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戦国天神伝~神騙りスローライフ~  作者: 菅原暖簾屋


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寄進地が増えるよ、やったべ廉ちゃん!

「こいつぁ……」

「とんでもない量の魚ですわ」


 声をかけて倉まで荷物を取りに来させた利平と力丸が大いに驚く。

 そうだろうそうだろう。わざわざ愛知南部の漁港まで遠出して買い付けてきたんだからな。アマダイ、イサキ、ハタハタにマダイ。いい値段したわ本当に。

 爺から連絡も来てないから市内で買い物も控えての遠出になったからな、いい迷惑だよ全く。


「それにこの氷の量、まさしく贅沢ですな」

「せっかくの祝いだからな。奮発している」


 屋敷やギルドの金を管理している十三郎が呆れたように氷に対しての感想を言う。実際冬だから呆れですんでいるが、夏場なら正気を疑われるだろうな。大きめの発泡スチロール七個分の氷だもん。

 魚を買いすぎたおかげで野菜と魚だけで一台埋まってしまい、米と肉を積むスペースが縮小してしまったのはやってしまった。思ったより保冷用の発泡スチロールがスペースとってる。

 十三郎に銭の使い方について小言を言われていると、自来也が駆け寄ってきて出発準備が完了したと俺たちに告げた。これ幸いと俺は十三郎に帰ってきたら聞くからと言い放って屋敷の外へと逃げ出す。背後から盛大なため息が聞こえたが気にしない。

 屋敷の外には天神村に常駐している織田弾正忠家の兵十名とギルドで雇いあげた若い村人が十名の計二十人が荷物を完全に積み込んだリヤカーと共に待機していた。ここに村側志能便のまとめ役である菊之助と俺を合わせて勝幡城を目指す。

 とはいっても、織田弾正中家の領内は金があるから安定しているので道中の危険はほとんどないと報告を受けている。そりゃ織田家の当主の弟が一人で出歩くぐらいだしな、戦国の世に似つかわしくないほどの治安だ。

 テクテクと踏み固められた道を歩きながら、菊之助との雑談でこのことを話すと、彼は呆れた顔で「御身のおかげですよ」と返した。


「俺のおかげだと?」

「十川様が津島を通して卸した食料、白米・味噌・塩、非常に味もよく安いですね。それはもう座を駆逐してしまうほどに。加えて津島の商家は御身の機嫌を損ねるわけにもいかないので領内の民に向けてならば安価で品を売っています。つまり、織田の民は安値でまともな食事ができているのです。

 織田弾正忠様も市場から浮いた従来の黒米や赤米を津島を通して各国に販売し利益を得ています。まさに濡れ手に粟。とんでもない量の銭が勝幡城の倉にはあるとかないとか。

 我慢ならずに油や塩の専売を破られた領内の座が口を出してきたとのことですが、大橋源左衛門様と織田孫三郎様が武威をもって叩き潰したとのこと。

 織田直轄地以外の者たちも津島の恩恵で楽な生活を送っているところが殆どですから、織田弾正忠家の土一揆などは現状ありえないでしょうね。

 これ、全て十川様が大なり小なり関わった結果です」

「ええー……」


 何その風が吹けば桶屋が儲かる的なマジック。それにしても弾正ってば御使いに心酔している風な感じだったのに都合よく利用してるねぇ。したたかでなにより。

 その調子で本家を食い散らかしてくれると安全にスローライフができそうでいいね。


「ついでに申せば、孫三郎から新たな寄進地のご提案を受けております」

「ああ、この前聞いたねそれ」

「寄進地はここより蟹江の境界辺りまでですね」


 水筒に入れて飲んでいたブラックコーヒーを盛大に噴き出す。菊之助以外も初めて聞いたであろう情報に一同道に立ち止まってざわざわと騒ぎ出した。

 菊之助は大して気にするでもなく、手を数回叩いて立ち止まるなと指示して出発を促し、ざわめきは収まらないまま俺たち一同は再び歩き出す。


「お前、それマジで言ってんの」

「マジとは何か存じませぬが、事実でございます。寄進地には織田弾正中家の代官を配置することが条件ですが、それ以外は自由にとのことで。ああ、代官は孫三郎様とその家臣が担当する手筈になっています」

「至れり尽くせりじゃん。そこまでやられると裏を感じるな」

「簡単な話でございます。十川様はこの地に降りられましてから、作物だけは生産しておりませんので、それを織田の御仁は確かめたいのでしょう。

 弾正忠様に十川様はかなり好意的ですから、お互いに譲歩し合えば共生できるとお考えなのかもしれませぬ。ですので、まずは土地をと」


 はー。菊之助もよう考えるわ。俺にはさっぱり考え付かなかった。

 だけども、確かに自由な土地があれば色々放っておいた産業に着手できる。その一つが。


「そこまで信用してくれるなら造船がやりたいねぇ」

「船ですか? 津島でも小早や関船は手がけていますが」

「違う違う、もっと大きな奴さ。大海原を越えて新大陸に行けるドデカイ奴」


 菊之助がピタリと歩みを止める。彼は不思議そうに俺の顔を見つめると、ふぅーっと息を大きく吐き出し。


「それを弾正中様にお伝えいただけますか?」

「おん? なんでさ」

「船大工は家に雇われていることがありますので、借り受けるにしても雇うにしても事前に話しておいた方が問題が起きにくいかと」

「なるほど」


 菊之助ってば気が回るなぁ。村のまとめ役の一人だから普段は連れまわせないのが本当に惜しいぜ。



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