宴会準備・後
二〇二二年(令和四年) 六月頭 十川廉次
リヤカーの手配は無事、無事だと言っていいのかは甚だ疑問ではあるが、完了した。サービスカウンター担当のお姉さんが片っ端から各店舗に電話をかけて集めてくれたのだ。マジで感謝ですわ。
リヤカーの納品は三日後。すべて揃ってから俺の家まで配達してくれるそうだ。無理に集めたので積載量が同じものではないが、贅沢言ってられないよな。
メガミスモに続いてやってきたのはベビちゃん本舗。全国チェーンの幼児用品専門店である。平日の昼間ということもあり客は少ない。その数少ない客も女性ばかりで明らかに俺は場違いだ。
居座っても居心地が悪いだけなので、近くの店員さんを捕まえて出産の贈り物で歓迎されるものを教えてもらう。
老年の店員さんは笑顔でオススメの品がある通路に俺を案内してくれ、その場で解説を始めた。
「出産の贈り物で喜ばれるといえば消耗品がベターかと。おむつや粉ミルクがオススメですが、そういったものでは?」
「それは元々買うつもりで来たので、別の物を買いたいのですが……」
「でしたら、肌着やベビーベッドなどはいかがでしょうか。もっともベビーベッドなどは高価ですので、出産された方のご両親が既に購入されているかもしれませんが」
「あぁ……」
ベビーベッドはないにしてもそれに近しいものはありそうだな……。
かぶったときには別に側室じゃなくて正室が子供産んだ時にも使えるだろうし買っとくか。
「ではベビーベッド……」
「ありがとうございます! ベビーベッドでよろしいですね?」
「あと肌着のオススメを百枚ほどお願いします」
「……はい?」
少ないより多いほうが良いだろう。
◇
「うーん、買いすぎたか?」
ベビーベッドが布団付きで八万円、肌着の山が二十五万円、しめて三十三万円なり。いや、財布の口が軽くなってるなぁ。でもお祝いだし……。
使っちまったもんは仕方ねぇ! 切り替えていこう!
「えー、食材は向こうへ行く日に買うから……。あとは古着屋に行って、それから……」
そんな感じで残りの予定を立てていると、不意にスマホが鳴る。着信だ。画面を見るとえるめすの爺さん、珍しいな。スライドして受話する。
『よぉ、暇か?』
「普通に忙しいけど用があるならいいぜ。世話になってるしな」
『いや、別に用事があるってわけじゃ……。あー、すまん。今日の夜にお前の家に外人が向かうと思うから話を聞いてやってくれねぇか』
「どうした急に」
いきなりわけわかんないお願いしやがって。
『その外人はな、あー。身内なんだよ俺の。お前の婆さんに世話になったから手を合わせたいってよ』
「なんだ、それならそうと言えよ。喜んで歓迎するわ」
『そうか、助かる。名前はジャンヌって言うんだ。よろしくたのまぁ』
ブツリと通話を切った爺を不審に思いつつも、お客が来るなら歓待の準備をしないといけないな。今日は行くつもりはなかったが、スーパーで買い出しをしないと。
それにしても、ジャンヌねぇ。なーんか引っかかるような。




