第三十一話 転移
「あー---もう!!」
俺は全力で風魔法を使い、屋敷に向かって飛んだ。絶対に火球を屋敷に当てさせるわけにはいかない。
「間に合えー---!!」
俺の体が、強く青色に輝き、スピードが指数関数的に上昇していく。古代龍の横を通過し、なんとか火球と屋敷の間に入り込むことに成功した。
すぐに振り向いて氷壁を展開。そこに火球がぶち当たる。大爆発を起こし、俺は屋敷の方に吹き飛ばされた。村人が寄ってくる。
「ロエル! 無事か!!」
俺を呼ぶ声。声がした方を見ると、ダラスだった。
「父さん、どうして出てきたんですか!」
「えっ、いや……お前が危なそうだったから……」
俺は思わず怒鳴ってしまい、ダラスがうろたえた。そこに、走ってくる影が二つ。
「「ロエルー-!!」」
ラインとフレイだった。
「魔法陣はどこまで進んだ?」
「とりあえず描き終わった。今イアが魔力を込めてるから多分そろそろだと思うわ」
「村の人たちもここにいる人以外は集まってるぜ」
「分かった。じゃあ俺はもう一回行ってくるから、外にいる人たちも中に入れといて。あと、絶対に古代龍を刺激しないでくれ」
俺は風魔法を使いもう一度古代龍の方へ飛んだ。古代龍が火球を飛ばしてくる。俺が避ければ屋敷にあたるので、氷壁で防いだり、風で軌道をそらしたりした。
古代龍の目は、俺ではなく完全に屋敷を見ていた。また注意を俺に戻さなくては。火球に対処しつつ光の矢を飛ばすが、古代龍の注意はなかなか屋敷から外れない。古代龍がブレスのチャージを始めた。
「くそ、古代龍! 俺を見ろよ!」
火球が止んだので攻撃のペースを上げるが、古代龍は無視を続けている。もしや、屋敷を守ろうとしているのがばれた? 古代龍って案外頭いいのか? だとしたらもう囮作戦は通用しないだろう。
「ならば無理やり攻撃を止めさせる!」
俺はさっき撃った光の柱をもう一度出そうと、一度地面に降り、右手に魔力を集めた。だが、思うように魔力を操作できない。右手に集めた魔力は暴れまわり、魔法の構築がすすまなかった。
「なっ! どうして!」
俺は、体中の青い線が点滅していることに気付いた。この力の原理は全く不明だが、限界が近いということだろう。
そんなことをしている間に、古代龍からブレスが放たれる。屋敷は呆気なく炎に包まれ砕け散った。屋敷があった場所に煙が立ち込めている。
「あ……」
終わった……。屋敷内にいた人は全滅しただろう。今までの努力は無駄だったか。やはり最初から少人数でも速度強化で逃げるべきだったか。家族、友人の顔が次々と俺の頭に浮かんでくる。
「くそ!!」
俺は拳を地面にたたきつけた。やがて、立ち込めていた煙が晴れて……
「!!」
そこには無事な人々の姿があった。よく見るとたくさんのひび割れた結界が人々を包んでいる。どうやらラインたちに渡した結界が何とか防いでくれたみたいだ。役目を終えた結界は静かに砕け散った。
「よかったー-」
だが、安心するのはまだ早い。古代龍は次のブレスのチャージを始めている。あれを撃たれたら今度こそ終わりだ。だが、青い線の補助がない今、あれを止めることも、防ぐこともできないだろう。だったら……
「無理やりでも転移してやる!」
俺は速度強化を使って屋敷があった場所に駆けた。古代龍の口の輝きが増している。急げ、俺! もっと、もっと速く!
そして、何とか村人が集まる場所に到着。奥にむき出しの魔法陣が見えた。先頭にいたラインとフレイが寄ってくる。
「え!? ロエル!?」
「もう無理やり転移する! 皆さん! 早く転移魔法陣に乗ってください!」
周りの人に呼びかけながら俺は魔法陣に乗り、魔力を込めた。だが、ここで古代龍のチャージが完了し、ブレスを吐いてきた。
「うおおおお!!」
俺は氷壁を作って受け止める。だが、一瞬でひびがはいってしまっていた。
「ロエル! これを使え!!」
ラインとフレイが魔石の入った袋を放り投げてきた。だが、焼け石に水。このままでは転移までもつことはできないだろう。
「ぐっ……」
俺の体内で魔力が荒れ狂い、青い線の点滅が加速する。よくわかんない青い線よ、あとちょっとでいいからもってくれ!!
─これ以上の強化はあなたの魂に影響を及ぼす恐れがあります。それでもよろしいですか?─
「え?」
俺の頭の中に突然声が響いた。無感情でどこか機械的な女性の声だ。一体これは何なんだろう。これ以上の強化、ということはもしかして青い線の力のもとか?
だが、今はそんなことどうでもいい。俺を強化してくれるってんなら是非ともやってもらいたい。
「いい! やってくれ!」
─了解しました─
俺の体が青く輝き、魔力が増大。さらに、魔力操作も安定した。そして、壊れかけの氷壁が強化される。
だが、それでもブレスを完全に防げてはいなかった。さっきよりははるかに遅くなったが、確実にひびがはいっていっている。いつか壊れてしまうだろう。
その前に転移しなければ!! 俺は転移魔法陣に注ぐ魔力を増やした。
「おっ!!」
そして、ついに転移魔法陣が起動した。だが、ちょうど同じタイミングで氷壁が砕け散った。転移魔法陣とブレスの魔力によって、周囲の大気が暴れ狂う。
「くっ……うおおおお!!」
俺は咄嗟に近くのラインとフレイの手を掴んだ。そして、視界が光に包まれる。俺は思わず目を瞑った。やがて光が収まり……
後には古代龍だけが残された。
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荒地となった大地に、一匹の龍がいる。
「……ふふふ。なかなか面白い人族だった」
龍は静かに笑い、先ほどの戦いの余韻に浸っていた。
「我の探し物は奴に取り込まれたとみて間違いなかろう。しかし、人族の身であの力に耐えれるのか? まあ生きている以上耐えれているのか。……そんなことはどうでもいいな。いつか再戦することを楽しみにしていようぞ」
龍は自分の目的が達成不可になったことを悲しみつつ、その原因である少年に興味を持った。
「しかし、それまで暇だなあ。せっかく目覚めたのにまた眠るのは勿体ない。どれ、もう少し暴れてくるか」
龍は翼を広げ飛び去って行った。
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