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第六話 一歳の誕生日

 俺がこの世界に転生してから半年がたった。

 あれから俺は魔法陣の研究をつづけた。

 魔法陣が前世のプログラミングに近いことが分かってからはかなり研究がすすんだ。

 そして既存の魔法陣を改造できる位には魔法陣のことを理解した。

 特に土と水の魔法陣は発展が著しい。

 魔法陣が刻まれたはんこや、魔法陣を刻む土台などの道具の制作に土と水の魔法陣を混ぜたものが大いに役立ったからだ。

 あとは周囲への影響が小さく、安全に改造できたというのもある。

 そして、ただのくぼみだった部屋の隅の穴も、道具が増えるにつれて大きく拡張され、今や多目的トイレ位の広さになっており、軽い地下研究所のようになっていた。


 たぶん両親にはばれてないはずだ。

 父さんはほぼ毎日仕事にいっていたのできづくはずがない。

 母さんは日中俺の姿があまり見えないので不審がってはいたが、ごはんの時や父さんが休みの日にはしっかりと姿を見せていたので、俺が立てるようになったあたりから気にしないことにしたようだ。


 赤ちゃんの学習能力は恐ろしく、俺はゆっくりだが歩けるようになり、両親の会話の内容もある程度わかるようになってきていた。

 そして、両親の会話から察するに今日は俺の一歳の誕生日のようだ。


 テーブルの上には肉やチーズなどのご馳走(もちろん俺は食べられないが)がならんでいて、俺の前にはやわらかいパンを牛乳でふやかした豪華な(牛乳とやわらかいパンはこの村では高級品である)離乳食がおいてあった。


「では、そろそろ始めようか。

 誕生日おめでとう!ロクスウェル!」


 えっ?ロクスウェルって誰?もしかして俺?

 あっロエルは略称でロクスウェルが本名だったのか!


「ええ、そうね!

 誕生日おめでとう!ロクスウェル!」


 そして両親は食事を始める。俺もスプーンを握ってそれにならった。


「いや~もうロエルも一歳か~…

 見ないうちに歩けるようにもなって…

 無事に育ってよかったよかった」


 そりゃあんたはほとんど家にいなかったからな!

 まあ休日は遊んでもらえたが。


「ほんとにそうだわ!

 半年前はどうなるのかと思いましたもの」


 ああその節はどうもすいませんでした。


「あんときはセーラが『ロエルが悪魔に取りつかれてしまったわ!』とか騒いで大変だったからな。

 悪魔祓いまでしたからもう大丈夫だろ。」


 セーラというのは母さんの名前だ。

 ちなみに父さんはダラスという名前である。


「いいえ!まだわかりませんよ!

 最近は極端に静かになったし日中は行方不明になるのよ!」


 ん~もう隠れずに堂々と研究したほうがいいのかな?

 でもそれはそれでまた悪魔祓いに行くことになりそうなんだよな。


「でも、毎日飯の時間になれば無事に居間に現れるんだろ?

 じゃあ大丈夫だ。きっとちょっと好奇心が強いだけだろ。

 むしろ男の子はこうでなくっちゃな!」


 そうだそうだ~もっと言ってやれ~


「そうだといいんですけどね~…」


 そんな会話をしながら俺の誕生日会はすすんでいった。

 そして日がすっかりと落ち、真っ暗になってくる。


「そろそろ暗くなってきたし、プレゼント渡して終わりにするか」


 この世界の住民は電気がないので基本的に暗くなったらすぐに眠る。


「ええそうね。そうしましょう」


 そして二人は何かを持って俺のもとにやってくる。

 よく見るとそれは首飾りだった。


「ロエル、俺たちからのプレゼントだ。

 これには俺たち二人のお前への思いが詰まっている。

 俺はお前が強く優しく自由に育つよう願いをこめた。」


 こめすぎだろ!


「私はあなたにふりかかる災厄がなくなるよう魔除けの願いを込めたわ。」


 つまり悪魔祓いってか…


 そして二人は俺に首飾りをかけ、ベビーベッドまではこび、寝室にはいっていった。


 ………

 ふと壁に耳をすますと、寝室から何か聞こえる。


「なぁ、もうロエルも一歳になったことだし、いいだろう?」


「だめよ。ロエルが五歳になるまではしないってきめたじゃない。早く服を着て。」


「ふふっそんなこと言って、君も脱ぎ始めてるじゃないか。本当は君もしたいんだろう?

 今日だけだから、いいだろ?」


「もうっ仕方ないわね。ほんとに今日だけよ」


 ギシギシアンアンといった音が聞こえてくる。

 音を聞く限りでは、ダラスが攻勢にたっているようだ。

 だがセーラの方もなかなか耐えている。


 ふむ、夫婦の仲が良いことはいいことだ。

 是非ともそのままずっと仲良しでいてほしい。

 だが、これだけは言わせてほしい。


(普通子供が寝てる横でヤるか!?

 リア充爆発しろー---!!)


 そんな俺の心の叫びは誰にもとどかない。

 まだ声をうまく出せないのだから。




 翌朝、すまし顔で食卓に並ぶ二人に


(昨晩はお楽しみでしたね)


 と言えないことにくやしがる俺なのだった。









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