表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/55

52話 ステラモリス公国にて

「というわけで伺いました」

「話さなくても分かるよねみたいなのやめろ」

「時間なくて」


 夜中に出て日の出と共にステラモリス公国に着いた。ヒーロー・サクとヒロイン・クラスが早起きなのは本編もとい一周目通りなので、なんとか二人に会えてほっとする。


「お願いがあるんですって」

「東に逃がした後、東への国境線の入出国査定を厳しくすればいいんだろ」

「話分かってるの助かる」


 厳しくするどころか封鎖してほしいけど、そこまでは無理だろう。そこは東の国が了承しないと叶わない。


「挙句、イルミナルクスのみでしか東に行けないようにしろってか」

「最高。そうしてください」

「お前、自分が無茶言ってるの分かってんのかよ」

「けど、東との交易をイルミナルクス王国が独占できれば、そちら的には御の字でしょう」

「過度な利益搾取は他国の反発を買うだけだ。お前戦争起こしたいのかよ」


 それは絶対駄目。推しカプが少しでも平和にいちゃつける世界であってほしいので、そこは妥協しよう。イルミナルクスより南から東の国に出ようとする場合、地形の兼ね合いでかなり遠回りになるから、その点では逃げる時間は稼げるし妥協できる範囲内ね。問題はやっぱりイルミナルクスからの出入国かな。


「ふん……お前これでいいのかよ」


 なんだかんだ面倒見いいの本当癒し。

 けど今回の私の決意はかたいんだから。


「サクたん、私にとっての死亡フラグは他人にとっての死亡フラグになりえる、そう言いましたよね」

「おう」

「エールにとって私フィクタは最大の死亡フラグだったってことですよね。あの爆発だって私が受けて本来の世界線に戻る為に回収されるべきフラグでした」


 小説、ではなく一周目である本来の世界線が正しい道なら私は悪として死なないといけない。死ななくてすむようすごしていたし、実際ここで修正力が働いても一周目と完全な同じ道はないだろう。けど、私の死は逃げられない運命ということだ。ならせめて他を巻き込まないで死ぬ方法を選びたい。


「私が大切に思う人間の死亡フラグ回収はごめんです。悪役としては無理ですが、どこかでひっそりとなら私は」

「お前まだ勘違いしてんな」

「え?」

「この世界線はお前を軸にやり直された」


 私が? と首を傾げるとサクが不機嫌そうに眉を寄せた。


「お前が収容所で死ぬのは嫌だとやり直したから今がある。巡回者の言葉で例えるなら、この物語の主人公はお前だ」

「中二病ありがとうございます」

「はぐらかすな」


 分からないわけではない。この物語が本編に戻ることはないし、このまま未来は進んでいくだろう。それでも可能性として残る死亡フラグの回収を私にも私以外にも向けるわけにはいかない。


「なんだかんだ順調で気づかなかったんです。長くいすぎて情もできちゃったし、離れるなら今しかない。国家連合はとっくに問題ないとこにきてて、まあなんといいますか、私の役目は終えたと思ってます」

「役目なんてもんは鼻からねえよ」


 珍しく真っ直ぐ見られた。


「お前がどうしたいかだろ」

「サクたん……格好良すぎてやばい」

「誤魔化すなよ」


 笑ってさらに誤魔化してみた。


「お前が本当にやりたいことをしろ」

「うーん……」

「気持ちを誤魔化すな」


 痛いところついてくるなあ。でもサクは自分がやりたいことをして幸せを掴んだ。本編、というか一周目のフィクタだって自分を貫いた。今の、この世界線のフィクタは臆病ね。やっと完全なフィクタになったのに。

 すると本編、もとい一周目かつ本来のヒロインのクラスがあの、と声をかけてくれる。いいタイミング。さすがヒロイン。


「誰も死なないですよ?」

「?」


 見ればサクの手を握っていた。いいね、滾る。


「フィクタさんの大事な人が死なない未来がみえました」

「あれ、それってサクたんのスキル?」

「あ、分け合ってる内に私にもみえるようになったんです!」


 尊い。

 クラスもやっぱり聖女としての器だったというわけだ。眩しすぎて目開けないわ。


「クラス、こんな奴の為に力使わなくていい」

「ひどい! ありがとうございます!」


 でも通常運行でたまらん。そこが好き。クラス以外にはツンだけでデレがどこにもない。それを貫いているだけで幸せだ。

 うふふとにやにやしている私の背後でひどく静かな声が響いた。


「……ひどいのはどちらですか」

「!」


 うっわ、まずい。

サクってば本当面倒見いいよね…ということで、フィクタが自らやり直しの魔術を施し、フィクタ自身を軸に戻ってきた世界線、因果律の話をねじ込んでもよかったんですがやっぱりやめました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ