第三話 魔法を使いたい
「ねえ、ロエルの言う通り父様のあれみたいなので魔法が阻害されているなら、魔法が使える場所、探せるかもしれないわ」
「え?」
なんでフレイがそんなこと分かるんだ。あ、でも龍闘神気を一番よく知ってるのはフレイだしな。案外抜け道とかあるのかも。
「どうやってやるんだ?」
「えっとねえ、あれは魔力を散らすものだから、魔力が集まることで生まれる魔獣の出現を阻止できるの。あれの効果範囲内で魔獣は出現しない。ってことは逆に……」
「「魔獣の出現場所は効果範囲外だから魔法が使えるかもしれないってことか」」
「そういうこと。魔獣がいるってことはそういう場所があるはずよ。魔獣が集まってる場所でも探せば見つかるんじゃないかしら。というわけで、早速探しましょう!」
フレイがドヤ顔をしている。なるほど確かにうまくいけば魔法を使えそうだな。でも、魔法を阻害しているものが師匠の龍闘神気と同じものって決まったわけじゃないし、それに確か……
「あれ? でも魔獣って普通に繁殖もできたよな。魔獣の出現場所なんてあるとは限らないんじゃねえの?」
「ギクッ」
ラインが俺の考えを代弁してくれた。そう、魔獣は魔力が集まって出現することもあるが、魔力が集まらなくても繁殖できるのだ。それに、外から入ってきている可能性もあるので、魔獣がいることは、魔力が集まれる場所があることの証明になりえない。
「……でも、可能性は大いにあるでしょ! 少なくともむやみやたらに歩くよりはましなはずよ!」
「それもそうか。ロエルはどう思う?」
何も考えずに歩き回るよりは可能性に賭けた方がいいよな。もし魔獣が外からきてたら出口を発見できるかもしれないし。まあ魔獣の巣に迷い込むという最悪の可能性もあるが。
「俺もそれでいいと思う」
「じゃあ決まりね!」
「直近の目標は、魔獣を探し、魔獣の出現場所を見つけ、そこで俺が魔法で武器を作るってことでいいな」
「早く行こうぜ!」
方針が決まったら即行動だ。早速ラインが先頭に立って歩き始めた時、
ぐううぅぅ
ラインの腹が大きな音をだした。
「……ついでに食えそうな魔獣も見つけないとだな」
________
俺たちは洞窟の中を一列になって歩いた。いくつかの分かれ道をこえ、壁に沿って歩いているうちに、広い空間に出た。
「ん? あれは……」
先頭を歩くラインが、何かに気付き声を出した。俺も前方の暗闇に目を凝らすと、いくつかの何か動くものが見えてきた。
「魔獣かもしれない。慎重に行こう」
俺たちはゆっくりと、大きな岩に身を隠しながら動くものに近づいた。だんだん動くものがはっきり見えてくる。長い触覚に、僅かな光を反射し黒光りする甲殻。それは、甲虫のような魔獣だった。何匹も集まっていて気持ち悪い。
「げ……わたし、ああいうの無理なのよね」
フレイが口元を押さえて苦言を呈している。俺だって台所に潜むものを思い出して嫌だ。まあどちらかというとダンゴムシとかに似た見た目をしているのだが。
「で、大量の魔獣を発見したわけだが、どうする?」
「まあ、あいつらが生まれる場所を探すんだから突っ切るしかないよな」
「え……あそこを通るの? 他の魔獣にしない?」
気持ち悪いので近づきたくないフレイの気持ちも分かるが、武器がない今の状況を早く打破したい。選り好みなんてしていられない。それに、ぱっと見攻撃性が低そうな魔獣。安全面を考えるといいチャンスだ。
「次いつ魔獣の群れを見つけられるかわからないし、見つけた魔獣が獰猛な奴だったら危険だ。攻撃してこなさそうなあいつらでいいだろ」
「え~~……」
「もう行っていいよな」
「慎重にな」
俺たちは出来る限り壁によりながら、ゆっくり移動を開始した。魔獣たちは、別のものに夢中で、それに群がっているために俺たちに見向きもしなかった。
魔獣は一体何に夢中なのだろうか? 気になってチラリと視線を送ると、魔獣の体の隙間から、かすかに白い骨がみえた。なるほど、魔獣が群がっているのは死体か。となると、あいつらは死体を食べる魔獣なんだな。俺たちに興味がないわけだ。少し未来では分からないが。
やがて、魔獣が最も集まっていた地帯を突破した。
「ふう……もう見たくないわね。早く離れましょう……ひえ!」
俺たちのすぐ隣を魔獣が通った。相変わらず俺たちを無視して死体を群がる仲間に混ざっていく。奥を見ると、魔獣が間隔を開けて列になり、こっちに来ているのが見えた。あっちに出現場所か巣があるのかもしれない。
「とりあえず、こいつらに逆流して進んでみよう」
少し進んでいくと、小さな穴が見えてきた。子供がぎりぎり入れそうなサイズだ。そこから魔獣がでてきているのが見える。
「穴か……どうする?」
すごく穴の奥が気になる。魔物の出現場所とか、洞窟の出口かもしれない。でも、魔獣であふれている可能性もあり、かなり危険だ。
「俺がちょっくら潜ってきてやるぜ!」
「いやいやちょっと待て。あの狭さでは中で魔獣とぶつかるだろ。まずは覗くだけにしよう」
俺たちは魔獣が出てきた直後のタイミングで穴に近づき、中を覗き込んだ。穴はそんなに長くないようで、穴の奥が見える。暗い。少なくとも洞窟の出口ではないだろう。
ふーむ。この距離なら、速度強化使えば五秒くらいでいけるか。魔獣の出てくる間隔はばらばらだが、だいたい十五秒前後。これなら穴の中で魔獣とかち合うことなく通過できる。
「一旦俺が速度強化して穴の奥を見てくる。二人はここで待っててくれ」
「勝手に一人で脱出とかすんなよ」
「危なそうだったらすぐ戻って来なさいね」
俺は二人に見送られながら、次に魔獣が出てきた後にかがんで穴の中に入った。速度強化を使い、高速で地面を這う。
そして数秒後、俺は穴の外にでた。
「なんだ……? これは?」
ブックマークよろしく!




