想像する入浴設備を備えた銭湯だ。正直、この時代の人間って湯につからないから全体的にちょっと臭いのが夏場だと耐えられない。


「湯を浴びられる入浴施設になる予定でしたが、どうにも排水と湯を沸かすカラクリに時間がかかっております。鋳物師や鍛冶師と相談して試作品がようやく完成しましたので、仮の稼動を近日中に。十川様は立ち合いをお願いいたします」

「あいわかった。建築部門はなにか不足しているものは?」

「特にございません。むしろ、日当の払いがよいので人が余っているのでどうにかしていただけると助かります」


 あぁ、なるべく力仕事は金払いをよくしてるもんな。川浚いが冬季中止だから稼ぎを求めるなら建築補助に人が集まるか……。


「わかった、考えておく」

「ありがとうございます。建築部門からは以上です」


 各員が報告を終えて、一気に弛緩した空気になる。厳密にいえばもう一部門、勘定部門があるのだが、それは懐をさらすことになるので俺に直接報告が来るようになっているからな。


「ご苦労さん、みんな初めての報告会で疲れたろう? 自来也、例の飯を準備してくれ」

「承知しました」


 自来也と事前に打ち合わせておいた軽食を用意してもらう。数分ほどして手伝いの女中とともに自来也が食事を運んできた。

 綺麗にスライスされたパンへカモ肉のハンバーグとレタス、チーズにトマトを挟んだもの、つまりダックハンバーガーを真っ白な陶器に盛り付けて、自家製のクラフトコーラをセットにした食事が参加者の前に配られる。見たこともない食事に殆どの者が不思議そうにそれを眺めた。例外は孫三郎。コイツは何も考えずにとりあえず美味けりゃ何でもいいと思っている節がある。だいたい俺のせいだが。


「皿にのっているのはハンバーガー。天の国の食べ方を模倣したものになる。付随しているのはコーラ、原料は長くなるので省くが香辛料を煮詰めて口の中でわずかに弾ける液体にする薬を添加した飲み物だ。

 何故これを軽食で出したか、是非食べてみて考えてくれ」


 孫三郎は俺の言葉を聞くが早いか、一気にハンバーガーへかぶりついてその美味さに低く唸る。その姿を見た他の物も恐る恐る口に運んだ。


「おお!」

「むっ、これは上品な美味さだ」

「むほほ、たまらん味ですわ」

「美味しいですねぇ」


 甚八、黙阿弥、弥八、妙が声をあげてハンバーガーの味を褒める。味を拒否する人間が出なくて何より。俺も一口齧る。ソースが少し残念だが手製のハンバーガーなら及第点の味だ。コーラも問題なく美味い。

 そこまで大きなハンバーガーではなかったので参加者全員ぺろりと平らげ、コーラの炭酸に悶えながらも円卓の上から食事はすぐになくなった。

 各々近くの参加者と感想をディスカッションし、軽食にこれを出した理由を考えている。ほどほどに煮詰まってきたところで俺はパンパンと手を叩いて注目を集めて。


「俺の問うた理由、わかったか?」

「さっぱりわからん!」


 言い切るなよ孫三郎。

 孫三郎に呆れていると、妙がおずおずと手をあげて。


「もしや、これは全て天神村で調達できる材料なのではないでしょうか?」

「ほう、理由を聞こうか」

「はい。このハンバーガーに挟まれていたものは以前、十川様からいただいた資料で見たことがある食物ばかりでした。確か、名前はトマトとレタスだったと思います。

 加えて、この肉を焼き固めたものは水鳥の味がしましたし。間に挟まっていた白い四角いものはどこか乳臭かったので、これが乳酪というものではないでしょうか?

 最後に、上下で具を閉じていた茶色の品は、保存食の生産で打ち合わせをしていた乾パンとやらに似ています」


 おぉ、妙ったら名探偵じゃん。まさか言い当てられるとは思っていなかったわ。


「当たりだ。よくわかったな」

「いえ、十川様から預かっております資料を見ていなくば考え付きもしなかったでしょう」

「そう自分を卑下するな。見事だ、あとで褒美をやろう。

 というわけだ。お主らが見たことがないものも、お主らの作ったもので再現できる。領地も広がった、俺の言っていることや行っていることについてこれず理解できないこともあるだろう。だが、俺は天神領を見捨てることはしない。黙って信じて俺に付き従え。よいな?」


 孫三郎以外の参加者が「はっ」と同意の声をあげ、孫三郎が満足そうに頷く。


「一端の為政者になったな十川」

「うるせぇ、お前も敬え」

「はっはっは、それはできん。お前とは友だと思っているからな」


 


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