#004 追手とかやめてくんない? 絶対、俺には勝てないよ?
王城から脱出し、次は国外への逃亡を計画する。
国内にいたらマズい。
指名手配でもされて、すぐに俺の首が飛ぶだろう。
なら国外に出たほうが多少はマシだ。
ともかく、走って俺は国境を目指す。
しかしその道中で、俺は国から派遣された追手と出会ってしまった。
「こんなにすぐ追い付かれるとはな……」
朝方の森の中。
白いローブを着た、複数人の魔術師に囲まれる。
ザッと見ただけで数は三十。
対して俺はたった一人だ。
戦力的にはどう見ても俺の不利。
しかしここを切り抜けなければ、逃走は叶わない。
すると追手の一人が口を開く。
「ベンズ様の命令だ。どうせ貴様は逃げ出すだろうから、始末しても構わないとな」
俺はその男の顔に見覚えがあった。
仕事の同僚だった人物だ。
よく俺に仕事を押し付けてきたことを覚えている。
そいつに向かって、俺が笑って答えた。
「なるほど。なら、手加減はナシだぞ」
「なに余裕かましてんだよ!」
激昂したように男が怒鳴る。
「この人数差が見えないのか? テメェのそのすまし顔、今すぐグチャグチャに変形させてやるよ!」
言って、男が指示を出すと取り巻きが魔術を発動する。
魔術とは、魔力と呼ばれるエネルギーを利用し不可能を可能にする力。
人智を超えたパワーを操る技術のことだ。
敵が発動したのは攻撃魔術。
魔力を火球などのエネルギー弾に変えて、俺に攻撃するつもりらしい。
その威力は一発で軽く人間を殺せる。
それが数十発、耐えられるか?
「待ってください!」
すると、俺の目の前に一人の少女が飛び出してくる。
白いローブにピンクの短髪。
俺を始末しに来た追手の一人だ。
「なにも殺す必要はないはずです! 生きて連れて帰れば、それでいいでしょう?」
必死に訴える少女。
俺は彼女を知っている。
彼女は俺の部下で、名をエレノラと言う。
俺のことを慕っていた人物だ。
気兼ねなく話せる数少ない人物でもある。
「エレノラ……」
俺が名前を呟くと、彼女が泣きそうな顔で言葉を返す。
「レクトさん。なんで、国を裏切ったんですか?」
「いや、それには訳があってだな……」
なんて会話をしていると、突然男が声を張り上げる。
「テメェ! なに俺に意見してんだよ! 下っ端が! 俺を舐めてんのか?」
同時に、無数の攻撃魔術が俺とエレノラに向かって放たれる。
「危ない!」
すかさず俺がエレノラの体を庇った。
刹那、敵の攻撃魔術が炸裂する。
「ギャハハハハハ! くたばったか! レクト=スラスタ!」
高笑いする男。
攻撃の余波で砂煙が舞う。
それが徐々に晴れると、男が絶句する。
「な! 馬鹿な!?」
そこには俺とエレノラが無傷で立っていた。
困惑する男。
エレノラもなにが起こったか分からない顔をしている。
「て、テメェ! なにをしやがった!」
「なにって、ただの防御魔術だが? お前たちにも出来るはずだろう?」
俺が言うと、続けて攻撃魔術を放つ男。
「ありえねぇ! この量の攻撃を受けて、無傷でいられるはずがねぇ!」
「防御魔術は守るだけの魔術だ。シンプルな理屈だろう? 俺の防御力が、お前たち全員の攻撃力を上回ったと言うこと」
言って、俺は防御魔術を展開しながら、攻撃魔術の準備を整える。
「魔術の質は魔力の量によって決まる。そして、俺の魔力量はお前たち全員のそれを凌駕する」
「ば、馬鹿な!? そんなことが、そんなことがぁぁぁ!!!」
その瞬間、俺が大量の火球を周囲に向かって放つ。
敵が放った火球を飲み込み、さらに勢いを増す俺の火球。
そして火球は敵に直撃し、簡単に薙ぎ払った。
「馬ぁぁぁ鹿ぁぁぁなぁぁぁ!!!」
叫んで、丸焦げになる男。
だが殺してはいない。
せめてもの情けだ。
さて。
「あ、あの……」
目を丸くするエレノラ。
この子の対処は、どうするのが正解なのだろうか?
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