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第九話 お食事

「「「はあ……」」」


 目の前にある頭の瞑れた魔獣の死体を眺めながら、俺たちはそろってため息と疲れを吐き出した。いやもう命をかけた追いかけっこは懲り懲りだ。なんで短期間で何度も経験しないといけないんだよ。


「いやー-死ぬかと思った。でも、これで食料は確保できたな!」


「まだ安心できないわ。この魔獣もまずいかもしれない」


「でも、虫よりは美味いだろ。……て、あ! 俺たちの肉が!」


 見ると魔獣の死体に生まれたばかりの甲虫型が群がろうとしていた。このままではせっかくの収穫が食べれなくなってしまう!


「どっか行け!!」


 俺は風魔法を咄嗟に放ち、甲虫型を吹き飛ばした。そして、死体に一匹も甲虫型がくっついていないのを確認してから、剣を一本作り出し、ラインに渡した。


「ラインとフレイは外で死体を細かくしといてくれ。俺はあの虫を近寄らせないようにする」


「おう! ちゃんと守り抜けよ!」


 二人が死体を押しのけながら穴の中に消えるのを見届け、俺は甲虫型の始末に取り掛かった。広範囲に電流をまき散らし、出来るだけ汚れを出さないように処理をしていく。


 そして数分後……


 一体どれほどの甲虫型を仕留めたのだろうか。出現場所の隣には死体の山が積み上がり、今は倒すのではなくそれに群がらせている。


「ふう……そろそろあいつらも終わるころかな」


 甲虫型を見張りながら座り込み、ラインたちが穴から出てくるのを待つ。あー早く終わらないかなー。もう空腹が限界だ。あの魔獣はどんな味がするのだろう。見た目からして蛇とかワニみたいな爬虫類の味かな。でも甲虫型がエビから程遠かったように見た目から判断するのは危険だな。


「いやー-やっと終わったぜ」


「うえ……グロかったわ」


 二人が小さくなった肉をもちながら穴から出てきた。二人とも全身血まみれで、なんか崖から転落でもしたみたいだ。


「……お前ら大丈夫か?」


「?……ああ、この血か。当然全部返り血だから大丈夫だ」


「ラインが雑にやるからしょっちゅう血が噴き出してくるのよ!」


「硬くて切れなかったんだから仕方ないだろ!」


 ……まあそりゃそうか。生きてる時も剣を砕くくらい硬かったんだから死んでても硬いよな。これはもしかして肉も硬い……?


「げっ……ロエル! あれは何!?」


 フレイが甲虫型が群がる甲虫型の死体の山を指さして叫んだ。


「いや……倒すより楽かなって」


「おーなるほど!」


「なんでグロイ作業させた後にさらにグロイもの見させんのよ!」


 フレイがすごい剣幕でこちらを睨んでくる。命の危険を感じた俺は大急ぎで火魔法で甲虫型を焼却処分した。


「で、肉はそれで全部か?」


「いや、まだ外に並べてあるぞ」


「今からちょっとずつ運びいれるところよ」


「了解。じゃあ、俺は引き続き甲虫型を倒してるから頼んだ」


 俺は甲虫型の処理を再開した。その間、ラインとフレイが次々と肉を穴の外から運び入れてくる。やがて、肉の山ができた。


「ロエル、全部運び終えたぞ。ちゃっちゃと魔法で調理しちゃってくれ」


「まあそう焦るなって。調理してる間は甲虫型の処理しといてくれよ」


 俺は早速肉の山から手ごろなサイズの肉を手に取った。今回の肉は甲虫型の毒々しい色とは違い、きれいな赤色をしている。見た目は普通に美味しそうだ。魔石の棒に突き刺し、火魔法であぶっていくと、こんがりと色が茶色に変わっていった。ジューシーな香りが腹を刺激する。


「今度は美味しそうね」


「ならフレイが最初に食べるか?」


「いや、それは遠慮しとくわ」


「じゃあ俺が食うぜ!」


「……ラインは懲りないなあ。まあ最初に毒味してくれるならいいけど」


 ということで今焼けた肉をラインに渡した。ラインは一旦においをかいだ後、豪快にかじりついた。


「……どうだ?」


 俺とフレイは静かにラインの感想を待つ。ラインはしばらく咀嚼をした後、ついに口を開いた。


「……うん。味薄いけど、普通にうまいぞ。毒もないと思う」


「そうか!」


 ラインの様子から、確かにめちゃくちゃまずいわけでも、ヤバイ毒があるわけでもなさそうだ。ついに久しぶりの食事にありつける! 俺は早速俺とフレイの分を焼き始めた。


「はい、これフレイの分」


「ありがとう」


 俺は、ほかほかと蒸気を上げる肉を両手で持ち、自らの食欲に従ってかじりついた。……うむ。確かに普通に美味しい。味付けもしてないし固いからめちゃくちゃ美味しいというわけではない。というか平常時に食べたらまずい部類だ。だが、直近で口に入れたものがまずすぎたことや、空腹という最大のスパイスによって普通に美味しく感じられる。しばらく俺たちはそれぞれが持った肉を黙って夢中で貪り、久しぶりの食事を堪能した。


「ふう……いや、死にかけた甲斐があったな」


「ほんとにそうだな。あ、死にかけたといえば武器が一瞬で壊れた時のロエルの顔は面白かったな」


「面白かったってほんとにヤバイところだったんだぞ」


「ふふふ。でも、武器の耐久性は問題ね。もっと丈夫なのできないの?」


「いや、魔石武器生成は壊れたそばから新しいのを作って、使い捨てていく運用を考えて訓練してたからな。生成速度ばかりに集中してて耐久性はそんなに鍛えてないんだ」


「ふーん。そう」


 でも、あんなに早く壊れられたらさすがに使いにくいな。攻撃力も出せないし。これからは耐久性も鍛えよう。はあ……村の魔獣相手だったら普通に使えたんだけどなあ。


「なら外で武器が作れれば……いっそのことこの部屋ごと移動できねえかな」


 この部屋ごとねえ……は!


「それだ」


「「え?」」


「いやだから、この部屋ごと移動するってやつだ」


「おいおいロエル。あれは冗談だぜ? 部屋ごと移動はさすがに無理だろ」


「もちろんこのまま移動するわけではないぞ」


 ここで魔法が使える理由って、普通に考えてあの青い壁の素材だよな。多分魔法阻害を無効化する力でもあるのだろう。だったら……


 俺は隣の青い壁に手を当て、土魔法で少し削り取った。そして、その青い石を成形していき、手がすっぽり入る程度の青い箱を作った。


「じゃーん。この部屋のミニバージョンの完成だ」


「「は?」」


「よし、早速実験に行くぞ」


 そして俺は戸惑うラインとフレイを引き連れ、部屋の外に出た。


「その箱でなにするつもりだ?」


「まあ見てなって」


 俺は青い箱に手を突っ込み中で魔石を生成する。……うん。予想通り普通に魔法を使えるな。そして俺はナイフを作り、箱から手を出した。


「ナイフの完成だ」


「?……あ、そっか! その箱の中があの部屋と同じ状態になってるから、その中では武器がつくれるのね!」


「なるほど!……でもあれ? ということは、そのうちその中から虫が湧くということか」


「…………」


 そんなことは起きないと信じたいな。


「よし! じゃあ中に戻って大きいのを作るぞ」

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