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第五話 ゲテモノ料理

「で、武器は手に入ったわけだけど、この後どうする?」


「……俺としては、魔法を使えるここでできる限りの準備をしたいな」


「でもよ、そろそろ食料調達しなきゃやばくねえか?」


 うん。最後に村でご飯を食べてからどれくらい経ったのかは分からないが、俺の腹はさっきから低くうなり空腹を訴えていた。他の二人も同じような状況だろう。く~~あの固いパンが恋しいぜ。


「……なあ。あれ、食ってみないか?」


 そう言いながらラインが指をさした。その方向は、甲虫のような魔獣の出現場所。


「え!? あんた正気!?」


 フレイが叫ぶ。俺も同じ気持ちだ。さすがにあれを食べようとは思えない。


 ……でも、あれ? 何だろう、食料としてみたらだんだんエビに見えてきたぞ? 前世のダンゴムシもエビみたいな味がすると聞いたことがある。もしかしたらあれもそんな味がするかもしれない。やばい、食べてみたくなってきた。


「え!? ちょ! ロエル何する気!?」


 俺はふらふらと魔獣の出現場所まで歩いていき、たった今出現した魔獣に電気ショックを浴びせて仕留めた。長い二本の触覚を握りしめ、甲殻に包まれた死体を引きずって元の位置に戻る。


「まさか、あなたまで食べるとか言わないでしょうね」


 フレイが頬を引きつらせながら言った。


「まあ、贅沢言ってらんないしな。それに、味が気にならないか? もしかしたら美味しいかもしれないぞ?」


「…………」


 フレイが黙った。沈黙は合意と見なす。ということで、早速料理していこう。でも、料理ってどう料理すればいいんだ。こんなの前世ではもちろんのこと、この世界でも料理したことはない。


 ……たしか、回転ずしのエビって、頭切られてたよな。


 頭と体の接続部に風の刃を撃ちこみ、切り離した。スパンっと頭がはねとばされ、部屋の隅に音を立てて転がる。残った体から、ヘドロのような紫色のドロドロしたものが流れ出てきた。


「ゔうえ……。絶対これ毒あるわよ!」


「洗ったり焼いたりすれば大丈夫だろ」


「最悪あたっても回復魔法があるからノープロブレム」


 空腹は回復魔法で治せなくても、毒は回復魔法で治せるから問題なし! 一旦威力を調整した高水圧ビームで綺麗に体液を洗い流した。


 次はどうしようか。甲殻と足は食えなそうだし、剥がすか。死体をひっくり返し、足を一本一本もいでいく。全てとれたら、魔石ナイフを甲殻の節に差し込み、甲殻を剥がした。弾力のある紫色の身が露になる。


 うー-ん、やっぱ見た目は変に着色されたエビだ。目をつぶってればおいしく食べれるかな。最後に火魔法で全体をあぶっていく。


「よし、まあこんなもんだろ」


「待ってました!!」


「え……本当に食べるの?」


「ライン、一口目は譲ってやろう」


「いいのか!」


 ラインが目の前に餌を出された犬のような顔になる。そして、紫の身をちぎって口元に持っていった。これでラインが大丈夫そうだったら俺も食べることにしよう。


 そしてついに、ラインが身を口に含んだ。


「どうだ?」


「…………」


 ラインはしゃべらず、顔を伏せてじっとしている。……これは、まずかったか?


「ねえ、大丈夫なの?」


 俺とフレイは心配になりラインに近づいた。その時! 突然ラインが動き、両手にちぎった身を持つと、それを俺たちの口に押し込んできた!


「「むご!」」


 な、何しやがる!! 俺は驚き思わず口に入れられたそれを咀嚼してしまった。途端に口に広がる刺激。脊髄反射で俺は吐き出した。


「おおおおええええ!!」


 ガハッガハッ!! これはヤバイ! 見通しが甘かった。これをエビだと思った数秒前の俺をぶん殴りたい。エビに失礼だと。あまりの刺激に味は良く分からない。いや、理解することを脳が拒絶している。だが、絶対に口に入れてはいけない類のものであることは分かる。口の中にひとかけらたりともそれを残したくなかったので、口の中で水魔法を使い洗浄した。


 しばらく口の中を洗い続けたことで、だんだん落ち着いてきた。周囲を見ると、泡を吹いて倒れるラインと、口元を押さえているフレイがいる。とりあえずラインに回復魔法をかけた。


「……大丈夫か?」


「……だから食べない方がいいって言ったのに。大量の水が欲しいわ」


 フレイに魔石で作ったボトルに入れた水を渡しつつ、ラインの容態を確認する。声をかけても返事がない。……まさか、死んでないよな? 口元に手をかざすと、息は合った。良かったー-。頭に大量に水をぶっかけたら、目を覚ました。


「あれ、俺は何を……」


「とりあえずどこか体に異常はないか?」


「……? ないぞ?」


 ふう……よかった。後ろに手をついて座りこむと、何かぶよっとしたものが指に触れた。チラリと見ると、それは余った魔獣の身。……どうして俺はこれをエビだなんて思ったんだ。改めて見るとどう見ても毒だ。空腹って恐ろしい。


 見てたら口に入れた時を思い出して吐き気がしてきたので、火魔法でそれを燃やした。俺たちに転移してから初の大ダメージを与えたそれは、呆気なく灰塵と化した。


「悪は滅びた」


 だが、食料問題は解決していない。食える魔獣が見つかるといいのだが……。最悪その辺の炭素とか水素とかから作っちゃうか。でも、それはそれで毒ができそうなんだよな。

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