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第八話 にげる

 クアアアアア!!


 魔獣が両手の爪を振り回し始めた。ラインは槍を巧みに使って、どうにか受け流している。武器を失った俺はラインの背中に触れ、ラインの魔力を操作し、速度強化を発動させていた。


「はあ!!」


 標的になっていないフレイが、後ろから魔獣の足に切りかかった。だが、魔獣の太く筋肉質な足には、少し傷がはいっただけだった。切られたことで魔獣の注意がフレイにいき、魔獣の爪がフレイに迫った。フレイはそれを剣の腹で受ける。剣にひびがはいってしまった。あの剣もラインの槍のように長くはもたないだろう。


 これは、武器が壊れる前に逃げないと本当につむ。逃げるタイミングを探らなくては……

 

 クアアアアアア!!


 突然、魔獣が咆哮をあげながら、体を回転させ長い尻尾を振り回し始めた。俺はラインの手を掴みながらバックステップで回避。フレイの方にチラリと視線を送ると、あっちも剣で防ぎながら避けていた。


 急な攻撃の変化に驚いた。だが、これは逃げるチャンスでは? 回転してる状態から追いかけるのは少し時間がかかるだろう。


「ライン、この隙に逃げるぞ」


 俺はラインの腕を掴み、フレイの方に向かった。


「フレイ! こっちに手を伸ばせ! あの部屋にもどるぞ!」


 俺はラインの腕を引っ張りながら、伸ばされたフレイの手を、逆の手で掴んだ。そして、腕を通じて二人の魔力を操作し速度強化を発動。一気に加速して、今まで通った道を引き返す。魔獣との距離を離すことに成功した。


 クルルルルル!!


 だが、やはりそう簡単には逃がしてくれないようだ。魔獣は太い二本の後ろ足で地面を蹴り、地響きをたてながら追いかけてきた。向こうの方がスピードが速く、せっかく離した距離もだんだん詰められいく。


 クルルア!!


「あっぶね!!」


 ついに追い付かれて爪でひっかかれそうになったが、ぎりぎりのところで横に跳んで回避できた。空を切った爪は、そのまま壁に突き刺さった。そのおかげで、また距離を離すことができた。


「おいロエル! あっちの方が速いぞ! もっと速度あげれないのか!」


「魔力操作しにくいんだよ! これが限界だ!」


 また足音が聞こえてきた。どうやらもう壁から爪を抜いたらしい。フラストレーションがたまってきたのか、さっきよりもスピードが速い。すぐに距離を詰められた。


「二人とも、あれ」


 フレイが前方に指をさした。その先には大きな岩が二つ。真ん中に細い隙間がある。


「あそこを通れば魔獣は通れないんじゃないかしら」


「いい考えだ! 行くぞ!」


 俺たちは隙間を目指し全力で走った。魔獣の口がすぐ後ろまで迫り、背中に生暖かい吐息を感じる。だが、ぎりぎりのところで隙間に滑り込んだ。


 ズガ――――ン!!


 魔獣が勢いよく岩に衝突し、岩が粉砕される。魔獣はその破片に生き埋めになった。これはさすがにあの魔獣でもひとたまりもない。


「これで結構な足止めに……嘘だろ!?」


 振り返った俺たちの視線の先で、積もった岩の破片に幾筋もの線がはいり、粉々になった。中から傷ついた魔獣がでてくる。こちらを見る目は、深い怒りに染まっていた。


 グアアアアアア!!


 重い咆哮が俺たちの体を芯から震わせる。早くあの青い部屋にたどり着かないと、次に追い付かれたらやばそうだ。かなり走ったのでそろそろ到着すると思うが、魔獣の方もかなり本気。間に合うかは微妙なところだ。


 そして、だんだん目的地の穴が見えてきた。力を振り絞って限界まで速度強化をし、ラストスパートの直線を全力で駆ける。しかし、魔獣はもうすぐ後ろ。手を伸ばせば触れそうな距離だ。これは間に合わないか……!?


「しつこいんだよ!!」


 クア!?


 ラインが持っていた槍を魔獣に向けて投げつけた。距離が近いので投げるというより直接ぶつけた感じだが、槍は魔獣の目に深々と突き刺さった。おかげで魔獣が少し失速する。


「ナイス!」


 俺たちはスラディングで穴に滑り込んだ。穴の中で甲虫型の魔獣にぶつかったが、無理やり押し込んだ。ぶつかった魔獣が体にくっついて気持ち悪い。


 グルルルルア!!


 間髪入れずに魔獣が穴に突っ込んでくる。だが、魔獣の巨体ではとてもこの穴はくぐれない。魔獣は首だけを突っ込み、顔だけこちらに出して奇声を発していた。


「こいつどんだけ執念深いんだよ!!」


 恐竜映画でよくある、普通なら絶望的な状況。だが、この部屋なら俺は魔法を自由に使える。まずはぶつかった甲虫型を高水圧ビームで吹き飛ばした。そして、上位氷魔法で穴から出る魔獣の首を固定し、儀式雷魔法の構築をはじめた。


 クア!? クア!?


 凍らされた魔獣は困惑して間抜けな声を発している。やはり魔法があればこんな奴は恐れるに値しない。


「形勢逆転だ」


 俺の右手から放たれた雷が、魔獣の頭を吹き飛ばした。

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