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第十一話 視線

「ちっ。また行き止まりかよ」


 何度見たか分からない袋小路に、ラインが悪態をつく。俺たちは結構な時間ダンジョンを探索した。脳内で地図を描きながら出口や階段を探しているのだが、なかなかそれらしいものは見つからない。だんだんこのダンジョンから出れるのか不安になってきた。


「これで一つ前の分かれ道の分岐は全て試したから、二つ前まで戻るぞ」


「はあ……。道が複雑なんだよお!」


 まあそりゃ迷宮(ダンジョン)だからね……。一本道とかだったらそれは迷宮ではない。


「ほんとロエルもよく道を覚えていられるわね。わたしなんて二つ目の分かれ道ぐらいでもう分からなくなったわ」


「ははは……」


 ここでもこの体の優秀さには助けられた。録画でもしているかのように通った道がすんなり頭に入り、ゲームのように道が脳内に描かれていくのだ。この記憶力、前世でも欲しかった。


 しかし、このダンジョンは本当に広いな。分かれ道が多すぎて脳内の地図は樹形図みたいになってしまっている。しかもまだ行ってない道も多くあるのでそこからもさらに分岐しているとなると……。はあ……考えると憂鬱になる。でも、一本一本道を試していくしかないんだよな。これでもし最初の分かれ道で選ばなかった道が出口だったりしたら発狂ものだな。


 俺たちの足音が、コツコツと闇の中に響き渡る。


「……止まって」


 突然フレイが何かに気付き、静止をかけた。


「……魔獣か?」


「そうみたい」


 魔獣の存在を確認するや否や、俺たちは慣れた動きで近くの岩陰に身を潜めた。巨大な牛のような魔獣が俺たちの目線の先を通過するのを見送る。やがて、魔獣との距離が十分に離れた。


 ふう……。いやーー魔獣との遭遇は何度経験しても緊張する。ダンジョンを歩き回っているのだから、当然何度も魔獣と遭遇した。その度にこうして隠れて戦闘を避けた。時には気づかれて追いかけっこをしなければいけなくなり、これは大いに探索の妨げになったが、戦うわけにはいかないので仕方がない。ここに住む魔獣はかなり強力で、少なくとも魔法なしで勝てる相手ではないことを、何度も遭遇して改めて理解させられた。


 一度、周囲を確認してから歩みを再開する。しばらくして、分かれ道まで戻ってこれた。この場所は少し広い空間になっていて、合計四本の道がここからのびている。


「えっと、今来た道がこれだから、次はその左の道だな。これでここの分岐は最後だ」


 ここの分かれ道では今来たものの前に一本試していたので次の道で見てない道は最後だ。これが出口に繋がっていなかったらまた一つ前の分かれ道に戻らなければいけなくなる。


「ああもう! これを何回繰り返せばいいんだよ!」


 ラインが頭を押さえながら嘆いた。だんだん焦りが見えてきている様子。


「はあ……さすがに疲れてきたわ。早くお日様が見たい」

 

 フレイもぼやいている。さすがの二人でも、こんなに長い間地下を探索し、命の危険をさらせば疲労やら心労やらが溜まるのだろう。俺もいい加減疲れた。終わりの見えない探索は精神を摩耗する。


「ちょっと休憩するか」


「……そうだな」


「そうね」


 ということで、道の端でちょっと休憩をすることにした。俺は、青い鞘の中で魔石を生成し、小さなコップを作った。中に水を注ぎ、二人に渡す。


「「ありがと」」


 三人で水分補給しながらほっと一息。


「ふう……。いやーこのダンジョン広すぎだよな」


「そうよね。もしこれが多層構造だったりしたら……」


 ……そんなことを言うのはやめてくれ。こんなのがあと数層あるって話だったら本気で出るのに数年かかるかもしれない。


 そんな感じでしばらく談笑しながら体を休めた。


「よし、そろそろ探索再開しようぜ! 体力は十分回復した」


 三人とも水を飲み終わったとき、ラインが勢いよく立ち上がって言った。


「こんなところ早く出ちゃいましょ!」


 フレイも立ち上がったので俺も立ち上がった。二人とも元気が戻ったようでなによりだ。次の休憩は食事のときかな。


「じゃあ探索再開だ」


 そして俺たちは歩き出した。ダンジョンの闇に向かって……


 が、すぐに止まることになる。


 …………


「……ロエル、フレイ、気付いているか?」


 ラインが槍に手を添えながら、静かに問いかけた。


「……ええ。これは……囲まれてる?」


「……ちょっと今回は逃げれないかもな……」


 俺とフレイもそれぞれの得物に手をかけた。


 そう。俺たちは今、何かに囲まれていた。まあたぶん魔獣だろう。四本全ての道から、いくつもの視線を感じる。囲まれたのは初めてだ。この状況で戦闘を完全に避けるのは厳しいだろう。全ての道が塞がっているので逃走不可。正直かなりヤバイ状況だ。俺の頬を汗がつたった。


 少しずつ包囲の輪を縮めてきているようで、徐々に通路の闇に赤い光がぽつぽつと浮かんできた。あれは奴らの目であろう。その光の数からして、一つの通路に三匹はいることが分かる。三対一でもきついのに、敵の方が数が多いとか最悪だ。できれば甲虫型みたいな襲ってこない奴だったらいいのだが……


 俺たちは三人で背中を合わせ、きたる戦闘に備えた。

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