#007 真の強者
「充分だ、ここからは俺に任せてくれ」
言って、俺が手のひらに作り出した火球を放つ。
ゴオッ!
火球は猪の顔面に命中。
反動で猪が後方へ吹っ飛ぶ。
しかし猪はピンピンしていた。
エレノラの攻撃よりはダメージがあっただろう。
それでも猪を仕留めるには至らなかった。
「一度目は耐える、か」
右腕を天に翳しながら俺が言う。
「だが、二度目はどうかな?」
次の瞬間、猪の頭上に特大の火球が生成される。
それをそのまま猪へ向けて降下。
ドゴンッ!
火球が猪を押し潰した。
しばし経ってから、俺が火球を解除する。
猪の様子を確認すると、完全に気を失っていた。
仕留め切ることはできなかったが、足止めにはこれで充分だ。
「よし、今のうちに離れよう。これ以上、時間を無駄にする必要はない」
「流石です、レクトさん」
俺のことを褒めながらも、怒った様子でエレノラが言う。
「私なんかよりも、ずっと強い……でも、だったら最初からレクトさんが戦ってくれればよかったのに!」
「お前の成長を見ておきたかったんだよ」
言って、俺がエレノラの頭にポンと手を置く。
「予想以上の成長だった。それなら、最低限は自分の身を守ることができる。今のお前なら、旅に同行させても問題ないだろう」
すると、エレノラが照れた様子で言葉を返す。
「そんな、もう! 褒めたって何も出ませんからね!」
「ははは、分かったよ」
笑いながらその場を立ち去る。
後ろをついて来るエレノラ。
案外、この旅は思っていた以上に楽しくなりそうだ。