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戦国天神伝~神騙りスローライフ~  作者: 菅原暖簾屋


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圧迫面接こちらが上

 一五二八年(享禄元年) 十二月中旬 尾張国 勝幡城 本丸御殿 十川廉次


 悲しそうに咽る菊之助に全力の謝罪をしていると、信秀の小姓が俺を呼びに来た。どうやら宴会の準備が整ったらしい。

 菊之助に帰宅したら彼の大好物であるラム酒を奢ることを約束して、小姓に促されるままに廊下を歩み、会場に入室した。それがいけなかったのだろう、菊之助のことを気に病んで集中していなかったのもある。

 俺が案内された会場は十畳ほどで何も着飾っていない扉以外全面壁の、言うなれば悪いことを密談するための部屋としか思えない場所だった。

 そこにあらかじめいたのは三人、部屋に入って右手に信秀、そして反対側には塚原卜伝と略式だが公家の服装をした信秀と変わらないぐらいの歳をした青年だ。間違いない、こいつが山科だ。謀られた!

 俺が指示した食器ではなく、三人の前には膳にのった中華料理セットが配膳されていた。この流れはマズイ。


「ちょっと~、小姓くんさぁ、部屋間違えてるじゃないかぁ、ぼかぁ宴会場に行きたかったんだよぉ」

「いえ、間違えておりませぬ。主からは御使い様はこちらで食事をとるので支度をしろと指示されましたので」

「いかにも。ささ、十川様もお座りください」


 信秀の指示だと言われれば断りようがない。死ぬほど嫌だが山科の真正面、信秀横の座布団に腰を下ろす。あ、この座布団、俺が百均で買ってきた奴だ。俺が着席するのを見計らったように俺の分の膳が目の前に置かれる。宴会でギャハギャハ騒ぎながら飲み食いする計画がパァだよ。


「まずは冷めぬうちにいただきましょう。十川様、馳走になります」


 うすら寒いのは確実に気温のせいではない部屋の温度を気にするでもなく、信秀が口火を切って料理に手を付け始めた。無論、毒見などしていないため温かい料理のままだ。


「毒見はしなくてもいいのか?」

「敵国との会食ならば警戒しますが、それ以外は温かいうちに食しております」


 随分とぬるくなったものである。気持ちはわかるけどな。温かい飯を一度味わったら冷めた飯なんざ食えたもんじゃない。ゆっくりと卜伝も頷いて、然り然りと言っています。


「それは、大名にしては珍しいでおじゃるな」

「某は大名ではございませぬ山科卿」

「……ほっほ。そういうことにしておこうか」


 あれ、なんか信秀と山科の間でバチバチやってるんだけど。仲いいんじゃなかったのかお前ら。そんなことを考えていると、流れるように山科が膳から一歩下がり平伏した。


「十川様、麿は畏れ多くも今上の帝にお仕えし、過分にも内匠頭をいただいた山科言継でございます。天上の国よりこの荒れた世を正す為に降臨くださいましたこと、主上に変わり御礼申し上げます」


 いきなりの持ち上げ発言に混乱する。普通、俺みたいなのは異分子として弾き出すのが朝廷だと思うんだけどな。


「頭をあげろ山科。通常ならば俺のようなものは貴様ら公家は認めぬと思うが?」

「はっ。確かに十川様の情報がもたらされたとき、朝廷内部では戯言や騙りと断じて勅令をもって排除しようとした者たちもおりました。

 しかし、織田弾正忠殿を通して帝に数々の品をお届けくださり、両細川の悪逆で困窮した朝廷が倒れずに済みました。依然として、御身を偽と決めつける者もおりますが、少なくとも帝は十川様を天満自在天神様の御使いとして認めると」


 あれ、いつの間にか本物認定されている。それはそれで困るが、俺を理由に刃を向けられることがないだけマシか?

 つーか、信秀ってば俺に気を遣ってそんなことしてくれてたんだね。あとで礼を言わなきゃ。


「そうか、畿内はまだ荒れる。というより飯を食いながらにせんか。冷めてはいかん」

「然り、山科卿と十川様の語らいも興味をそそられますが、まずは十川様の拵えた珍しき飯をいただきませぬか」

「そうですな。山科卿、十川様のご厚意で絶品料理を用意していただいたのです。先に味わいませぬか」


 俺含め三人の食事を先にしようぜの言葉に、何かを言いたそうであった山科も頷かざるを得ず、しぶしぶだが木匙を手に持った。

 いただきますの声はなく、卜伝はワンタンを、信秀はユンヨン炒飯を掬い口に運ぶ。逆に山科はどれを口にするかで悩んでいるようだった。


「どうした内匠頭」

「これは、時告鶏ではありませぬか?」


 あぁ、鶏肉は禁食だったな。俺たちってそこら辺ガン無視してるからなぁ。


「アヒルという水鳥の肉だ。肉はいいぞ、内匠頭。普通ではとれぬ滋養が容易くとれる。豚は特にいい、病にも効くからな」


 水鳥ですか、と山科はボソリと呟きワンタンを口にする。

 口に合ったのか、山科は嬉しそうに頬が吊りあがって笑みを浮かべた。


「ほう、それはどのような病です」


 信秀が興味深そうに焼売を口にしながら俺に尋ねる。


「あん? 脚気とかだよ」


 瞬間、俺を除く三者が口に含んだものを吹き出した。

 そうだ、これってまだこの時代には判明していなかったんだった。やっちまったな。



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