表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/55

18話 推しとの邂逅

「ここがグレース騎士学院」

「嬉しそうですね」

「当然でしょ」


 小説外伝の推しカプが出逢い、愛を育んだ場所。私ってば聖地巡礼してるんじゃん。聖地巡礼ってオタクの中では最たる推し行為の一つだ。


「フィクタ」

「フィクタ」

「ああ、久しぶり、ね?」


 大広間、各学院の理事から挨拶があり、最初に構内を案内するにあたり担当がくるまでの待機時間に双子はやってきた。


「うん。フィクタは?」

「怪我とかしてない?」

「してない、けど」


 大きくなりすぎてない?

 私と背丈の変わらなかった双子は今や頭一つ違う。成長期怖い。


「背、伸びたのね」

「うん。去年から伸び始めたかな」

「でももっと背高いのいるし」

「そう……」


 嬉しそうに顔を綻ばせてくるものだから、迂闊にも可愛いと思ってしまった。見た目だけ大きくなったのに子供らしさを残してるの? 罪深くない? 二人とも一周目は悪役で名前すら描かれなかった。場合によってはモブ同然の二人にここまでキャラが立つとは驚きよ。


「フィクタ、先生方が来ましたよ」

「あ、うん」


 するっとエールが私の前に出たから一歩下がった。


「交流授業や自由時間もありますし、御二人とはまた別の時にお話しすればよろしいのでは?」

「そうね……じゃそういうことで」


 と、双子があからさまに嫌そうな顔をしていた。眉寄せて目付きが鋭い。視線はエールに向けられていた。


「貴方たち、彼の言う通りよ。後で時間取るから今は戻りなさい」

「……わかった」

「後で時間とってね」


 渋々戻っていく。中身はまだ子供ね。


「ありがと」

「いえ。私の器量が狭かっただけです」


 あまり目立つと双子の立場があるし死亡フラグ回収しても怖い。てっきり庇ってくれたと思ったけど、エールの言い方的にそうでもないらしい。気にするとこでもないかな?


「さて、楽しみますか」


 今回の交流会では騎士学院の基礎的な実践、つまり剣を握って素振りを行ったり、座学では兵法を学んだりできた。やはり学びをメインにしているだけある。新鮮で刺激的だわ。身体を動かすのもいいものね。


「フィクタ」

「フィクタ」


 基本的な型やら握り方に素振りを終わり息をついたところに再び双子が戻ってきた。


「貴方たち、相変わらずね」


 そういえば見本で騎士学院の生徒が打ち合う姿を見せてもらったけど二人とも中々よかった。身内の贔屓目に見てもしっかりやれている。


「フリーゴス、カロル」

「ヴォックス」

「?!」

「こちらの方が君たちに言う女性?」

「そう。フィクタ」

「成程」


 外伝一つ目のヒーロー、ウニバーシタス帝国第二皇子、あと数年も経てば帝国の騎士団長になる若きイケメン。

 目の前に! 推しの一人が! いる! 眩しい!


「お、お初に御目にかかります。ウニバーシタス帝国第二」

「ああそういうものは結構だ。ここではただの生徒だから」

「……推しっ」

「おし?」


 おっといけない推しとの会話に感極まってしまった。


「いいえ、独り言です。あの双子が何か」

「ああ、ウニバーシタス帝国騎士団へ引き抜こうかと思ったら、既に護衛の任についてると言うから二人の主がどのような方か気になっていた」


 護衛の任?

 二人の主?

 なんだ、それはきいてないぞ?

 笑顔のまま双子を見ると首を傾げられた。


「フィクタだよ?」

「守るのはフィクタ」

「いやいやいや! やめてって言ったよね?」

「嫌だ」 

「フィクタを守る」

「だめだって! 帝国なら安泰だよ。お金に困らず暮らせる程お給金も貰えるから帝国の騎士になればいいじゃない!」


 なおも私の護衛をやりたいと言う。だめだ、私の護衛をやるとなったら一周目と同じ設定と立ち位置になる。二人の死亡フラグが回収される可能性が高まるからそれはだめだ。


「彼らは君に命を救って貰ったと聞いたんだが」


 ああん推し紳士! フォローが絶妙!

 でも聞き捨てならない。命を救うなんて勇者的なことしただろうか。


「……あ、集落の時」

「そう。助けて貰ったから」

「だからフィクタを守る」


 助かった命の分、守りたいと。なかなか熱いシチュエーションでいいんだけど、それはだめだ。自分の生死が重要視されていない。


「自分の命を守りなさいよ」


 守ればフィクタの護衛をしてもいい? と訴えてきて中々引かない。

 困った双子だ。恩を感じることじゃない。


「私が守りますよ」


 にこにこのエールが何気なく言ってのけた。


「やめてよ。ややこしくなるでしょ」

「おや。真面目に言ってますが」

「こいつはフィクタを監視してるだけだ」

「こら。こいつ呼ばわりはだめよ」

「嫌だ。こいつは信用できないし」


 エールは私にとっての死亡フラグで間違いないから双子の感は正しいだろう。確かに私を監視してるからフォローできないけど、さすがに推しの前で不穏な雰囲気にしたくない。


「はは、成程。過保護だな」


 推しが声だして笑った! 万歳三唱したい! なにこれ真面目な堅物が笑うと破壊力すごいよ!


「ヴォックス」

「ああ」

「楽しそうだね」

「ああ、ユツィ。フリーゴスとカロルの面白い姿が見られるぞ」

「!」

外伝一つ目のヒーロー・ヴォックスがきたぜー!! 終わりにはヒロイン・ユツィもきましたな(笑顔)。

ちなみに年上の双子をヴォックスが呼び捨てにするのは、そう呼んでと双子が頼んだからです。仲良し。

そして最後に、フィクタの話のヒーローは双子じゃないよ! エールだよ!(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ