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41話 植物園デート

「朝早くて驚いたわ」

「時間が経つと混むので朝一番を選びました……ああ、着きましたね」

「へえ、植物園」


 貴族は領地を持っていて割と大きな庭があるから、こういうところへは来ない。低爵位や平民には人気だとか。早く入れたのはテンプスモーベリ総合学院での研究用に協力しているのもあって学院生徒は融通がきいたらしい。

 朝日の注ぐ静かな植物園は二人で歩くには広すぎる。けど喧騒もなく、風に揺れる木々の音や温室の暖かい日の光に心落ち着く気がした。仕事しながら推しカプの為に動くとか確かにハードだし、ほっとしてるあたり私は少し休みたかったのかもしれない。


「植物園を選ぶなんて珍しいね」

「フラルは花が好きなのでは?」

「んー、物語で薔薇なんかは重要だったけど、個人的にはそこまで好きってわけじゃ……」


 エールを見たらしょんぼりした顔していた。

 いけない。

 確かに薔薇がなんだって話してたら植物好きなんだって発想になるよね。折角デート考えてくれたんだから無下にするのもよくない。


「あ、でも好きなのは好きだから」

「……」

「ほら、植物研究で毒性のあるもの調べてるでしょ? そういうものを知るのも好きだから」


 まあ遅効性の毒を好んで使っていたフィクタの知識を考えると研究用の毒草のほとんどは把握しているっていうオチよ。

 ぶっちゃけ、今目の前にある毒に関する研究用植物は全部知っている。


「ああ、そうね」

「?」

「東の大陸にしか分布しない植物は取引制限した方がいいわね」


 フィクタも手に入れるのが簡単だったから使っていた。それこそまだ縁がある商人たちに頼めば簡単に持ってくるだろう。商人は信用を大事にはするけど、それは一部のいわゆるできる商人であって、楽して儲けようとするタイプの商人は危険であっても毒物に平気で手を出す。


「特に綺麗で目立つ花は西でも好まれて庭に植えたがるから、貴族の観賞用から制限かけて、その後毒物に目をつける輩から守る為に段階を踏んで厳しくしていくのがいいかしらね」

「成程」

「でも本当に薬になるものは国が認めた者だけ取引可能として輸入してもいいと思うわ。有資格者限定ってやつ」

「研究用や治療用限定ですね?」

「そう。国家資格っていう連合初の資格にするのもいいわね」


 そのあたりは本編ヒロインのクラスに頼んでステラモリス公国の医療技術を国家連合の基礎として組んでいけば、国際的な医師団が作れるかしら。そうなればステラモリスの特別な治癒に頼ろうというのもなくなる。国際的な医師団の本拠をステラモリスに置き、創立時の権利もステラモリスが多く持てば国としての発展も望めるだろう。観光と医療、そして農業。ここから選択肢を増やす増やさないはあちら次第。というか今本編ヒーロー・サクがステラモリスにいる時点で問題ないだろうけどね。


「フラル」

「なに?」


 微笑みのまま右腕が私の腰に回って引き寄せられた。急になに? 人いないからマシだけど公の場ではやめてほしい。


「仕事の話はやめましょう?」

「え?」

「仕事の話はなしです。今は私とフラルの時間です」

「分かった。じゃ離れて」


 両手で胸を押してもびくともしなかった。見上げたエールは笑顔だ。だけど少し不機嫌ね。


「私とのデートに集中して下さい」

「してるわよ」

「デート、ちゃんとして下さい」


 さらにエールの腕に力が入った。あ、近い。


「分かったから! ひとまず離れてって!」

「……動揺してます?」


 わざときいてる? 早くに来たとはいえ隅々まで回って時間が結構経っている。いつ人が来てもおかしくないのに。

 こんな現場見られて特定されたら貴族内外で言われ放題よ。


「してるわよ! もう満足でしょ?」

「……ふふ」


 軽く笑った。不機嫌が直ったのはいいけど、私に意地悪して機嫌直すのどうなの? 人としてどうなの?

 小説内で憂さ晴らしで暴力振るってたフィクタが言える台詞ではないけど。


「目立つの嫌なのよ」

「よく言ってますね」


 するとやっと腕の力を緩めてくれた。誰かくる前でよかった。


「いい加減にして」

「フラルへの気持ちがおさえられなくてつい」

「……」

「婚約してればこのぐらい普通ですよ」

「私が嫌なの」


 相変わらず小さく笑うだけだ。

 身長が同じぐらいの大人びた子供だったくせに、無駄に背が伸びてがたいがよくなった。それが分かるとすごく気まずい。卒業パーティーで気づくんじゃなかった。


「フラルが悪いんですよ」

「はあ?!」


 流してる髪を一房とられる。それを躊躇いもなく口元へ持っていった。


「ちょっと」

「こんなに美しくなってれば放っておく方がおかしい」

「……妙にぐいぐいくるわね」

「ええ、必死なので」


 そこまではっきり言われると清々しいわ。


「……エールも格好良くなったわ」

「……え?」

「あ、朝早かったからお腹減ったわね。お店行きましょう」

「ええ、勿論」


 昔は躊躇いなく褒められたのに妙な感じになったわ。調子狂う。

描写としては見上げるとか見下ろすとか平気で入ってたんですけど、いざ気づいて意識すると戸惑うっていう可愛い話です(笑)。サクとクラスがいないと二人だけの時間が戻ってきますね~エールは嬉しい事でしょう。

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