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戦国天神伝~神騙りスローライフ~  作者: 菅原暖簾屋


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天神会議1528冬・前

 一五二八年(享禄元年) 年末 尾張国 天神村十川屋敷 十川廉次


 各村への餅つきのドサ回りを終えて、年越しを控えた天神村の俺の屋敷には村を支える各部門の代表者が集結していた。集まったのは屋敷奥の十畳ほどの会議室、メンバーは統括の俺に補佐の自来也、各生産産業部門のトップとオブザーバーの孫三郎だ。全員に熱いコーヒーが自来也の手で配られ、一息ついてから。 


「ほんじゃ、来年の天神領産業の打ち合わせしまーす」


 統括担当の俺が声をかけると全員がはっと言って頭を下げる。円卓での会議だから平伏はできないのだ。


「まずは産業部門からいこうか。鳥部門の黙阿弥、現在の水鳥牧場の状況を報告してくれ」

「はっ。ただいまの水鳥牧場はおよそ七百羽を飼育しており、定期的に津島と織田弾正中家へ肉を販売しております。日に二十羽から三十羽が産まれるため、出荷数は毎日二十羽に絞り、卵やあまりの肉はこの屋敷に卸しています。利益は昨日から遡って三十日で区切り計算したところ、これが一年続きますと約七百九十貫ほどになります。これは肉と卵だけの利益です。

 肉に加えて水鳥からは羽毛が取れますので、それを加工した布団。これを羽毛布団と言いますが、これがとんでもない高値で売れます。津島を通して全国の大名に売ることでこちらもかなりの利益を得ています。

 肉と卵と羽毛で生み出される利益は合計、とぅたる? で一千貫はくだらないかと」


 一貫って大体十五万円ぐらいなんだよね。つまり、現代換算で一億と二千万の収入。水鳥牧場だけでとんでもないことになっている。実際は餌代で実入り自体はまだ少ないが、波の商家なら泡ふいて倒れるような帳簿だ。

 それにしても、黙阿弥ったら積極的に俺の教えた言葉を使おうとしてる。可愛いやつめ、……黙阿弥の方がめっちゃ年上だけどな。


「何か足りないものはある?」

「そうですな。強いて言えばですが人手が欲しいところで。もう少し手が回れば牧場をさらに拡大できるかと」

「牧場関係はなるべく人を増やしたくないんだが……。わかった、信頼がおけるものを選出しておく」

「ありがとうございます」


 黙阿弥のはにかんだ笑顔でしめて、鳥部門はおしまい。次は四足牧場部門だ。

 四足牧場部門の担当は志能便の甚八。お調子者ではあるが言われたことを忠実に守って真面目に働くので担当に抜擢した経緯があるが、プラスアルファで何かをやれっていうと混乱してしまうタイプなので黙阿弥がよく相談に乗っているそうだが……。


「四足牧場部門の甚八です。四足牧場では主に牛と豚を飼育しています。牛は乳を飲むために、豚は食らうために育てていますが、全ての牛と豚が出産を控えているので未だに益は出ておりません」


 はい、そういうことです。四足牧場だけが天神領で唯一赤字を垂れ流しています。


「牛乳が取れるのはもう少し後、豚はしばらく数を増やすので食べない。利益は後に回収すればいいさ。

 とはいえだ、時が解決するまで甚八たちが針の筵になるのは忍びない。後日、牛や豚の糞を使った畑作業を教えるので心に留めておいてくれ」

「はっ、承知しました」


 いい返事だ。次に報告するのは食品加工部門のトップである妙。とはいっても、ここはこの前視察した通りのままなので割愛。売り上げも作る専門の部署だから妙自身は把握してないし。なにかあればこの後十三郎が報告するだろう。

 では四部門目の作物部門。ここのトップは弥八という新たに任命した乙名である。年老いているだけあって、広い視野で物を見て村人同士の諍いを収めてくれるので重宝している。


「作物部門の弥八です。天神領全体は寄進された日が日ですので未だ完全に把握できておりません。ですので天神村のみの報告となります」

「うむ。天神領が広がって日が浅いからな、領地全体の収穫については次回でいい」

「ありがとうございます。それでは天神村の収穫物ですが、十川様にご提案いただいた白布栽培という技法を試したところ、気温の下がった冬場でも見事なカブが収穫できました。

 これを広めていけば年中作物がとれるかと愚考します」


 白布栽培ってのはビニールハウス栽培のことね。本当はアクリル板使ったハウス栽培がよかったんだけど、費用の問題で通常のハウス栽培を先行して試している。暖房なんかはいまのところつけていない。しかし、ビニールハウスの周りを掘り下げて発泡スチロールで囲い、埋め戻すことで地中からの温度低下を和らげることができると聞いたのでそちらを試した。結果は大成功、中サイズのカブが通常と変わらない期間で収穫できた。天神村の農業はこれで一歩前進したことになる。

 食卓に肉と野菜を揃えることができるようになったからな、あとはこれを各家庭に広げるだけだ。ちなみに稲作は捨てている。品種改良した小麦が持ち込める以上、調理幅で米に勝る小麦を優先して育てるのは当然だ。それに現代では米が余っているから買った方が安い。俺の知り合いだけで数百トンぐらい古米が余っているからな……。


「報告ご苦労さん。弥八は言いたいことある?」

「そうですなぁ。樽酒をもうちぃと安くしていただけませんか」

「安くしすぎたら馬鹿みたいに飲む奴が出るから無理。はい、次は建築部門!」



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