24話 フィクタ、私と結婚して下さい
とはいったものの、どう説得する?
「ソミアさんのお茶、とっても美味しいです」
「ありがとうございます」
男性二人には席を離れてもらいたかったのにエールがもれなくついてきた。ソミアには説得に説得して渋々座って一緒にお茶会をしてもらっている。
エールの監視から解放され、推しカプヒロインとお茶したかったなあ。
「んー……ソミアさん、単刀直入に申し上げます」
「はい」
「第三皇子殿下のこと好きですよね! 結婚したいとかの意味で!」
「いいえ」
でーすーよーねー!
デレが見られるほど仲良くなってないものね。ユースティーツィアとは勝手が違う。ユツィは察してくれるレベルが半端ないし、比較的他者に対してオープンだ。
けど、ソミアは違う。
私はそもそも監視対象だし、ソミアの主人であり愛する人である第三皇子のシレが私を警戒してるから、心を開いてもらえないなんて分かっている。けどこんなに塩対応だと泣けるわ。小説通りのソミアに会えて非常に嬉しいけど!
「僭越ながら申し上げても、」
「全然どうぞ! というか私平民なんで敬語いらないんで!」
おっと食い気味に応えてしまった。
ソミアがちらりとエールを見る。マーロン侯爵姓を持ってるからこちらに配慮をとでも言いたいのかな? それもエールが笑顔で頷くのでぐっと身体を一度揺らすのが分かった。
「私と殿下はそのような関係では御座いません」
「いやいやそんな」
「確かに私は側仕えで殿下の近くにいます。入城してから殿下の身の回りの仕事も賜ることが多かったとは思いますが、そ」
「その話詳しく」
エールが咳払いした。
「やっぱりいいです……」
そうじゃないだろと咎められた。咳払い一つで諌めるとは中々表現力がおありで、なんて。
「こういうのは話をたくさん聞いて心ほぐれたところで本題に入るものでしょ」
「フィクタが聞きたいだけでしょう」
「くっ……何故分かった」
「顔に出てますよ」
そもそもしょっぱな本題に入っていたのではと指摘されて落ち込んだ。
「なによもおおお」
「フィクタ、落ち着いて」
「ソミアたそ、シレきゅんのこと好きなんだよおおおそんなの常識じゃあああん」
「……たそ? きゅん?」
おや眼を見張るソミアめっちゃ可愛い。
「身分の法律変わるから今がチャンスなんだって!」
「フィクタそれは機密事項です」
「いいんだよ、すぐにソミアたその耳に入るから!」
「身分……」
二人が結婚しやすくなるよと明るく言っても反応がいまいちだった。
高爵位平民すら要件に関わらないよ! と言っても顔は固いままだ。
「そんなことが……」
「できるよー! 好きなら好きって言えるようになるし! すぐ結婚しろ言わないから婚約してよおおおそしたら安心できるからあああ」
「安心?」
「そおだよおおおお! 身分差がなんだ! 爵位がなんだ! ソミアたそは知識も語学も完璧だし礼儀や佇まいもとっくに皇族級じゃん! 周りだってソミアたそのこと悪く言わないでしょ! いいんだよ! 思い通り生きなよ! 殿下の隣に立ちたいんでしょ?! 他の令嬢立つとか本当は嫌でしょ?!」
「……」
いけない、ソミア少し引いてる?
でもちょっと今のテンションさげられなさそう。
「フィクタ、少し落ち着きましょう。ほらお茶を」
「落ち着いてられるわけないでしょおおお」
「そうですね。ではこちらを飲んで」
一気飲みしてやったわ。
正直、推しカプの幸せの為に死亡フラグというリスクと関わることまで覚悟して臨んでいる。ヴォックスとユースティーツィアは小説外伝から鑑みるに、今はもだもだしてるかもしれないけど婚約さえしてしまえばクリアしたも同然だから、次はシレとソミアをどうにかしたい。
「フィクタ、身分差に関する法律が緩和されたら平民と高爵位の人間が婚姻を結ぶことを推奨されるんですよね?」
「え? ええ、そう。政の参加とか商売でのパートナーとか含めて」
いきなり知ってることをきかれ戸惑う。
エールったらなにか考えでもあるわけ? まったくわからないけど。
「第三皇子が手掛けることで当然推奨されることを証明するために手本となる示しが必要ですね」
「まあそうね」
お手本になるからマネしてね、的な。急に言葉にされても動けないのがほとんどだろう。
政なら学院から参加者を集めるところから初めて公募みたくしてけば段階は踏めそう。仕事はイグニスやマーロン兄が抱える大商会を動かせば可能。手本はいくらでも考えられる。
「フィクタ、私と結婚して下さい」
「…………は?」
よくこんなフィクタの情緒のおかしい時に結婚の申し出できますよね(笑)。というか、ペットを扱う主人みたくなってるエール…お世話焼きの方向が特殊な方へ(笑)。結婚の申し出ひゃっはー!




