色彩
「嗚呼、色のない世界はどれほどつまらなくて、どれほど素敵なんだろう」
モノクロの世界に憧れたことがある。全てが白と黒で表現される世界、ブラウン管テレビに映る彼らは、私の憧れの存在であった。
私を綺麗と言う人間、その全てが私を彫刻のように、絵画のように扱う。この皮を剥げば、同じ赤い血しか流れていないというのに。
私を可哀想と言う人間、その全てが私を腫れ物のように、クランケのように扱う。この肉を削げば、同じ白い骨しか残らないというのに。
「そんなに良い物かしら、これ」
世界は色に満ちている。この国で廻る季節は、太陽は容赦なく私を責め立てる。
今年も桜が咲いて、散る。やけに鮮やかな桃色は風に吹かれて、絨毯と化す。だから私は、春が嫌いだ。
今年も向日葵が咲いて、散る。さざなみは、蒼穹は頼んでもいないのに煌めく。だから私は、夏が嫌いだ。
今年も秋桜が咲いて、散る。まるで動物のように木々や花々は頬を染める。だから私は、秋が嫌いだ。
「いっそのこと、雪女にでもなってしまおうかしら」
吐息は世界に溶けてゆく。私の髪の色と同じように。不純物もなく、ごく自然に混ざっていく。私という特異点も例外なく、その世界の色に溶けていく。
だから私は、冬が好きだ。